新START条約で2015年に削減した30機に再び搭載改修か
露が新START後継条約拒否で2026年2月失効に向け
一部議員が反対も多数が30機のB-52に搭載能力復活に前向き
6月18日付Defense-News記事は、2021年に何とか5年延長で合意したものの、ロシアの状況から再延長の可能性が極めて低い新START条約の2026年2月失効を予期し、米下院と上院がそれぞれ2025年度国防予算関連法案に、核兵器搭載可能なB-52爆撃機の機数を30機増加(現在B-52保有数は76機)させることを米空軍に命じる条項を加える方向だと報じています
2010年に米国が批准した新START条約は、「2018年までに、戦略核弾頭を1550発まで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)・潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)・戦略爆撃機等の配備数を700基まで削減する」ことを求めており、米国はこの条約履行のため、2015年から保有B-52爆撃機中の30機から、核搭載巡航ミサイルAGM-86B搭載機能を除去する措置を取りました
しかし2021年に難産を経て5年延長に米露が同意した本条約に関し、ウクライナ戦争等を背景に2023年3月にロシアが一方的に「同条約の履行停止」を決定し、更に今年6月の会議で米が露に新START後継協定交渉を申し入れたところ、ロシアが明確に交渉する意思がないことを示したとのことで、米議会が一気にこの動きに出た模様です
6月14日に、下院本会議で賛成217票、反対199票で可決し、上院でも軍事委員会で同日22対3で可決しており、例えば下院法案は米空軍に「条約の失効後1か月以内に爆撃機の再改造を開始し、2029年まで30機のB-52改修を完了するよう義務付ける」内容となっているようです
議員の中には、「新START後継条約に関するロシアとの困難な協議を、更に難しくする」とか、「今後10年間をかけ、B-52に新エンジン、新レーダー、新電子機器、新型コックピット、新車輪&ブレーキ等を導入するB-52近代化計画をさらに複雑にしてリスクを高める」、「B-21導入に集中したい国防省も米空軍も望んでいない」と主張して反対する議員もいるようですが、大きな勢力ではなさそうです
米国が核戦力面で対処するのはロシアだけでなく、近年核戦力増強が著しい中国、更にはイランや北朝鮮からの潜在的核脅威もあることからも、B-52の能力復活は理にかなっていると考える意見には抗しがたそうな雰囲気です。
元B-52操縦者で、米空軍協会ミッチェル研究所のMark Gunzinger将来コンセプト研究部長も、「(核兵器搭載能力回復の)改修は恐らくそれほど困難なく行えるだろう。必要な配線はおそらくまだ残っているし、取り外された物理的な部品も再設置可能だろう」と述べています
新START条約の2021年再延長ゴタゴタ
「露の条約不履行を米が非難」→https://holylandtokyo.com/2023/02/02/4251/
「露が土壇場再延長合意」→https://holylandtokyo.com/2021/01/23/305/
「ドタキャン後に延長表明?」→https://holylandtokyo.com/2020/10/19/435/
「延長へ米露交渉始まる?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/20/730/
B-52を大改修して「B-52J」へ
「2060年代まで現役に向け」→https://holylandtokyo.com/2024/02/27/5575/
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/