米会計検査院:米国防省はF-35の部品管理がでたらめ

米国防省一括管理の世界50か所以上に分散保管の部品
各部品の状態や価値を管理把握できていない状態
F-35使用国は米国防省管理の部品を発注するのに

GAO F-35.jpg5月23日に米会計検査院GAOが、価格高騰高止まりが問題となっているF-35の維持整備問題に焦点を当てた特別監察レポートを発表し、世界50か所以上の関連企業や各国軍基地等に分散保管されている数十万から数百万個のF-35部品の保管場所、品質状態、現在価値等の把握不十分で、特に部品状態や現在価値については「現状未把握」で、管理責任を持つ米国防省が説明責任(accountability)を果たせない状態にあり、F-35維持整備に関わる現在の諸問題の根源となっていると厳しく指摘しました

F-35 Greece4.jpg米国防省F-35計画室はこの指摘に対し、「GAOの改善勧告に同意する」、「約15億円をかけ、正確な部品在庫に関する記録を確立するための第一歩を開始している」、「F-35部品の大部分について、米国防省が世界中のサプライチェーンの何処に所在しているかを把握している事を、米国民とF-35使用同盟国には理解いただきたい」、「今後継続して部品管理の説明責任能力と即応体制向上に努めていく」と、ずさんな実態を認める声明をメディアに出しています

F-35では、F-35機体を購入した同盟国等は部品を各国で購入保管するのではなく、米国防省が部品の調達・生産・保管・管理をグローバルサプライチェーンを束ねて一元管理し、迅速に効率的に全世界の使用国をサポートするとの「大宣伝を打って」世界中に売り込んでいますが、

GAO F-35 2.jpgそんな理想とは程遠い「デタラメ状態」で、ロッキード社の持つ部品在庫情報に依存する「業者の言いなり」状態で、維持費高騰高止まり状態を垂れ流している実態を検査員に指摘され、国防省も「改善の第一歩」「大部分の位置は把握」との驚きの言い訳言葉で白状したということです

ここ言う部品とは、エンジン、タイヤ、着陸用脚部などの大型部品から、ボルトやナットなどの細かな部品全てを含み、全世界50か所以上の保管場所には、ロッキー下請け企業の倉庫、米国内や海外購入国軍基地の保管庫など、F-35 supply chainを構成する米国内外の様々な施設が含まれています。

F-35 Hill AFB6.jpg米会計検査院GAOの検査で、米国防省は驚くなかれ5年連続で「不適合」の評価を受けており、今回のF-35部品管理など維持整備分野の問題についてGAOは、「米国防省の連続する検査不適格状態の象徴のような実態であり、責任遂行能力欠如のシンボル的事象である」と酷評し、更に検査官が聞き取りを実施した米国防省職員の言葉をGAOは目立つように報告書で紹介し、海外のF-35購入国からの外圧を期待しているようだと米メディアは報じています。

GAO F-35 3.jpgその国防省員の言葉とは、「F-35維持管理の弱点や課題は、(その量的規模や金額の大きさから)他の装備品の維持管理問題への米国防省の対応を一層困難にするだろう。なぜなら、F-35関連の部品数が途方もない規模で、現在は把握もできていないトータルな部品の現在価値が数千億円とも想定され、その把握掌握が管理責任能力が不足している米国防省に突き付けられているからだ」・・・だとのこと。

注・・・上に掲載した報告書の抜粋図は、今の時代に信じられないくらい原始的で無駄が多いF-35部品管理手法を米国防省は世界各地で行っている(行わせている)・・・と説明するためのイラスト部分です
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4月にF-35導入を決定したルーマニアを含め、18か国(米国含む)が導入を決定したF-35ですが、最大顧客である1763機導入予定の米空軍は着実に調達数削減方向に向かっており、米海軍海兵隊(260と420機)、英国(138機)、イタリア(90機)も削減必至と予想いたしております

F-35C Carl.jpgこれら削減方向の国の機数の穴埋めは、欧州やアジアの国々では難しく、問題になっているF-35維持費は今後も「高止まり」どころか上昇必至と見るのが自然です。ウクライナとF-16関連に世間の目が向いている中で、「亡国のF-35」はその負の本領を発揮し始めています

米会計検査院GAOの当該報告書35ページ
https://www.gao.gov/assets/gao-23-106098.pdf

Defense-News記事は過去5年間だけで100万個以上の部品の所在が不明と報道
https://www.defensenews.com/air/2023/05/30/auditors-over-1-million-f-35-spare-parts-lost-by-dod-and-lockheed/

F-35調達機数削減の動き
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
「民間監視団体がF-35改善なしと」→https://holylandtokyo.com/2022/03/25/2933/
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holylandtokyo.com/2021/06/25/1949/
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holylandtokyo.com/2021/03/10/157/

最近のF-35購入又は追加購入決定
「小国ルーマニアも」→https://holylandtokyo.com/2023/04/18/4519/
「シンガポール追加」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「カナダがやっと決定」→https://holylandtokyo.com/2023/01/12/4134/
「チェコが東欧で2番目」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「フィンランドが15番目」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/

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