米空軍が再び極超音速兵器調達に舵を

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技術開発&成熟からコスト削減&調達フェーズへ
2025年度予算ではHACM型の技術立証探求予算のみだったものを
2023年春に量産導入を断念したARRW型も復活へ

6月5日にAllvin米空軍参謀総長が下院軍事委員会で、細々と技術成熟開発だけをレイセオン社契約で進めて来た戦闘爆撃機搭載型の極超音速兵器HACMだけでなく、技術的ハードルが高いとして2023年春に開発導入を断念した爆撃機搭載型の極超音速兵器ARRWも含め、間もなく米議会に提出される2026年度予算案に含める予定だと証言し、

米空軍の極超音速兵器開発全体に関し、これまでの技術開発&成熟の見極め段階から、コスト削減検討と具体的調達導入計画に焦点を当てたフェーズに移行させたいと明らかにしました。

なお極超音速兵器は、音速の5倍以上の速度で飛行し、比較的低高度を飛行中に機動できるため、弾道ミサイルよりも発見や追跡や撃墜が難しく、敵の防衛網を突破する能力も高いと言われ、既にロシアと中国が実戦配備を主張し、特にロシアはウクライナ攻撃に既に使用している兵器です。

 

ARRWとHACMの概要をまず復習します
●爆撃機搭載のARRW(Air-Launched Rapid-Response Weapon)
・ロッキード開発のブースト&グライド方式で、比較的短射程(1600㎞程度?)
・当初開発不調で2回試験に失敗も、2022年 12月に初成功後、2023年8月と10月にも成功

・しかし2023年3月末、Kendall空軍長官とHunter調達次官補が、ARRWは開発までで調達はせず、HACMに注力と発言 (ただ2024年に地上目標攻撃を含めた試験までは継続を実施し、関連データを整理して将来のため蓄積保管)。2025年度予算には関連経費「ゼロ」に。その際「我々には計画があるが、公には話せない」と意味深な表現も

●戦闘爆撃機タイプに搭載の HACM (Hypersonic Attack Cruise Missile)
・小型のスクラムJetエンジンを搭載し比較的長射程(1900㎞程度?)
・レイセオン主契約でエンジンはNG社
・2021年9月に3度目の正直で基礎試験に成功し、2022年 11月末にレイセオン社とプロトタイプ 開発契約を約180億円で締結

具体的にAllvin大将は同軍事委員会で・・
●米空軍は、予算案に2つの異なる極超音速ミサイル計画を含めることを検討中。一つはより戦略的な長距離戦略を目的とした、既に数回試験を実施済のより大型なミサイルAGM-183A・ARRW(Air-launched Rapid Response Weapon)で、もう一つはHACM(Hypersonic Attack Cruise Missile)と呼ばれるもの
●ARRWとHACMの両方を、近未来に研究開発段階から調達段階に移行したい。米空軍は技術開発だけでなく、具体的兵器の調達に向けて取り組んでいる。

また同席のTroy Meink新空軍長官は・・・
●米空軍は今、極超音速兵器の具体的導入に向け、コスト削減とそれにつながる製造工程の細部に関する技術的検討に焦点を当てている
●この兵器はaffordableな価格である必要があり、10発以上の導入も必要で、コストと調達数量のバランス関係を見極められるように取り組んでいる

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極超音速兵器(hypersonic weapons)は、前述のように中露が先に部隊配備を完了し、露は既にウクライナで使用しています。このため米議会では「中露に後れを取っており許容できない!」&「国防省は開発を急げ!」との声が強く、米陸軍と海軍も協力して地上発射型(又は艦上や潜水艦発射型)を開発中で、

陸軍はワシントン州の米陸軍第1軍団に極超音速兵器(LRHW:Long-Range Hypersonic Weapon:通称「Dark Eagle」)受入部隊を編成済で、当初予定の2023年運用開始は2024年の最終試験トラブルで遅れているようですが、実ミサイルの受け入れ&運用態勢確立に取り組んでいるところです。

ただまんぐーすは、同兵器に関するKendall前空軍長官の以下の発言と、同長官時代に同兵器導入に積極的でなかった姿勢に共感するところがあり、「F-47次期制空機」の導入決定等と共に、なんとなく「腑に落ちない」感を持っています

Kendall前長官発言(2022年1月)→中国はA2AD戦路で米軍を遠ざけたいから同兵器を重視するが、米軍は中国の高価値目標(地上指揮統制施設等)用の攻撃兵器の一つの選択肢として保有し、それは中国抑止の一つの選択肢であるから、他にも様々な選択肢を持つ空軍内の優先度や重要性はそれほど大きくない

米軍の極超音速兵器開発
「陸軍は最終試験2回」→https://holylandtokyo.com/2023/01/17/4107/
「米潜水艦配備は2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
「陸軍部隊がミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「空軍が3度目の正直でHAWC成功」→https://holylandtokyo.com/2021/09/30/2281/
「米海軍がロケット試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/08/30/2169/
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holylandtokyo.com/2021/07/30/2037/
「豪州とも協力」→https://holylandtokyo.com/2020/12/10/340/

迎擊兵器 GPI開発関連
「急ぐ必要なし」→https://holylandtokyo.com/2024/06/28/6014/
「日米共同開発に合意」→https://holylandtokyo.com/2024/06/06/5933/
「米は予算削減し日本が負担?」→https://holylandtokyo.com/2024/04/11/5732/
「迎撃兵器を日米共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

極超音速兵器はそんなに脅威か?
「突然グアムでARRW講習会」→https://holylandtokyo.com/2024/03/08/5662/
「同兵器を過大評価するな」→https://holylandtokyo.com/2023/12/15/5343/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://halylandtokyo.com/2023/06/01/4695/

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