B-21次期爆撃機は既に低レート量産入り

残念な追記です・・・
(1月25日の報道を踏まえて)

1月25日開催のNG社CEO会見(四半期決算説明会)で、B-21開発製造事業について、米空軍との初期開発&5ロット製造契約(2015年)は「固定経費」契約で1機あたり「$550 million」となっているが、諸物価の高騰等により現在は「$778 million」となっており、1機あたりの差額「$75 million」(約110億円)の損失を生じることとなっていると語り、初期5ロット製造(推定21機)で約2300億円の損失を抱えると明らかにしました

CEOのKathy Warden女史は、2015年契約段階で米空軍幹部が「少なくとも100機調達」と述べ、最近では運用担当のGSコマンドが「150-200機必要」と主張していること等を背景に、トータルのB-21計画ではNG社にしっかりした利益をもたらすことになろうと株主に説明していますが、同時に「今後は固定価格契約にはより慎重に臨む所存だ」とも説明しています

超優等生だったB-21開発に「けち」がついて残念ですが、NG社にとってはそれよりも問題なのが、Kendall空軍長官も頭を抱える「GBSDプロジェクト(ICBM:ミニットマンⅢ)」で、2020年契約時から2029年運用開始を目指す計画で、既に37%のコスト増(約4.5兆円アップ)見積りの「超難事業」となっていると1月29日付の記事(https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/)でご紹介したところです。核抑止3本柱の維持は難しいかもしれません・・・
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(以下は、1月18日付の報道を基にしたベースの記事です)


昨秋に調達担当次官が承認と明かす

試験機を量産ラインで製造し成熟度を確認済と
当初計画2020年代半ばに運用態勢確立に向け着々

B-21 low-rate2.jpg1月22日、米国防省のWilliam LaPlante調達担当次官(元空軍副長官)が声明を発表し、昨年11月10日に初飛行に成功した次期ステルス爆撃機B-21に関し、地上試験や飛行試験の順調な進み具合や、試験用機体を量産機製造ラインで組み立てる等、製造設備や製造ライン技術者&作業従事者の技量を十分に成熟したレベルに高めていることが確認できたことから、2023年秋に「低レート量産:low-rate production」の承認を出していた、と明らかにしました。

B-21は、2022年12月2日に限定された形での機体お披露目式典が行われ、2023年11月10日に初飛行(製造拠点の加州Palmdale工場から、同州内Edwards空軍基地)が確認され、その後は同空軍基地で地上滑走など本格的な地上確認試験が継続されていたところ、2024年1月17日には同空軍基地での初飛行も目撃(空軍報道官も認める)されていました

LaPlante B-21 2.jpg2023年秋に同次官が承認したという「低レート量産:low-rate production」が、どの程度の製造ペースを指すのか不明ですが、計画では「2020年代半ばに初期運用態勢確立」、「2030年代には老朽化が進むB-1およびB-2爆撃機の後継機となり、エンジン更新を含む近代化改修を終えた76機のB-52Jと共に、米空軍爆撃機2機種体制を構築」、「少なくとも100機調達」と米空軍は発信を続けており、

B-21の持つステルス性能を生かし、強固な防空網を持つ本格的な敵対国に対しても、「通常兵器と核兵器の両方を搭載&使用可能な機体仕様」で「penetrating deep strike missions」が遂行可能な能力を米空軍に提供するアセットだとも説明されてきています。なお同爆撃機の調達&運用&維持整備に関する30年間の総コストは$203 billion(約30.0兆円)で、機体1機の平均価格は$692 million(1020億円)と見積もられています

B-21 low-rate.jpg複数の米空軍高官は2023年下旬時点で、「初披露した初号機を含め、現在6機が様々な製造段階にある」と述べ、これらの機体は様々な初期試験用の特別仕様や計測機材搭載の形態となっているが、所要の試験終了後は部隊配備用に機体改修して実戦部隊に提供されると説明しており、従来の新型機体開発&製造の流れと比べ、「開発試作&試験段階から、効率的な量産態勢確立への円滑な移行」を強く意識した計画が極めて順調に実行されている様子が伺えます

またNorthrop Grumman社関係者は、「米空軍と協力し、B-21の全ライフサイクルをカバーするdigital ecosystem構築に取り組んでおり、個々の機体の製造段階から部隊提供後の維持整備や各種運用データを一括管理することで、現場の整備員や空軍技術者と弊社開発関係者が一体となって、B-21の効率的な製造・使用・維持につなげる体制を構築しつつある」ともアピールしています
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B-21 low-rate3.jpgB-21爆撃機の開発が順調な理由について以前米空軍関係者が、「計画が開始された後は、要求性能を一切変更しなかった。設計や技術審査がある程度順調に進むと、様々な方面から、様々なコネやルートを経て、この能力も付加してはどうかとか、新たに開発や研究が始まっているこの技術をB-21で試してみないか・・・等々の話が持ち込まれたが、一切受け付けなかった」と話していましたが、高官や政治的な「横やり」が「グダグダ開発」の一番の原因かもしれません

米軍や米国防省が取り組む様々な新規開発案件の中で、「唯一」と断言しても良いくらい信じがたいレベルで順調なB-21開発計画の、今後の「武運長久」を心から祈念申し上げます

B-21関連記事
「初飛行を12の視点で分析」→https://holylandtokyo.com/2023/12/01/5284/
「11月10日早朝の初飛行」→https://holylandtokyo.com/2023/11/13/5238/
「Taxi Tests開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/30/5180/
「エンジン稼働試験開始&屋外写真」→https://holylandtokyo.com/2023/09/15/5041/
「最近power on試験実施」→https://holylandtokyo.com/2023/08/03/4911/
「豪州も購入検討した」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「B-21導入で米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「初披露のメディア扱い」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点で:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796

(これ以前に2011年から25本の記事アリ)

米空軍の爆撃機体制
「B-21導入で爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/

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