米大統領選を前にNew START延長交渉は混迷から合意へ

またもやどんでん返し!!!
11月20日、ロシア外務省が突然、米国提案の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案を受け入れると発表し、米国務省報道官が「歓迎する。すぐにも合意手続きを進める用意がある」と反応
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2021年2月消滅の最後の核兵器管理条約を巡り
とりあえず1年延長案を巡り、米大統領選を前に駆け引き

O'Brien.JPG16日、米露間の戦略核兵器制限条約New STARTの延長問題を巡り、これまで交渉されてきた米側提案の「とりあえず1年延長、その間は現状変更しない」案に対し、プーチン大統領が「無条件でとりあえず1年延長」ならOKとちゃぶ台返し反応を示し、米側交渉責任者Robert O’Brien米大統領補佐官が「話にならない(non-starter)」「大統領選の様子見か!?」と不信感をあらわにしました

新START条約は米露間で2011年2月5日に発効したもので、双方の戦略核弾頭上限を1550発とし、その運搬手段である戦略ミサイルや爆撃機配備数上限を700に制限する条約です。有効期限は10年間で、最大5年の延長を可能とし、条約の履行検証は米露両国政府による相互査察により行うこととなっています

New START3.jpg核兵器管理の条約には新STARTとINF全廃条約がありましたが、1987年12月8日に米露が署名し、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するINF全廃条約は、ロシアが条約を履行していないとして、トランプ政権が2019年8月2日に破棄通告しています

INF全廃条約破棄を受け、新START条約が核兵器管理の唯一の枠組みとなったことから、多くの専門家が同条約の延長すべきと主張していますが、トランプ大統領は本条約を「オバマ時代の悪いディールだ」と呼び、新START条約の延長はせず、中国も含めた米中露の3カ国で核兵器管理の合意を追及すべきだと発言していました

一方ロシアは、新START条約の規定に沿って5年延長を提案していましたが、トランプ政権提案の露中米3カ国取り決め追求については、米露と比較して少ない核兵器しか保有しない中国が、保有核兵器削減を求める可能性のある議論を拒んでいる現実を踏まえ、「非現実的だ」と突っぱねていました

Putin START.jpeg条約消滅の危機が迫る中、米側は米露中での新条約案を一旦わきに置き、「とりあえず1年延長、その間は(New START範囲外の核兵器も含め)現状変更しない」案を持ち出し、今年10月2日のジュネーブでの米露交渉ではロシア側も同意していたとRobert O’Brien米大統領補佐官は主張していますが、ロシア側は「そのような合意など存在しない」と反論しています

O’Brien補佐官は「他の国にも見られるように、ロシアも大統領選挙がどうなるかを見ているのだろう・・・」とコメントしており、さもありなん・・な状況です

16日付Military.com記事の見方は・・・
O'Brien2.jpgO’Brien補佐官は、ロシア側も新START条約消滅による核軍拡競争への突入を前にし、そのスタンスを再考したと示唆していたが、大統領選挙を前にロシアはロシアらしい対応を見せた
トランプ大統領はNew START条約延長に積極的ではなかったが、大統領選挙を前に、今年に入って同条約延長の交渉に取り組み始めていた。なお民主党のバイデン候補は、ロシア側提案の5年延長に合意すべきとの姿勢である

米側交渉団のMarshall Billingslea氏は、「米側は条約延長に向けあらゆる努力をしてきた。ロシアは歴史的なwin-win合意の機会を逃した」、「これまでの合意を反故にした」と語ったが、ロシア側は何の合意もしていないと反論している
New START2.jpgクリントン政権時の国防長官であったWilliam J. Perry氏は、米側が持ち出した「1年延長の間は(New START範囲外の核兵器も含め)現状変更しない」との提案部分に関し、「何の意味も感じない、合理的な理由のない提案」で、「大統領選に向けた国内向けアピールに持ち出したのではないか」と批判的にコメントしている

プーチン大統領は16日、「条約締結からこれまで、新START条約は軍拡競争を封じ込める基礎的な役割を果たしてきた」と述べているが、米情報機関は、今後10年間でロシアは、新START条約で縛られていない短射程の戦術核の増強を含め、核戦力の大幅拡大を図ると見積もっている

ハドソン研究所・村野将さんの関連ツイート
米側は単に延長を拒否したということではなく、米側も1年延長すべきだという点は同じだが、それならアヴァンガルドのような現行条約の枠外にある核兵器配備計画を一旦凍結しないとダメだ、ということ。問題はどの運搬手段を凍結対象にするか
Murano.jpgどうせ今だって規制されていない核兵器は増やせるんだから、単純延長で妥協しろ(でなければ、戦略核を無制限に増やすかもしれないぞ〔増やせるとは言っていない〕)、というロシアの言い分を飲む理由があるだろうか

CFEが有名無実化し、INFが失効した今、階層的な軍備管理枠組みが前提だった新STARTは不完全な条約になっている不完全でも基礎なのだから、そのままにしておくべきだという議論と、不安定な基礎の上に積み上げても仕方ないから、一度更地にして土台から作り直すべきだという議論がせめぎあっている
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米国防省は予算増が期待できない中、老朽化が進む核兵器を更新することに精いっぱいな現状です。その予算確保も厳しく、米海軍や空軍は、各軍種の予算枠内ではなく、「核抑止特別枠」での予算確保を米議会に求めているところです
Putin START2.jpg方でロシアは国家財政が厳しい中でも核兵器開発を精力的に行っており例えば開発中の「Sarmat」(Satan2:RS-28)は、弾頭10-16個搭載し、音速の20倍で飛翔してミサイル防衛網を突破可能といわれる射程11000kmの新型ICBMで、北極圏経由のみならず、南極経由で米国を攻撃可能とロシアが明らかにして米国を仰天させた新兵器です。ロシア系研究機関が「10発で米国の全国民を殺害する威力がある」との試算を発表しています

またAvangard超超音速兵器は、通常弾頭と核弾頭の両方を搭載可能で、大気中を音速の20倍以上で飛翔して敵の探知や迎撃兵器を無効化する兵器で、2019年12月に配備を開始するとプーチン大統領が発表しています

同様に、通常兵器でも米軍の優位を認識しているロシアは、記事が述べているように戦術核面でも開発増強を企図しています。大統領選挙を前に、米側が押されっぱなしな印象のNew START延長交渉です

新START期限切れ関連
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:対中国軍備管理とミサイル導入は難しい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09
ロシアの兵器開発とINF条約関連経緯
「第3の超超音速兵器Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「トランプが条約離脱発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露は違反ミサイルを排除せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

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