米軍将官人事がやっと動くも空軍重要人事3件はまだ

3月から議会承認停滞の455ポストから425やっと承認
ただ空軍副参謀総長、ACC司令官、太平洋空軍司令官まだ
共和党Tuberville議員ようやく折れる

Tuberville.jpg12月5日、米議会上院が3月から停滞していた新たな米軍将官人事(昇任および異動)の議会承認を再開し、承認保留されていた455ポストの内、同日425ポストにやっと議会承認がおりました。これだけ大量の高官人事が10か月近く停滞したことで、実際の「指揮官交代」等が急に可能なわけではありませんが、なんとか動き出したということです

「米本土での妊娠中絶を希望する海外派遣中の女性兵士への旅費や休暇付与」への反対を理由に人事承認停滞を招いたTommy Tuberville上院議員(共和党:アラバマ州選出)関連のゴタゴタについてはここでは触れず、とばっちりの激務で心臓発作を起こし、10月29日に倒れた海兵隊司令官をご紹介した末尾の記事をご参照頂くこととし、

本日は、細部理由が不明ながら米軍全体で依然未承認の30ポスト案件(大将ポスト関連11を含む:今後一括審議&承認方式ではなく、個別に時期未確定のスケジュールで審議の模様)のうち、全体の人数比率からするとアンバランスに割合が高くなっている空軍と宇宙軍が11ポストから、まんぐーすが過去に大統領ノミネート時点でご紹介した以下の重要3ポスト案件について、再度ご紹介いたします

●副参謀総長へJim Slife現空軍作戦部長
Slife4.JPG—特殊作戦ヘリ操縦者ながら史上初めて空軍作戦部長に2022年12月から就任している行動派。新空軍参謀総長のDavid Allvin大将とも良好な関係で、関係者は「Allvin参謀総長がアイディアを出し、Slife副参謀総長が実行を担う」形になるのでは・・と予想。ちなみに空軍人ツートップが共に非戦闘機パイロットなれば10年ぶり。
—Brown空軍参謀総長・Allvin副参謀総長・Slife作戦部長体制時代に煮詰めた、維持費のかさむF-15やA-10の早期退役加速、F-35調達計画機数の削減、これらの裏返しとして先端無人機や指揮統制能力強化への投資を推進する案をさらに強力に推進を予期

●戦闘コマンドACC司令官へ異例の年上大将
Wilsbach9.jpg—空軍戦闘コマンド(ACC)は、全ての戦闘機や攻撃機を維持管理&訓練する米空軍最大のコマンドで、87000名の兵士と1100機を配下にする巨大組織で、その司令官は米空軍内で「戦闘機パイロット族のボス」と認識されている。そのポストに現司令官であるKelly大将より年上で、普通なら退役する年齢の、ペンタゴン勤務経験もない大将(現太平洋空軍司令官:これ自体が既に異例)が推挙される異例の人事

—この異例のWilsbach大将は、アジア太平洋戦域に勤務経験が偏る地域専門家であり、対中国有事への備えを最優先事項とする米空軍にとって「余人をもって代えがたい」人材であることや、米空軍全体で対中国作戦用に取り組むACE(Agile Combat Employment)構想の発案者として、その推進普及をPACAF司令官として2020年7月から最前線で推進してきた功績があるものと推測
—また各種改革推進派である同大将を「戦闘機パイロット族のボス」にすることで、F-35調達数の削減や、NGADやCCA導入に向けた戦闘機体系変更への組織的抵抗を抑え込む役割も期待されていると思われる

●太平洋空軍司令官へ在日米軍司令官経験者
Schneider3.jpg—候補となっている現在米空軍司令部のスタッフ長であるSchneider中将は、ワシントンDCの空軍司令部で数百人の空軍司令部スタッフ間の政策方針や業務分担や諸計画や人事などなどについて「synchronizes and integrates」する任務に就いており、空軍司令部や空軍全体に「顔が利く」存在
—また、2019年2月から21年8月まで在日米軍司令官を務め、PACAF参謀長やIndo-PACOM参謀長経験もある地域専門家で、更に年齢や期別は防衛大学校でいうと32期相当の空軍士官学校卒業生で、現在の自衛隊の幕僚長や主要コマンド司令官と同期レベルでもあり、その点でも航空自衛隊をはじめとする自衛隊幹部とも円滑な意思疎通が期待できる
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Tuberville2.jpg米大学フットボールの監督(ヘッドコーチ)としてアラバマ州の大学で好成績を残し、その人気で同州の上院議員に当選した人物によって保留されていた「455ポスト」の大半は、本来であれば夏には議会承認が終了し、10月からの新予算年度開始から各部隊で活躍が期待されていた人事です

中国の共産党独裁とその裏返しで蔓延していた腐敗体質が招いた「中国経済の崩壊」を見れば、民主主義がやっぱり良いな・・・と思いますが、Tuberville上院議員一人がもたらした米軍全体への影響を考える時、民主主義が持つまどろっこしさをしみじみ感じます

未承認の米空軍重要人事3件の関連人物紹介
「特殊作戦ヘリ操縦者が作戦部長に」→https://holylandtokyo.com/2022/11/18/3965/
「異例、次のACC司令官人事」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「PACAFに在日米軍司令官経験者が」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/

Tuberville上院議員を巡るゴタゴタ情報もご紹介
「米海兵隊司令官が倒れNo2も空席の3日間」→https://holylandtokyo.com/2023/11/06/5205/

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