アジア太平洋空軍はACE完全運用態勢にない

ACC司令官にご栄転予定のPACAF司令官が語る
空軍特殊作戦軍司令官は「滑走路は期待薄」とズバリ指摘

ACE AFA2023.jpg9月13日、米空軍協会の航空宇宙サーバー会議でACE構想(Agile Combat Employment)関連のパネル討議が実施され、ACC司令官にご栄転予定のWilsbachアジア太平洋空軍司令官、Bauernfeind空軍特殊作戦コマンド司令官、Minihan空軍輸送コマンド司令官が、様々な取り組み状況を語りました

Wilsbachアジア太平洋空軍司令官は、西太平洋地域に残された全てのWW2時の航空基地痕跡を求めて調査し、分散運用拠点としての活用可能性を追求するなど、様々な取り組みを過去数年で行ってきたが、完全運用態勢(full operational capability)にはさらなる努力が必要だと語り、

ACE AFA2023 2.jpgBauernfeind空軍特殊作戦コマンド司令官は、様々な検討を経た現時点では、滑走路が確保できるかどうかわからない状態を受け入れて、滑走路に頼らない空軍特殊作戦軍を目指す必要性を述べ、Minihan空軍輸送コマンド司令官は、5月にグアム島が大きな台風被害を受けたが、7月には「米空軍史上最大の空輸演習」を初めて西太平洋地域で実施してACE構想遂行能力を高めたと語りました

Wilsbachアジア太平洋空軍司令官は
●西太平洋の島々に残されていた、今はジャングルに飲み込まれてたWW2時代の飛行場施設を残さず調査し、ACE構想に沿った最低限の拠点となり得る場所を特定し、ジャングルを取り除き、燃料や弾薬を保管し、兵士が寝起きでき、航空機を再発進可能な必要最小限の施設を備える拠点を、テニアン島などの場所でいくつか整備してい
Wilsbach5.jpg●5月24日に巨大台風Mawarがグアム島を直撃し、アンダーセン基地は約7億円相当の被害を受けたが、被害後に同基地を視察した際、私は基地司令官に「この台風被害は、広範囲に計画された敵による各種ミサイル攻撃被害より甚大であり、ACE構想準備に向けたパーフェクトな準備訓練となり得る」と告げ、前向きにこの台風被害をとらえて対処せよと指示した

●このようにACE構想態勢整備に尽力してきたが、アジア太平洋空軍がACEに関し完全運用態勢FOCを確立したと宣言できるレベルには達していない。前線基地は敵攻撃に耐えられるか、通信は大丈夫か、CBRN攻撃や高性能爆薬攻撃に対処できる準備があるか等々、ACE体制完全確立にはなすべきことが多く残されている
●兵站支援能力の確保も課題だし、多能力を備えた兵士の確保も道半ばであるし、攻撃時に兵士の生命を守る体制確保も課題として残っている。PACAF所属部隊には、日々の活動にACE構想を念頭に置いて取り組み、体がACE実現のための動きを記憶するぐらいにしてほしいと要望している

Minihan.jpgMinihan空軍輸送コマンド司令官は
巨大台風Mawarがアンダーセン基地に大きな被害を与えたわずか2か月後に、我々は空輸演習「Mobility Guardian 2023」演習を史上最大規模で、しかも初めての国外である西太平洋地域で計画していたが、これをACE構想に向けての訓練として7月5日から約2週間にわたり実施した

Bauernfeind空軍特殊作戦コマンド司令官は
Bauernfeind.jpg我々は様々な角度から分析し、アジア太平洋戦域の航空施設が厳しい脅威下にある状況を改めて強く認識し、滑走路に依存しない能力確保が求められているとの考えに至りつつあり(we have to have runway-agnostic capabilities)、アジア太平洋空軍が適当な前線航空拠点を確保できなくても、作戦運用可能な体制に向け準備を始めている
●海上着粋水が可能なフロート付きMC-130Jプロジェクトを数年前から開始しているほか、DARPAや米特殊作戦軍と協力して、CV-22オスプレイの後継となるような滑走路を必要としない高速航空機開発を目指す「SPRINT :Speed and Runway Independent Technologies program」に着手している
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固定翼機を中心戦力にする太平洋空軍や輸送コマンド司令官が口が裂けても言えない「滑走路は期待薄」を、空軍特殊作戦コマンド司令官が言葉を慎重に選びながらもズバリ指摘ている点が痛快です。

Biden vietnam2.jpgところで全く別の話ですが、9月10日にバイデン大統領が訪問先ベトナムでの記者会見で、「中国は困難な経済問題を抱えている」、「中国若年層の失業率上昇や経済政策の失敗等々で、習近平の手はふさがっている」と指摘し、一方で、こうした中国の国内問題が米中対立激化につながらず、中国経済の減速が「中国による台湾侵攻を引き起こすとは思わない」と明言しています。

驚くほど急激な中国経済崩壊の進展を目にすると、正解かどうかは別として、「中国軍事脅威」が遠のくと考えるのは自然な流れであり、これまで中国脅威で「軍事予算確保」に動いてきた米国や日本は、突然の「逆風」に大混乱しているのではないかと推察いたします

本日の記事と関連ある過去記事
「巨大台風でグアム米空軍基地に被害」→https://holylandtokyo.com/2023/05/29/4688/
「米空軍史上最大の空輸演習が西太平洋で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/
「2022年6月ACE構想の現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「フロート付MC-130J検討」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/

米空軍の将来作戦コンセプトACE関連記事
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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