米空軍が人手不足に退役者の限定期間再雇用

1000名を元の階級で4年間限定
士官も下士官も。2017-21年以来の措置
募集重点職域は士官23職種、下士官11職種

VRRAD3.jpg2月7日付米空軍協会web記事は、webサイト上で入手した資料(米空軍に真偽を確認の後、米空軍が後追いで公式発表)を基に、米空軍が2月8日から2026年1月31日までの約4年間、募集難や退職者増が原因で生じている人手不足に対処するため、除隊者を元の階級で4年間限定で約1000名採用するVRRAD(Voluntary Retired Return to Active Duty Program)計画を開始すると報じています

VRRAD.jpg米空軍は2023年度、募集目標を24年ぶりに達成できず、11%も目標を下回ったことを受けた「苦肉の策」ですが、記事によると末尾に示す士官23職種、下士官11職種を「重点募集職種」とし、以下の様な募集要項で2月8日から応募を受け付けるようです

●士官は除隊時に大尉から中佐、下士官は最上級軍曹(E-9)から二等軍曹(E-5)の経験者を、除隊時と同じ階級で採用
●採用する場合は、応募から4-6か月後に採用

●航空ボーナスや昇任の対象外。SkillBridgeや除隊後の民間への移行を支援するプログラムは対象外
●VRRAD応募者は、自主的に志願するか、戦闘準備態勢にある部隊に配属された場合にのみ、前線に展開する可能性があるが、その際は配属基地や任務が変更される可能性があ

VRRAD4.jpg2023年度の募集目標を達成できないと判明した際、米空軍省の人的戦力計画担当次官補のAlex Wagner氏は、「(2024年度の募集目標達見通しについては、米国全体の労働市場の状況から見て、)注意深く見守る必要があるが、楽観的に見ている」とコメントしていましたが、「募集難や退職者増」で現場に穴が開いており、「4年間限定」ながら応急措置が必要な状態とのことです

VRRAD計画の開始に関し、米空軍司令部人事計画部長のCaroline Miller中将は、「同計画は、経験を有する退役者人材を正規兵として受け入れ歓迎することで、本格紛争に備えて準備に取り組む部隊に生じている「ギャップ」を埋めるための戦略的な戦力増強策(strategic enabler)である」と説明しています
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VRRAD2.jpg記事は、VRRADに対する「初動における評判」が「低い:unimpressed」とし、原因は応募に対するボーナスや特典がないからだとしており、前途多難な模様です。下に示す「重点職域」は広範にわたっており、民間でも通用しそうな「職域」が並んでいることから、さもありなん・・・です

下の過去記事でご紹介しているように、最近空軍は「募集対象年齢上限を39歳から42歳に引き上げ(5軍で最高齢)」、「下士官の勤務期間機会を2年延長」、「搭乗員への新ボーナス試行」等を行っていますが、「とりあえず何でもやってみよう」的な状態にあるようです。この状態は世界の軍隊で同様でしょうし、少子化の進む日本でも「対岸の火事」ではありません

士官の「重点募集職域」
• 11X – Pilot
• 12X – Combat Systems
• 13B – Air Battle Manager
• 13H – Aerospace Physiologist航空宇宙生理学者
• 13M – Airfield Operations
• 13N – Nuclear and Missile Operations
• 14X – Information Operations/Intelligence
• 15X – Operations Analysis and Weather
• 16X – Operations Support
• 17X – Cyber Operations
• 18X – Remotely Piloted Aircraft
• 19Z – Special Warfare
• 21X – Logistics
• 31P – Security Forces
• 32E – Civil Engineering
• 35P – Public Affairs
• 38F – Force Support Officer
• 61X – Scientific/Research
• 62X –Developmental Engineering
• 63X – Acquisition
• 64P – Contracting
• 65X – Finance
• 71S – Special Investigations

下士官の「重点募集職域」
• 1C171 – Air Traffic Control航空交通管制官
• 2G071 – Logistics Plans
• 2T377 – Fleet Management & Analysis
• 3F071 – Personnel
• 3P071 – Security Forces
• 4A271 – Biomedical Equipment生物医療機器
• 4E071 – Public Health
• 4N071 – Aerospace Medical Service航空宇宙医療サービス
• 4R071 – Diagnostic Imaging
• 7S071 – Special Investigations
• 8R000/8R200 – Recruiter

新兵募集難&離職者増への対応
「海軍が募集で高卒資格撤廃」→https://holylandtokyo.com/2024/02/07/5522/
「空軍が募集年齢上限を42歳に」
https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

米空軍パイロット不足関連
コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18

 

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