米空軍の優先研究に「よく考えろ!」提言

言いたい放題の一般論提言ではありますが・・・
各所で研究課題に挑戦する皆様のヒントになれば・・・

Skyborg3.jpg米空軍が「優先研究項目」として指定し、資源や人材を投入して短期間での実用化を目指す「Vanguard計画」(2019年11月開始)に対し、外部有識者で構成される「米空軍科学諮問評議会:Air Force Scientific Advisory Board」が提言し、より具体的に、広い視野で活用分野を探り、ダメそうなら諦め、よりベンチャー的に取り組め・・・等々との言いたい放題の報告書をまとめた模様です

「Vanguard計画」自体は2019年春に立ち上がりましたが、研究対象を絞り込むのに半年以上がかかり、6つの対象項目で公表されているのは「無人機ウイングマン:Skyborg構想」、「無人機の群れ:Golden Horde構想」、「新たな航法衛星3」の3つだけですが、主導する米空軍研究所AFRLに研究の自由度を保証する代わりに、評価もきちんとやる姿勢で米空軍幹部が臨み、同評議会に開始1年目の評価を依頼したようです

Gremlins swarming.jpg同評議会の提言は言いたい放題で、米空軍研究所やそれを指導する米空軍マテリアルコマンドや空軍省革新能力造成室にとっては「そこまで言うか!」的な内容ですが、お役所研究機関や日本の大企業の研究組織にも当てはまりそうな内容なので、とりあえずご紹介しておきます

ただ具体的な研究項目には触れず、提言部分だけが報道されていますので、具体的にどの研究課題のどの部分に対する提言なのかが示されず、ストレスのたまる「言いたい放題」の紹介となっていますので、その点はご容赦ください

昨年12月18日付米空軍協会web記事によれば
NTS-3.jpg12月に米空軍幹部に提出された同評議会の提言は、「Vanguard計画」をより具体的に、広範な範囲で応用を検討し、ダメらな早めに諦めよと提言し、6項目の対象研究の3つには改善を促し、残り3つには対象から葬り(enshrine)長期的な視点で米空軍内で活用する方向を示唆した
なお、「Vanguard計画」推進に米空軍は2021年予算で約170億円を要求したが、米議会は約60億円削減する方向にあり、本計画の継続・推進にはプロジェクトの継続改善に取り組む姿勢が欠かせない側面もある

同評議会は、優先項目は4年以内にプロトタイプ試験に進めるような対象であるべきで、米空軍省高官が選定判断に関与すべきと提言し、現在の対象があまりに広範であるため絞り込む必要を指摘した。一方で、現場との接点が多い研究開発調達次官室とは緊密に連携を取り、新たなアイディア受け入れにも柔軟であるべきとしてる

Gremlins swarming2.jpgそして、世界中の空軍指揮官の要望を反映し、攻めの姿勢を重視しつつも達成可能な分野に注力し、資源投入先を絞り込む着意が重要で、この過程に米空軍副参謀総長レベルを巻き込めとしている
(優先項目の新陳対処も考慮し、)毎年の優先項目を1-2個選定して進めるべきと提言し、同時に一度選定した項目の目標変更もあり得、ハイリスクの最新技術研究では、特定の戦場環境への適用だけでなく、他の応用可能な分野への適応への方向転換も選択肢に含められるよう提言している

また、きちんとした開発計画に基づかない形で実験室から直接戦場へ提供したり、民間企業に技術の芽と一定資金を提供して研究を託す手法もオプションに取り入れるべきとしている
XQ-58A Valkyrie2.jpg更に「Vanguard計画」を管理する空軍省の革新能力造成室(Transformational Capabilities Office)には、ベンチャーキャピタルのように計画全体を管理し、「Try-anything, freeform startup culture」で革新をリードするよう提言している

問題に直面した研究項目をあきらめる重要性も指摘し、同時に研究を中断する分野でも、それまでの蓄積知識を他に活用する等、失敗を失敗で終わらせない姿勢の重要性を指摘している
最後に同評議会は、いずれにしても、「Vanguard計画」は空軍省レベルの強力な関与がないと成功しないと提言を結んでいる
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絞り込め、しかし柔軟に新たなアイディアを取り込め。具体的に、でもベンチャーのように挑戦して革新を・・・と言われると、事前に予算枠が示されるお役所研究所の米空軍研究所は頭を抱えるしかないのですが、米空軍幹部の裁量と強力な関与で道を開け・・・ということでしょう

9月末には、優先対象の一つ「無人機の群れ制御」に関し、(行き詰ったから)企業や学界や技術使用者の皆さんのアイディアを持ち寄って頂きたいと空軍研究所幹部がお願いするとインタビューで述べていましたが、そんな苦境解決を後押しすべく、同評議会も現場の声を拾った側面もあるのでしょう

今後厳しくなる一方の米国防予算枠の中で、この「Vanguard計画」のような構想の存続は、一つの厳しさのバロメータとなるのでしょう

Vanguard計画関連の記事
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-30
「決定米空軍研究所が重視する3分野」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26
「5か月経過もVanguard対象未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-30

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