核エネルギー推進技術とか、核熱推進(NTP)とか、DRACO計画との言葉を覚えておきましょう
1月13日、米空軍協会ミッチェル研究所で「Maneuver Warfare in Space: The Strategic Mandate for Nuclear Propulsion」とのレポート発表が行われ、衛星に対する多様なニーズや衛星の防御力向上のため、米国防省研究機関が様々なアプローチで進めている核エネルギーによる衛星推進装置の開発促進などなどを訴えました
同レポートは「institute’s Spacepower Advantage Center of Excellence」のChristopher Stone氏によるもので、中露による宇宙兵器開発に対抗するには衛星に核エネルギー推進装置を搭載して機動性を強化することが不可欠だと訴えています
従来の衛星推進装置は太陽光発電やバッテリーをエネルギー源とした装置で、宇宙ゴミとの衝突を避けるための一時的な軌道修正用の限定的能力しかなく、また技術進歩により衛星の小型化が加速し、「cubesats」との手のひらサイズ衛星の大量打ち上げ方向にある中、従来サイズの衛星推進装置が搭載困難になって核エネルギー推進のニーズが高まっているとも主張しています
米国防省では、DARPAがDRACO(Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations)計画の一環として、「NTP:核熱推進」システムの設計契約を、3企業(General Atomics, Blue Origin and Lockheed Martin)と2021年4月に結んでいます
また同年9月には、最新民間技術を国防省に取り込むために設けたDIU(Defense Innovation Unit)が、軽量で長期間使用可能な核エネルギー推進技術(nuclear-powered propulsion technology)を持つ企業の募集募集を開始したと報道されました
核エネルギー利用は小型で大きな出力を長期間得ることができる等のメリットがある反面、依然として安全性への懸念が高いハードルになっているようですが、技術進歩によりリスクよりメリットがはるかに大きく、中露に対抗するには不可欠な技術だとChristopher Stone氏は訴えたようです
13日付米空軍協会web記事によれば
●Stone氏は、最新の核エネルギーエンジンは少なくとも現在の化学推進エンジンと同等に安全で、より早く移動でき燃費もよいと訴え、「この推進装置を実用化しないことによる国家安全保障への影響は、核の安全性や環境への影響懸念よりはるかに大きい」と述べた
●そして、例えば核熱推進システムは。従来の化学反応推進装置のように排気を伴わず、水素ガスを加熱して推進に用いるのみだと主張した
●また核エネルギー推進は、従来の衛星が地球周回軌道上での微修正だったのに対し、その外側の「cislunar space」への出入りを可能にし、その機動性で衛星が防御行動をとることができると利点を主張した
●例えば、地上発射対衛星ミサイルや宇宙配備のレーザー兵器からの回避能力が今後の衛星には必要だが、現在の衛星は防御をほとんど考慮していないと語った
●そしてStone氏は、「中国は既に、地上&宇宙配備の宇宙兵器と組み合わせた、宇宙での機動作戦戦略に切り替え、2040年までに熱核推進衛星を含むアーキテクチャーを構成しようとしている」とも語った
●Stone氏はレポートの中で米国が成すべきこととして、
・迅速に宇宙での機動的作戦が可能な宇宙戦力構成を導入せよ
・NASAやエネルギー省と協力し、核熱推進の開発導入を推進せよ
・DARPAのDRACO計画(前述)の実現を加速せよ。DRACOは低濃縮ウラン利用で手続きハードルが低い
・中露の宇宙アセットにリスクを与える宇宙や地上配備の対衛星兵器を開発配備せよ。現有のstandard missileやMD用ミサイルの応用を考えよ
・衛星延命装置(Mission Extension Vehicle)の開発に注力し、GPSや重要衛星網に限定的でも防御的移動能力を提供して抑止力を強化せよ
・米宇宙軍は、米宇宙アセットが直面している脅威や堅強な宇宙戦力を構築する必要性を、国民や議会に教育すべきだ
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実際の技術成熟の程度や、国防省機関が取り組み各種プロジェクトの煮詰まり具合をよく理解していませんが、核エネルギー推進技術(nuclear-powered propulsion technology)とか、核熱推進(NTP:nuclear thermal propulsion)とか、DRACO(Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations)計画との言葉だけでも覚えておきましょう
衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-12
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-14
衛星の延命や機動性付与技術
「衛星延命に企業と連携」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-17
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-27