ドイツが戦術核共有任務にF-35導入発表

仏との第6世代戦闘機開発の障害と拒否してきたが
ウクライナ情勢受けNATOや米国との関係重視
「最大35機」との微妙な表現で、タイフーン15機と共に

F-35 Germany3.jpg3月14日、ドイツ国防相がドイツ空軍司令官を従えて会見を行い、現在トーネード戦闘機が担っているNATO任務の戦術核運用を、トーネード戦闘機の老朽退役が始まる2030年までに引き継ぐため、F-35を最大35機導入すると発表しました

また併せて、ユーロファイターを15機、トーネードが担っていた電子戦や随伴任務の後継機として導入すると明らかにしました

トーネード後継の最終決定は2023-24年までに行えばよいものと考えていましたが、以前から続いていた米国からドイツへの国防支出増額要求に加え、今次のウクライナ侵攻を受けたドイツの政策大転換もあり、このような発表に至ったものと推測しています

German Lambrecht.jpg今回の決定に際しドイツのChristine Lambrecht国防相は、「プーチンのウクライナ侵略に対する唯一の対応である。NATOの一体性と信頼にたる抑止のため、F-35以外の選択肢はない」と表現し、Ingo Gerhartzドイツ空軍参謀総長は、既にF-35を購入している欧州諸国との協力体制も選択の背景だと語り、英国、オランダ、ベルギー、イタリア、デンマーク、ノルウェーに加え、最近スイスとフィンランドもF-35導入を決定したいることを利点として説明しています

ドイツはメルケル政権が退陣した後、「信号機政権(主張の異なる多様な政党の連立政権)」とも揶揄される複雑な連立政権が誕生しましたが、今年1月に大きな一つの安全保障政策の試金石であった「戦術核兵器シェアリング」継続を表明し、次の段階として複雑な要因が絡むトーネード後継戦闘機選定に注目が集まっていました

トーネード後継選定に絡む複雑な背景は・・・
Tornado-b61.jpg●戦術核運搬対応機は、トーネードのほかF-16があるが、将来オプションとしては現在核対応改修中のF-35のみで、FA-18の改修可能性は未定で、ユーロファイターとなると米側の協力が期待薄
●欧州は次世代戦闘機開発を2つのグループ(独仏と英伊)で進めており、次世代戦闘機と重なるF-35導入に政治的抵抗感が強い
●独仏チームの次世代戦闘機開発は、仏ダッソー社(ラファール製造)が役割分担交渉で強気姿勢を崩さず、独との共同開発協議が暗礁に乗り上げ状態

FA-18 block Ⅲ.jpg上記の状況下、最新型FA-18(電子戦機EA-18G含む。FA-18が戦術核搭載任務担う)とユーロファイターを同数程度購入する案で検討中との独高官発言が2018年にはありましたが、ドイツ政治の混乱の中でFA-18を除外してユーロファイター1本で検討するとの話が出たこともありまし

2020年春には独仏の戦闘機開発協議が停滞する中で、「上の2機種に加え、F-35も含めた3機種混合案も検討中(F-35を戦術核任務に)」との報道出て、同ドイツ政府高官が3機種混合案の議論を認める発言をしたりしていたところでした

Parly France.jpg14日付Defense-Newsによれば、3月9日にドイツ国防相がフランスを訪問し、仏のFlorence Parly国防相(両名とも女性)と会談してF-35導入決定について仏側に説明すると同時に、独仏の戦闘機開発計画「FCAS program」への継続コミットも確認しています。ただし14日のF-35購入独発表に関し、仏国防省報道官はノーコメント状態だそうです

一方で、ドイツはトーネード戦闘爆撃機80機を戦術核運搬任務の他にも電子戦やSEAD任務でも使用しており、「最高35機」のF-35調達だけではトーネードの穴埋めには不十分であることから、ユーロファイター15機も電子戦用等として購入を決定しました

typhoon3.jpgDefense-Newsの記事はF-35調達(「will buy up to 35 F-35」との微妙な発表表現もあり)だけを伝え、ユーロファイター15機の話を報じておらず、まんぐーすは混乱しましたが、トーネード80機を「F-35X35機 + ユーロファイターX15機」でカバーするのであればあり得る話であり、ドイツ国防省とドイツ空軍には悩ましい課題は一挙に解決です

ついでに、F-35を最大35機に抑えたことで、独仏の次世代戦闘機開発「FCAS program」への継続コミットも維持する形を残したということでしょう

独仏の次期戦闘機開発に関わる仏側企業ダッソー社CEOは3月上旬、ドイツは欧州製機体にも関心を示す姿勢を見せつつも、米国から核任務用にF-35を購入するよう圧力をかけられていると吐き捨てるように語っており、まだまだ次期戦闘機を巡るドロドロはまだまだ続きますが・・・

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F-35 Germany.jpgいろんな話が絡み合っており、どのような流れでご説明するか混乱したまま記事にしてしまいました

とりあえず、ドイツがF-35を「最大で35機」購入すると発表し、2030年までに導入してNATOドクトリンに示された戦術核運搬に使用するということです。ついでにユーロファイター15機導入も決め、退役するトーネード80機の穴埋め問題にも回答したということです

欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独仏が混合C-130飛行隊を発足」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-03

ドイツの核兵器共有の後継機問題
「問題の整理:独新政権が核兵器共有継続」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-13
「独3機種混合案検討を認める」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-23-1
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-29
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

戦術核兵器とF-35等
「F-35への戦術核搭載へ第一歩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-06
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-04
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

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