生みの親・太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る

自身がアラスカ基地司令官だった5年前に発想
マリアナ諸島、ハワイ周辺、日本と韓国でも
専門家は地域国全体への拡大が不可欠と

ACE3.JPG6月17日付米空軍協会webは、太平洋空軍司令官Kenneth Wilsbach空軍大将へのインタビュー記事を掲載し、同司令官がアラスカ基地司令官時代の2017年頃に発想してパワポスライドにまとめたACE(agile combat employment)が、米空軍全体に普及しつつある状況を感慨深く語り、太平洋空軍の配下部隊や同盟国日本や韓国にも少しづつ浸透し始めている様子と課題に触れています

ACE構想は、敵からの弾道・巡航ミサイル攻撃等で我の大規模作戦根拠飛行場が被害を受けることを想定し、戦力を施設不十分な地域内の基地に分散して柔軟に強靭に戦いを継続する考え方で、分散運用先の辺鄙な基地で、少人数で作戦機の再発進準備や燃料&弾薬の補給を行う体制が必要で、燃料弾薬の輸送や事前集積、必要な人員機材の輸送、少人数で対処するための多能力兵士育成、分散運用状態の迅速な把握と指揮統制などが求められる戦い方です

Wilsbach5.jpg具体的には、グアム島周辺であれば、アンダーセンを離陸した作戦機が施設不十分なテニアン島の飛行場に展開し、緊急空輸や事前集積された再発進用の燃料や弾薬を補給し、パイロット自身も給油や作業を手伝って再び離陸する訓練が行われています。地上要員として派遣される兵士は、本来の職種以外の任務も兼務し、複数の役割を果たすことが求められま

現状としてACE構想は、欧州米空軍が一応ながら初期運用態勢IOC確立を宣言していますが、太平洋空軍はまだの状態で、グアム島のアンダーセン基地を中心としたテニアン島やサイパン島を含む北マリアナ諸島で訓練検証が進められ、最近の「Valiant Shield」演習ではパラウに第5世代機を展開させる実績を積み上げているようです

ACE.JPGまたWilsbach司令官によれば、ハワイのヒッカム基地を中心に、周辺のハワイ諸島の島の飛行場や海兵隊航空基地に展開する訓練をF-22などを用いて行っているようです。

更に地域の同盟国にも範囲を広げ、日本の嘉手納・横田・三沢基地でも訓練やACE構想を意識した運用が日常ベースで導入されつつあり、航空自衛隊の部隊も同様の取り組みに着手していると同司令官はインタビューで語っています。また在韓米空軍については、北朝鮮問題もあり着手したばかりだが、オーサン基地を中心に周辺基地での再発進準備訓練を行っていると同司令官は説明しています

ただし、専門家からするとまだまだ不十分で、空軍協会ミッチェル研究所のDeptula所長は、「グアム周辺の北マリアナ諸島以外はどうするんだ? 中国のターゲティングを困難にするためには、より多くの西太平洋地域に分散拠点を確保する必要があるはずだ」と率直に指摘しています

Cooper 2.jpgまたAEIのZack Cooper研究員は、例えばフィリピン新大統領の安全保障面での米国との協力姿勢は不明確であり、他の東南アジア諸国との協力関係も現状では限定的で、中国は積極的にこれら国々への浸透を図っており、今後の米軍との連携強化は予断を許さない状況だと警戒しています

このように、決してACE構想の進展は満足できる状況ではありませんが、Wilsbach司令官はそれでも、5年前にはパワポ資料の構想だったACEが世界の米空軍の標準的考え方となり、アジア太平洋地域では全ての航空部隊がレベルの差はあるがACEの基礎を構築し、兵士の教育訓練も着実に進みつつあると評価しています
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ACE2.JPGACE構想の課題は以下の米空軍若手幹部の分析にあるように、空輸能力、兵士の多能化の限界、分散運用基地の確保、必要装備や燃料弾薬の事前集積準備予算などなど複雑多岐にわたっており、ACE生みの親Wilsbach大将の思惑通りに進めることは容易ではありません

「米空軍若手がACEの課題を語る」https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

Wilsbach司令官も、ハワイの島々にヒッカム基地から分散運用するだけでも、戦力の状況把握や維持整備の手配が大変で指揮統制が課題だと認めています。ただ、この方向は完全でなくても進めるべき方向であり、航空自衛隊は対中国最前線の航空戦力部隊として積極的に取り組んでいただきたいと思います

Wilsbach7.jpg同じインタビューでWilsbach司令官は、中露爆撃機による日本周辺の編隊飛行など脅威ではなく、「今のタイミングでロシアを支援する姿勢を見せることは、中国の国際社会での立場を悪くするだけの悪手だ」と語っています。

別記事ですのでご興味のある方はこちらを

PACAF司令官はペンタゴン勤務がない異例の大将
日本ハワイ中東アラスカ韓国のみ勤務
「今すぐE-7ほしい発言」→https://holylandtokyo.com/2021/03/01/150/
「F-35はF-35らしく:F-22の失敗に学べ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/05/379/
「Wilsbach太平洋空軍司令官の紹介」→https://holylandtokyo.com/2020/05/18/674/

米空軍の将来作戦コンセプトACE関連記事
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE構想の確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「F-22が岩国展開訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-13
「F-15EにJDAM輸送任務を」→https://holylandtokyo.com/2021/03/09/156/
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/
「中東派遣F-35部隊も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢で訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

 

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