米空軍戦術構想ACEの課題を若手が語る

空軍外の研究機関出向の少佐2名による論考
彼らが担う中露との戦いへの危機感あらわ

DABS.jpg12日付Defense-Newsが準トップ記事扱いで、米空軍の将来作戦運用の中核であるACE構想(Agile Combat Employment)の課題に関する米空軍少佐2名による論考を掲載し、対中国や対ロシア作戦を支えるこの構想の今後の課題を、4つの視点から紹介しています

ACE構想(Agile Combat Employment:機敏な戦力展開)は、中国やロシアは本格紛争緒戦で、保有する大量の弾道ミサイルや巡航ミサイルで米空軍戦力が集中する拠点航空基地(飛行場など)を攻撃して無効化を企図するだろうから、施設や装備が不十分であっても周辺の飛行場等に戦力を分散し、中国等のISRやターゲティング活動を困難にして対抗しようとの作戦構想です

DABS5.jpgこのACE構想では、施設の充実した航空基地と施設装備が不十分な周辺飛行場等を一群と考えて運用し、分散展開予想基地への物資・装備の事前集積、緊急空輸への備え、迅速な分散機動展開状況での戦力発揮訓練、分散展開先での少人数での運用確保に兵士のマルチ職能付与(給油、給弾、軽易な整備)・・・などが必要とされ、2017年に同構想が打ち出されて以降、欧州やアジア、更には中東展開部隊も訓練を開始し、教訓の共有や手順の共通化が地域間で進められているようです

また、当初は足の短い戦闘機クラスの分散運用がACEの対象でしたが、最近は大型爆撃機もこの流れに加わり、BTF(bomber task forces)の使用できる飛行場を増やす取り組みが始まっている模様です

以下では、「Center on Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies」との研究機関に所属する、Scott D. Adamson少佐とShane “Axl” Praiswater少佐による論考が指摘している、ACE構想4つの課題をご紹介します

12日付Defense-News記事によれば
使用可能な同盟国やパートナ国の飛行場数拡大
DABS2.jpg戦力の分散先となる飛行場をより増やす必要がある。分散先が少なければそれだけ中国やロシアの攻撃を受けやすくなり、米空軍指揮官の選択の余地もなくなる
様々な関係国との合意や協力強化で使用可能基地が増えてはいるが、本格紛争緒戦では何波ものミサイル波状攻撃が予期されることから、更なる作戦運用基盤の確保が必要

事前集積物資や装備の調達加速
分散運用先で必要となる物資や装備(deployable air base system)の調達には思いのほか時間が必要であり、欧州で必要な事前集積物資や装備の準備は、2026年でも完了していない可能性があるほどである
これをアジア太平洋地域に拡大すれば更に時間が必要と予期されることから、未だ予算化されていない事前集積物資用の資金を早急に確保し、速やかに調達プロセスを開始すべきである

空輸所用をしっかり見積もり必要な投資を
DABS3.jpgACE構想では迅速な物資輸送がカギであり、空輸需要は極めて大きい。従って、現在の空輸能力でACE構想を支援可能かどうかを、厳しい戦場環境であること前提として慎重に見積もるべきである
厳密な見積もり結果を基礎とし、必要ならば空輸能力の強化や、または長距離爆撃能力強化への更なる投資配分を決断すべきである

米軍兵士の多職能(multi-capable)化の拡大推進
米空軍は複数の職能を備えた兵士の養成を拡大すべき。迅速に展開可能な兵力数には限界があることから、メインの職種以外の複数の職務遂行能力を身に着けた兵士が必要である。米空軍は教育体系を再考し、戦力展開時の兵站負荷に備えるべき
2020年から各メジャーコマンドで「multi-capable化」の取り組みが始まっているが、米空軍として基礎教育や技術教育学校の在り方から再検討し、前線の動きを支えるべき
ACE構想の実現は必要不可欠な課題である。Brown空軍参謀総長が勤務指針を示した冊子の中で述べているように、「(変化を怠れば、)数十年我々が国益を守るために保ち続けてきた、確実性をリスクにさらすことになる」ことを忘れてはならない
/////////////////////////////////////////////////////

ACE構想の今後の課題からは、ACE構想の実行可能性確保が極めて厳しい状況にあることが伺えます。
DABS4.jpg記事では、ポーランドの展開先飛行場での展開システム(deployable air base system)の写真を紹介しており、米空軍兵士が滑走路補修訓練を行う様子の写真もありますが、「お試し」「形ばかり」程度の訓練風景写真に、公開しない方が良かったのでは・・・と感じてしまいました

また2名の少佐が「こそッと」訴えた、「又は、長距離爆撃能力強化への更なる投資配分を決断すべき」との一文が、2名の本音の様にも読めてしまいます

集中配備から、分散運用する新コンセプトACEへ

飛行隊長が語るF-35中東展開でかく戦えり: 東京の郊外より・・・
F-35の中東派遣第2弾で昨年10月から9か月間 新米パイロットや整備員を引き連れた中佐が振り返る 8月18日付米空軍協会web記事が、F-35飛行隊の第2弾として中東UAEのAl Dhafra基地に派遣された第34戦闘飛行隊長Aaron Cavazos中佐への取材記事を掲載し、命令から2週間で現地に展開し、米本土で...
小規模僻地展開構想ACEに備え三沢部隊が演習: 東京の郊外より・・・
コロナが猛威を振るい始める前の話ですが 次期米空軍トップのBrown太平洋空軍司令官が主導 欧州米空軍とも意見交換しつつ案を練る 3月19日付米空軍協会webは、米空軍三沢基地の第35戦闘航空団が最近、米空軍が対中国に備えて構想を練っているACE(Agile Combat Employment)関連演習を行ったと伝え...
太平洋空軍が戦力分散運用ACEに動く: 東京の郊外より・・・
久々にACE(Agile Combat Employment)について 作戦機を分散基地で支援する地上支援機材が鍵の一つ 地上要員にパワースーツ装着も検討 11日付Defense-Newsは、中国による各種ミサイル兵器の増強により、西太平洋の米空軍拠点航空基地の脆弱性が増し、貴重な米軍航空戦力が地上で無効化される恐れ...

https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-01

応援お願いします

世界の安保・軍事情報を伝えたい ブログ「東京の郊外より」支援の会
米国を中心とした世界の軍事メディアが報じている、世界の標準的な安全保障情報や軍事情報をご紹介するブログ「東京の郊外より・・・」を支援するファンクラブです。ご支援お願いいたします。
ブログサポーターご紹介ページ: 東京の郊外より・・・
お支援下さっている皆様、ありがとうございます! そのお気持ちで元気100倍です!!! ●赤ちょうちんサポーターの皆様(3000円/月)  guest4e4970ea6984様  gueste29a9f838354様 ●ランチサポーターの皆様(1000円/月)   ●カフェサポーターの皆様...
タイトルとURLをコピーしました