次の空軍戦闘コマンド司令官に現PACAF司令官

ペンタゴン勤務無き異例の空軍大将が戦闘機族のボスに
失礼ながらPACAF司令官を最後に退役と予想していました
なにせ前任者より年上の異例人事ですから・・・

Wilsbach9.jpg5月2日、現在の太平洋空軍司令官(PACAF司令官)であるKenneth S. Wilsbach大将が、次の米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官に推挙されました。米空軍協会が4日に米空軍幹部に確認したということです。

なお空軍戦闘コマンド(ACC)は、全ての戦闘機や攻撃機を維持管理&訓練する米空軍最大のコマンドで、87000名の兵士と航空機1100機を配下にする大規模組織で、その司令官は米空軍内で「戦闘機パイロット族のボス」と認識されています

Wilsbach8.jpgWilsbach大将が現在勤める太平洋空軍司令官ポストには、4月24日に空軍司令部スタッフ長を務める前在日米軍司令官のSchneider中将が大将昇任と共に推挙されたところでしたが、Wilsbach司令官の今後については特段の発表がなく、まもなく61歳との年齢から、まんぐーすはてっきり「勇退」されるものと考えておりました(お詫び申し上げます)

お詫びついでに、まんぐーすはWilsbach司令官がPACAF司令官に推挙された2020年5月にも、58歳との当時の年齢と、ペンタゴン勤務が一度もなく、ハワイ韓国嘉手納アラスカと中東に偏った経歴(米本土勤務はフロリダのエグリン基地のみ)から、PACAF司令官がおそらく最後のポストだろうとの、失礼な紹介記事を書いたことについても、併せてここに謝罪させていただきます

Kelly AFA.JPG言い訳させていただくと、現在の米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官Mark D. Kelly大将は現在60歳で、後任候補Wilsbach大将が年上の61歳となる極めて異例の人事だということです。現在のACC司令官Kelly大将がACC司令官就任時の年齢が57歳で、夏に交代するとすると60歳で退任となり、後継者のWilsbach大将が61歳で就任するという年齢逆転の異常さです

このような異例の人事案となった背景には、以下で詳しく経歴をご紹介するように、Wilsbach大将がアジア太平洋戦域勤務に偏る地域専門家であり、対中国有事への備えを最優先事項とする米空軍にとって「余人をもって代えがたい」人材であることや、米空軍全体で対中国作戦用に取り組むACE(Agile Combat Employment)構想の発案者がWilsbach大将で、その推進普及をPACAF司令官として2020年7月から最前線で推進してきた功績があるものと推測します

Wilsbach7.jpgWilsbach大将は飛行時間5000時間越え(将官としては異常に多い)のF-15C, F-16, F-22戦闘機パイロットで、対イラクや対アフガン(対アルカイダ)作戦である「Northern Watch」「Southern Watch」「Enduring Freedom」作戦で71回もの実戦出撃がある珍しい空軍高級幹部です。また2020年7月から務める太平洋空軍司令官として、第5世代機F-22を初めてフィリピンとテニアン島に展開させたことで知られています

以下では、同中将の経歴がアジア太平洋地域に集中する様子を、勤務地毎、階級毎にご紹介いたします
●1985年、フロリダ大学で土木工学を学び、ROTCコース学生として卒業、米空軍で戦闘機パイロットコースに進む

●嘉手納基地勤務
—大尉から少佐にかけ3年間、F-15C飛行隊の作戦運用幹部
—准将として、嘉手納基地司令官&第18航空団司令官
●ハワイでは
—少佐として、太平洋軍司令官の副官
—大佐として、太平洋空軍副作戦部長
—准将として、太平洋軍副作戦部長
ー大将として、太平洋空軍司令官(兼ねて太平洋軍JFACC~現在まで)

●アラスカでは
—少佐として、F-16飛行隊作戦担当幹部
—中佐として、F-16飛行隊長
—中将として、アラスカ地域司令官&第11空軍司令官(エレメンドルフ基地)
●韓国では
—2018年8月から中将として、第7空軍司令官&Osan基地司令官&在韓米軍副司令官

●中東では
—中佐として、中東航空作戦センター司令官
—少将として、米中央軍作戦部長や第9空軍司令官

●米海軍では
—少佐として、米海軍指揮幕僚大学卒業
●米本土では
—大佐として、フロリダ州エグリン基地の飛行群司令官
—大佐として、同基地司令官&第56航空団司令
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Kenneth Wilsbach大将の公式経歴表
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108478/kenneth-s-wilsbach/

Wilsbach12.jpg繰り返しになりますが、ペンタゴン勤務経験がありません。米空軍司令部や統合参謀本部や国防省での勤務経験がない、つまりワシントンDCの「政治力学」を現地で肌で感じることなく「大将」になった極めて特異な人物です。ウクライナで戦いが続く欧州にも全く関与していませんし・・・

学生としてのDC滞在はあります。中佐後半に「Industrial College of the Armed Forces」を、准将として太平洋空軍副作戦部長勤務間に「CAPSTONE Executive Development Course」を、それぞれ履修していますが・・・

ペンタゴン勤務が無いアジア太平洋の専門家Wilsbach大将
「ACE構想の生みの親が語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「今すぐE-7ほしい発言」→https://holylandtokyo.com/2021/03/01/150/
「F-35はF-35らしく:F-22の失敗に学べ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/05/379/
「Wilsbach太平洋空軍司令官の紹介」→https://holylandtokyo.com/2020/05/18/674/

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