2023年春に高コストや技術的課題から導入一旦断念も
もう一つの空軍開発戦闘機搭載HACMの開発遅延もあり
「極超音速兵器」については、2023~24年頃を最後に「放置」して取り上げておりませんでしたので、中露に先を越されて米議会から強く催促を受けていた同兵器の米軍での開発について、若干
経緯を振り返りつつ、ご紹介いたします。
陸海空軍で役割分担しつつ、高価な兵器を開発中も、海軍による艦艇や潜水艦への搭載目途が立たず、空軍内で本命だった戦闘機搭載型HACMの開発が遅れたため、「お蔵入り」していた爆撃機搭載型(B-52とB-1)ARRWに再び目が向けられたようです。
●陸海空軍での分担は、
・陸海軍は兵器の主要部分を共有する開発方式で、陸軍LRHW、海軍CPSとの兵器名で、陸は車両搭載型、海は艦艇$潜水艦搭載型に取り組み。射程2500㎞から3700㎞以上で、重量15トンの巨大な兵器。グアムなどの遠方から中露領内の重要拠点や堅牢な地下基地やインフラを根こそぎ破壊する狙い
・1発の価格が約60億〜105億円で、1発3億円程度のトマホークが数十発購入可能な超高価格
・陸軍は運用部隊MDTF(5つ編成予定:アジア太平洋に3個)に配備し、展開訓練を開始。海軍はZumwalt級ステルス駆逐艦への搭載が2年遅れ(2025年試験開始予定も27年へ)で、空軍ARRW導入加速の一因
●米空軍は航空機搭載型2タイプに取り組み
・爆撃機搭載型ARRW(射程900-1500㎞:1発23-25億円):2019年から開発開始も2023年に一旦導入中止判断。多弾ロケットで大気圏外に出て加速し、タングステン突入体破片が「散弾」のように運動エネルギーで敵の防空レーダーや地対空ミサイル網を無力化。重量約3トンでB-52とB-1に機外搭載
・戦闘機搭載型HACM(射程約1900㎞:1発27億円以上):スクラムジェットで巡航ミサイルのように大気中飛翔し弾頭で目標破壊。戦闘機から臨機に移動式ミサイル発射機や敵指揮所など「時間的制約のある重要目標」を無効化狙い。空軍はARRWよりHACM優先で開発も、基本設計やスクラムジェット開発の遅延や素材価格高騰などで試験が当初2024年予定から2年遅れ。これもARRW復活の一因
●極超音速兵器の開発の壁と克服の道
・極超音速(マッハ5以上)飛翔で発生する摩擦熱(1500~2000度級)から電子回路や制御システム、更に空力制御用の可動部分を保護する技術開発が最大の技術的課題。ARRW等開発が2021年から24年頃に連続失敗したのはこの課題関連。これにはカーボン素材や超高温セラミックス複合材料投入で解決に目途。また高温間のGPS等との通信維持にDARPAが新技術開発。兵器内部の冷却技術も改善
・コストは依然として大きな問題→同兵器に必要な特殊素材や精密部品の供給企業が限定的で、諸物価高騰の中で、市場競争原理での価格低下が困難。また特殊セラミックスや炭素複合材の加工は高度な手作業で大量高速生産ライン不成立
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上記のような「技術的課題」や「高コスト」問題もありましたが、もう一つの「この高価な兵器が本当に必要なのか?」議論もあります。「中露に後れを取るな」との米議会からの矢のような厳しい追及の中で、2022年にKendall空軍長官(当時)が行った一連の発言要旨をご紹介しておきます。
発言背景として、2022年段階で、米国防省は既に約1兆1000億円を極超音速兵器開発に投入し、2023-27年に間に追加で約1兆1000億円を投入する計画になっていました(なお、この額には陸海空軍独自の開発経費2600億円は含まれていない)
●中国などは、米国の接近拒否を狙って同兵器を開発保有しているが、米国の目標は敵の侵攻を抑止することであり、作戦運用目的が中露と米国とは相当異なる。「mirror-imaging」で中国と同様に極超音速兵器が米軍にとって重要だと判断すべきではない
●中国等は、脅威に感じている米軍の空軍基地や海軍拠点等を同兵器で攻撃したいだろう。しかし米軍には多様な兵器の選択肢があり、極めて高価で、費用対効果が最適とは考えにくい同兵器を急いで開発使用してまで、攻撃したい目標が存在するかをよく吟味する必要がある。
●米軍には、極超音速兵よりは低速度だが安価な巡航ミサイルがあり、そのステルス性や破壊力、更に米軍の敵防空網への各種妨害能力を考慮すれば、十分に必要な効果が確保可能な戦力を保有している。トレードオフを慎重に吟味し、弾薬庫にどのような兵器をどれだけ備えるかを判断すべき
ウクライナや対イラン作戦の教訓もあり、「極超音速兵器の位置づけ」や「各種弾薬調達の在り方」に関し、様々な議論を経て10月26日のARRW製造契約発表に至っていると思いますが、軽易や背景を中心にご紹介いたしました。
米空軍の極超音速兵器開発
「突然グアムで実弾講習会」→https://holylandtokyo.com/2024/03/08/5662/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「3回連続ARRW試験に成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「高価な兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「重要性は中と米では違う」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
米陸海軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の配備は24年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「Zumwaltへの極超音速兵器契約」→https://holylandtokyo.com/2023/02/22/4313/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
「陸軍はあと2回試験」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「潜水艦へは2028年」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/


2023年に米空軍が導入中止を発表していた極超音速兵器ARRW(Air-Launched Rapid Response Weapon)に関し、10月26日に米空軍がロッキード社と約1100億円の製造契約締結を発表しました。発注数や納入時期などは非公表ですが、年度予算案に付属する将来計画では、2028年から2031年までの5年間に、約800~1000億円を投入する構想が示されているようです