英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?

23日発表の国防費計画で138機に言及無く疑念拡大
次期戦闘機「Tempest」開発優先で国内産業対策へ

2021 UK.jpg23日付Defensae-News記事は、英国防省が同日発表した国防予算計画「Defence in a competitive age」で、F-35購入について言及がなく、一方で英国がスウェーデン等と共同開発する次世代戦闘機「Tempest」に多額の投資を行うと明らかにしたことで、英国が2015年時点で表明していた138機F-35Bを購入する計画は極めて怪しくなったと伝えています

英国は2015年の「SDSR:Strategic Defence and Security Review」で、英国空軍と海軍が共同運用する形で138機F-35Bを購入するとしていましたが、現時点では2025年までに48機を導入する契約を結び、20機程度を受領した段階で、138機への動きは全く聞こえてきておらず、英国防省や英軍内でも138機体制が実現するとはだれも考えていない状態だと伝えられていたところでした

F-35B.jpgその結果として、当初、英海軍は空母エリザベス級空母を2隻建造し、各艦に最大32機のF-35B搭載する構想を持っていましたが、予算不足などから就航した1番艦空母エリザベスに20機以下のF-35Bしか搭載できず、米海兵隊F-35B部隊に最大能力試験の支援を依頼し、更に米海兵隊機との「戦力互換性:interchangeability」運用を目指すとの美しい形を演出して戦力不足を補っている状態

更に今年1月には、英海軍の新型空母エリザベスと米海軍の駆逐艦Sullivansが空母攻撃群を編成し、空母エリザベスの指揮のもと、2021年後半から作戦行動を行う旨の合意文書に米英国防大臣が署名して「強固な協力関係」をアピールしていますが、F-35B搭載可能な強襲揚陸艦を大火災で失った米海兵隊との「悲しきWIN-WIN関係」だとまんぐーすは邪推しております

Heappey UK.jpgただ、F-35の調達機数削減は米空軍も検討しているところ、関連企業が全米に分散されている米産業界への影響も大きく、政治的影響も大きいことから、英国としても慎重に検討を進めている姿勢を示し、米国新政権の出方を伺っているところでしょう

16日に英国政府は、安全保障や外交の中長期計画を定めた「安保・国防・外交政策統合レビュー(見直し)」を発表し、保有する核弾頭の上限目標を現在の180発から260発に引き上げる方針を表明し、世界を驚かせて安保への取り組み姿勢をアピールしましたが、すそ野の更に広い戦闘機に関しては「バチバチ」状態が続くのでしょう

3月23日付Defensae-News記事によれば

英国防省が23日発表した国防予算計画「Defence in a competitive age」では、「英国は、既に発注した48機を超えてF-35戦力拡大に取り組んでいく」と記されているが、2015年のSDSRに明示されていた138機体制への言及は全くなかった
Heappey UK2.jpgワシントンDC記者団への23日の会見で、この138機調達計画に関する直接的な記者からの質問に対しJames Heappey英国防副大臣は、明確な表現を避け、「48機購入にコミットしている」、「我々は他国とも共同でFuture Combat Air System(Tempestのこと)に取り組んでおり、将来の英軍航空戦力が如何にあるべきかの議論を行っている。ただ48機のF-35Bにはサイン済である」と回答した

昨年12月、本件に関し英国防省の計画担当であるRichard Knighton空軍中将は、「F-35Bを増強して英海軍空母の能力強化を進める必要性を感じているが、2025年ころまでに空母体制も含めて検討して結論を得たい」と述べるにとどまっていた
英シンクタンクのJustin Bronk研究員は、48機のF-35Bでは、英国軍が求める戦力レベルに達しないが、23日の文書がF-35調達の将来に言及しなかったことからすると、英国政府が国内産業維持を優先して「Tempest」投資を重視し、近未来の軍事的なニーズに目をつぶったのだろう、とコメントしている

F-35B2.jpg23日の文書国防予算計画「Defence in a competitive age」では、英国とスウェーデンが中心に共同開発の「Tempest」に対し、今後4年間で3000億円の開発費を投じる計画となっており、対抗する仏独伊スペインチームをおののかせている
「Tempest」計画は英国にとって、単に将来戦力としてだけでなく、軍需産業基盤にとって極めて重要な役割を期待されており、既に英国中の300以上の企業で1800以上の新規雇用を生み、18000名の既存高度熟練技能者を支えており、サプライチェーン全体では数万人規模に影響を与えると言われている

特に政治的経済的にかじ取りが難しい、Scotland, Wales and Northern Ireland地域の雇用への影響が大きい点でも、政治的な視点で見られがちな案件である
前出のJustin Bronk研究員は、「Tempestに対しこれだけ入れ込むシグナルが出ていることからすれば、F-35の調達機数は多く見積もっても合計で60-72機程度になるのでは」と見積もった

Heappey英副大臣は「F-35運用は、米、伊、豪などの海軍との共同運用を考える上で重要」で、このコミュニティーは無視できないともコメントしている
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英国防予算計画「Defence in a competitive age」
→https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/971859/_CP_411__-_Defence_in_a_competitive_age.pdf

Queen Elizabeth.jpgF-35AとB型を、それぞれ105機と42機購入する予定で、米国に次ぐ世界第2位の購入予定数国でありながら、共同開発国の扱いも受けられない日本はどうするのでしょうか?

そもそも、対中国の環境からすれば、最新の戦闘機を導入するニーズ自体に疑問の余地が多い日本ですから、よく考えていただきたいものです

英空母エリザベスの悲しき現実
「英新型空母と米駆逐艦が空母攻撃群を編成へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22
「コロナ下で800名乗艦で最終確認試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-01
「英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-26-1
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

F-35搭載改修終了直前の惨事(放火)
「強襲揚陸艦Bonhomme Richard火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15

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