あと36年、100歳まで頑張るB-52Jを語る

トラブル2-3個が常態の運用&訓練現状
過去10年間で稼働率が2割低下する中
最新機体が1962年製の同機を2060年まで活躍させるために

B-52J 2.jpg2月12日付Defense-Newsが、現在保有する76機の機体年齢が60歳を超えているB-52爆撃機部隊の現状と、延命&近代化改修の内容から課題までを紹介しながら、後輩であるB-1及びB-2爆撃機が2030年頃に引退後も、機体年齢が100歳となる2060年代まで、ステルス爆撃機B-21との2機種体制で頑張ることを求められているB-52に「寄り添うような」特集記事を掲載していますので、ご紹介したいと思います

記事は機体年齢が100歳になるまで特定機種が生き残ることの「すごさ」を説明するため、今から100年前の1924年当時の航空機を振り返り、「WW1時代の機体を改良した航空機の時代で、複葉機、操縦者の操作を直にワイヤーで操舵面に伝達、コックピットはまだ閉じた空間ではないBoeing P-26やCurtiss JN-3の時代」と紹介し、計774機が1954-62年まで製造され、その1割程度が「生き残っている」B-52の生命力を紹介しています

B-52J 3.jpgただ一方でB-52生き残りの背景には、やはり「戦闘機が空軍の中心で、爆撃機への投資が2の次の時代背景」や、「べらぼうなコスト高騰や開発遅延で製造機数が100機削減されたB-2」や「低空高速侵入思想から冷戦後の時代に放置されたB-1」の影響を受け、「消去法」で生き残ってきた経緯があるとも記事は示唆しています
以下では同記事からつまみ食いピックアップで、「現在のB-52部隊運用の状況」、「エンジン換装など総額7兆円強の延命&近代化策」、「延命&近代化改修の懸念点」についてご紹介いたします

お馴染みのYouTube番組でも解説

現在のB-52部隊運用の状況
●60年前に製造された機体の部品確保は困難を極め、2012年に稼働率78%だったものが2022年には59%にまで低下し、今後向上する見込みはない。大きな機体は屋外駐機せざるを得ない場合が多く、中東の日差しや太平洋域の潮風や寒冷地の風雪が機体に与える影響は大きい
B-52J 4.jpg●Barksdale空軍基地のB-52部隊を取材した1月、とある約6時間の訓練飛行への搭乗機会を得たが、エンジンを駆動させ離陸予定時間を30分以上経過しても整備員は3つの故障と格闘していた。3つは電波高度計、Targetting POD、そしてデジタルMap上で作戦行動や航法をサポートするCONECT(Combat Network Communications Technology)で、機長判断で電波高度計とTargetting PODは故障のまま訓練を行うこととなった

●最後のCONECTは2010年代に導入された装備で、カラーデジタル地図画面上で兵器運用担当や電子戦担当が敵情を把握しながら機体システムを操作する重要なものだが、最終的に機長はCONECTなしで、バックアップのアナログ器材で代替して訓練に臨むことを選択した
●機長は、エンジンと油圧システムと機体そのものに問題があれば飛行を断念するが、それ以外であれば故障を抱えたまま飛行することはよくあることで、機長に判断は任されており、5名の搭乗員は与えられたアセットで任務遂行に全力を尽くすことに慣れていると語っている

エンジン換装などの延命&近代化策
B-52J 7.jpg●100機以上調達する計画のB-21ステルス爆撃機と、現有76機のB-52で米軍の爆撃機需要にこたえるため、エンジン換装(Commercial Engine Replacement Program)、AESAレーダーへの換装、搭載アビオ換装、グラスコックピット化、長射程核搭載ミサイル(Long Range Standoff weapon)搭載改修、通信システム換装、車輪とブレーキ換装等々を、2028年に初号機テスト開始から2030年代にかけ実施し、「B-52J」を導入する

●特にエンジン換装は、商用機エンジンをベースとして部品調達が世界各地で容易なロールスロイス製F130導入により、燃費3割向上や信頼性&静粛性向上の他、機体寿命のある2060年までオーバーホール修理不要となることが期待されている
●レーダとアビオと通信とコックピット換装により、戦術航法、目標照準、自己防御能力の大幅改善と操作性の向上が期待でき、ステルス性がないB-52の本格紛争での任務遂行範囲を拡大することを目指している

延命&近代化改修の懸念点
B-52J 8.jpg●60年以上も使用してきた機体に改修を施すことのリスクは当然低くはなく、米空軍は事前にB-52の機体状況を調査した上で延命&近代化計画を推進しているが、2010年代に実施されたC-5輸送機のエンジン換装を伴う近代化改修では、実際の作業過程で次々と機体に想定外の「経年劣化や金属疲労」が見つかって改修経費が増大し、結局計画機数の半分の機体にしか改修を実施できなかった黒歴史もあり不安はぬぐえない

●また、これだけ盛りだくさんの改修を一度に行うスケジュール管理や導入装備間の干渉的なものなど、様々な不安を指摘する声は各所から上がっている。仮に改修スケジュールが遅延することになれば、既に維持が難しくなっているB-2やB-1に加え、B-52Hへの手当ても検討する必要があり、非常にリスクの高い綱渡りとの指摘もある
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B-52J.jpg現在運用中の最も新しい機体が1962年製とのことで、同世代のまんぐーすにとっては何とも感傷的な気分にさせてくれるB-52と「B-52J」プロジェクトです

グラスコックピット化されたB-52J型の雄姿を、ぜひこの目で確認したいものです・・・

B-52関連の記事
「B-52Jへの熱い取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/10/19/5134/
「インドネシアにも2機展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/23/4785/
「極超音速兵器ARRW導入を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/

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