米空軍トップが春完成の電子戦戦略を語る

国防省電子戦戦略や同ロードマップと連携を図りつつ
もはや電磁スペクトラム優勢確保は不可能な状態だと認め
湾岸戦争後、我々は電子戦分野で居眠り運転だったと吐露

Brown4.jpg1月27日、Brown米空軍参謀総長がオンライン講演し、昨年10月末に発表された国防省電子戦戦略(電磁スペクトラム戦略:Defense-wide electromagnetic spectrum strategy)とその具体化に向けたロードマップが3月に完成する中で、米空軍も今春に大転換の電子戦戦略を取りまとめると語り、その方向性について触れました

「相手に手の内を明かさない」方針から、昨年10月29日に概要だけがブリーフィングされた国防省戦略も「ぼんやり」したものでしたが、空軍参謀総長が語った内容も、具体的な話よりも危機感と姿勢と大きな方向性を述べたもので、「ぼんやり感」は否めません
「さわり国防省電子戦戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03

それでもしかし、強烈な危機感と現状認識、より攻撃的な態勢を目指すこと、ハードよりソフト面に注力すること、同盟国等を含めた一体性を追求する方向などが述べられており、米国防省全体の方向性を理解する一助となりそうなのでご紹介しておきます

まず昨年10月末の国防省戦略の「さわり部分」復習
Electronic Warfare.jpg新戦略では、従来の伝統的な電子戦分野である電子妨害や心理戦活動、商用・公用・軍用の電磁波運用管理だけでなく、米軍が電磁波の世界で容易に隠れる(Hide)ことが出来たり、商用周波数帯を作戦用により容易に使用出来たりする方向である
また、敵の周波数使用を容易に拒否できるようにする方向を追求する
日々の電磁スペクトラム運用を司る「combatant command」を創設する方向で検討す
具体的なロードマップ(EMS roadmap)は、Hyten統合参謀本部副議長らが中心となり2021年3月までにまとめる

・・・と説明していますが、よくわかりません。軍用の周波数帯を不必要時に民間に貸し出す代わりに、必要時に商用周波数を軍が使用できるような枠組みを含んでいるとの説明もあるようです

Brown空軍参謀総長は新戦略の方向性について
Brown nomination.jpg今春、米空軍は「electromagnetic spectrum warfare strategy」を発表する予定で、米空軍の向かうべき方向を示し、本格紛争においてどのような作戦運用が必要か、どのように資金を確保するか等を描くものとなる
また同戦略を理解しやすいように、司令部スタッフには同戦略内容が実現した際の仮想的な運用シナリオを準備するよう指示しており、同戦略に沿って2030年に到達すべき姿を理解しやすくし、空軍全体で取り組んでより早く達成できるよう考えている。その想定は中国を相手にしたものになろうが、我が目指すレベルに中国よりも早く到達することを望んでいる

空軍の戦略は、アフガンやイラクでの20年の戦いの中で、我々が電子戦を無視してきた流れと決別するものであり、従来の防御的な電子戦から攻撃的な姿勢への大転換を図るもので、決して小さな改善ではない
背景には、我々が必要なレベルで敵対者を抑止できていないとの危機感がある。中国やロシアのサイバー部隊は、宣戦布告なしに米国を侵略しており、情報誘導工作や偽情報作戦で世論操作を行っているが、米国がそれらを抑止できていない現状がある

EA-18G capability.jpgこのまま好きにさせるわけにはいかない。我らは大転換を図る必要がある。従来通りの少しづつ変化していく方法では、我々はシンプルに敗北する。湾岸戦争後30年間、電子戦分野で我々は居眠り運転してきたと考えるべきだ
空軍の戦略は昨年10月末発表の国防省電子戦戦略と完全にリンクしており、Hyten統合参謀本部副議長が3月にまとめ、初めて4軍の役割を指示することになる同国防省戦略ロードマップとも連携を図って進めている

電磁スペクトラム戦での優越はもはや可能ではない。航空優勢は一部の地域で確保可能だろうけれど・・・。電子戦能力を必要な場所と時間に提供できなければならない。しかしこれは、多くの通過点があるゴールがない終わりなき戦いで、我の優位を維持し続ける取り組みであ
単にステルスや自己防御ジャミングと言った防御的なものではない。過去25年使い続けてきたような装備では将来は戦えない。米空軍は電子戦分野で機動し攻撃する攻撃的な態勢を目指

Brown2.jpg投資面での最大の変化は、ハードやプラットフォームからソフト重視への変化である。確かに目に見えにくく、効果確認が難しいいオープンソースなソフト導入のような事業は、米議会の理解を得るのが難しい
一方でソフト投資はミサイル等と比較して安価で効果も期待できる。その点で電子戦の非破壊的な能力確保は、コストで押しつぶされる恐れを減少させてくれる。また一方で、ソフトは最新手法をコードで表現すれば効果を実現でき、数で圧倒してくる中国にも対抗できる

同盟国等をこの電子戦戦略に巻き込むことに米空軍は取り組み、最初から含めておくことで装備が協力的に使用できなくなることを避ける。全ての関連能力を融合して活用できるようにしたい
すでに米空軍は、新たな電子戦戦略やコンセプトを編み出すために、一連の実験演習や仮想ウォーゲームに取り掛かっている。しかし米空軍はあるべき状態にはなっていない。米議会から遅れを指摘され、尻を叩かれている状態であり、困惑することもあるが、叱咤激励が力であることも確かである
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EA-18G Clark3.jpg対中国では、電磁スペクトラム優勢確保はその性格上可能ではない・・・と言い切り、航空優勢も一部地域(localized)でのみ達成可能だろうとハッキリ述べる姿勢は、50億円を投入したシリア兵士養成で、「5-6名」しか前線で活動していないと率直に認めたオースチン国防長官とも通じるものがある気がします

中国軍の電子戦能力がすごいので、防御だけではとても太刀打ちできない・・・やられる前にやっつけなくては・・・との主張だと思います

ハードやプラットフォームより、ソフトで勝負・・・との意味が体で感じられていませんが、まぁそういう時代なのでしょう。湾岸戦争当時から変わっていない状況を、米議会から厳しき指摘されていることを、認めざるを得ない厳しい立場です。Brown大将は・・・

国防省の電子戦戦略と空軍の動き
「さわり国防省電子戦戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「電子戦とサイバーと情報戦を融合目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
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