少佐&大佐クラスの高等教育をJohns Hopkins大学と協力し
陸海空軍が軍内に教育機関を保有する中
DCに設置して卒業後の引っ越し負担の軽減も
たぶん他軍種の士官クラスは羨望のまなざしを・・・
10月26日、米宇宙軍とJohns Hopkins大学が、少佐&大佐クラス幹部の教育課程を、同大学内の著名なSAIS(School of Advanced International Studies:ワシントンDC)内に宇宙軍用に新設し、2023年夏から開講すると発表しました
米軍の各軍種は、少佐&大佐クラス上級幹部の教育課程を各軍種の大学内に設置しており、宇宙軍も現在は、米空軍がアラバマ州マックスウェル空軍基地「Air University」内で行っている教育課程で、米空軍少佐&大佐クラスらとカリキュラムを一部共有する形で教育を行っていますが、この宇宙軍課程と教官をSAISに移し、SAIS教授陣からの支援も受けて「ワシントンDC」で行うとのことです
宇宙軍が他軍種と異なる形で少佐&大佐クラス教育機関を軍外に独立して立ち上げるのは、宇宙軍の規模が他軍種に比して小さく独自の課程運営が難しいことが大きな理由の一つですが、同課程卒業生の多くがペンタゴン勤務になる現状から、家族も含めた引っ越し負担を軽減することも、結果として意味が大きいと宇宙軍の教育担当Shawn N. Bratton少将は正直に語っています
本件を報じる米空軍協会web記事は、例えば米空軍の同課程は前述のようにアラバマ州マックスウェル基地に所在するが、基地周辺の子弟用学校のレベルが低く、配偶者の就職口も限定されることから、課程を履修する少佐&大佐クラスから批判的な声が上がっており、また10か月の課程履修後に再び引っ越しをすることへの負担感も人事上の課題となっているようです
また同課程履修で得られる上級ポスト昇進にも重要なJPME資格(Joint Professional Military Education)取得に関し、陸海空軍の場合、選抜され著名一般大学院で高等教育を受ける者は、各軍種の軍事知識を各軍種の教育課程の「通信教育」で並行履修する苦行を強いられますが、SAIS内新課程に配置される宇宙軍人教官からも教育を受ける宇宙軍課程卒業者は、「通信教育」なしでJPME資格を得ることができる点でも軍人学生のメリットが大きいようです
細かな「引っ越し負担」や「卒業時の資格」を最初に説明しましたが、何と言っても大きいのは、宇宙ドメイン問題が単に軍事だけに留まらず、国の経済や社会生活を支える基盤としてクローズアップされる中で、宇宙軍の近未来にリードする人材を、国際関係教育で世界第3位に位置づけられるSAIS教授陣の力も得て、各種政策の専門家が集うワシントンDCで行えることのメリットは計り知れないと思います
同時にJohns Hopkins大学のSAISにとっても、今ホットな宇宙問題に現場で立ち向かってきた優秀な30代前半や40代前半の米軍人を学内に毎年60~80名受け入れ、学界での理論研究と結び付ける機会を得ることは、「実践的な政策提案能力獲得」を目指すSAISにとっても大きなメリットと考えられます
現在少佐&大佐クラスの教育機関を、陸軍はペンシルバニア州に、海軍はロードアイランド州に、空軍はアラバマ州に設置していますが、陸海軍の今後同課程で教育を受ける可能性のあるエリートクラスは、宇宙軍のアイディアを「羨望のまなざし」で見ていることでしょう。
宇宙軍を取り巻く環境は、トランプ政権による強引な創設時の熱気が薄れかけており、陸海空軍との予算争いや人材面や政治力等々の側面から厳しさを増すと考えられ、決して明るい見通しはないと思いますが、本件に関しては「規模が小さい逆境をチャンスに変えた」好例としてご紹介しておきます
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