F-35問題の元凶:ALISとその後継ODINの現在位置

コロナ関連で各試験が中断しているようですが、それ以前に
年末からALISの後継ODIN投入開始予定も
2022年末のODIN完全運用開始まではALISで
問題だらけの現在位置を米国会計検査院GAOが

ALIS8.jpg3月16日付米空軍協会web記事は、米会計検査院(GAO)が16日付で発表したF-35自動兵站情報システム(ALIS)の現状レポートと、今年末からALISの後継として投入が開始され、2022年末に完全運用態勢確立を目指すODIN(Operational Data Integrated Network)の現状について取り上げています

少なくとも2022年末まで使用するALISの現状は、新ソフトの投入で若干の改善が見られるも、ほとんど大勢に影響なく問題多発状態が続き、問題ない航空機まで「飛行停止」指示を発する状態が続き、航空機の維持整備よりALISの世話に人手が必要な悲惨な現状を、会計検査院が指摘しています

ALISの後継となるODINについては、部隊の機動展開時に持ち運びが容易で、操作しやすくわかりやすく、リアルタイムでF-35の状態把握が可能なシステムとするための戦略計画を、米国防省がLord調達担当国防次官を通じてGAO等に示すことになっていますが、期限が迫る中、本当に夢のような装置への道筋が示せるのか、関係者に疑心暗鬼が広がっているようです

GAOレポートによればALISの現状は?
ALIS7.jpg●GAO検査官はF-35を使用する5つの基地を訪問し、本来、個々のF-35の状態をリアルタイムで把握でき、整備計画を自動立案して提案し、必要な部品を発注し、任務計画や訓練記録まで助けてくれるシステムのはずだったALISが、2015年に投入し始めた新ソフトでも、一部の改善が確認できる程度で、依然として以下の主要問題が放置されていることを確認している

ALISは、機体のどこに問題があるのかを示すことなく、当該機の飛行停止を指示することがある。整備員が確認し、全く問題がないことを確認しても、飛行停止指示を解除しない。この原因は、ALISが入力したデータを完全に管理保存できず、データの抜けや欠損を生み出していることにある模様
F-35部隊の機動展開に不適。ALISは装置が「かさばり」、ネット接続が限定され、契約企業技術者の支援がないと運用を継続できないため、母機地を離れての運用に大きな支障がある
F-35飛行部隊編成時に想定されていたよりも、ALISの運用に多くの人員が必要で、また整備員などへのALISに関する教育内容が不適切である

ALIS2.jpg●GAOが訪問した部隊では、1週間で最大400件のALIS不具合が発生しており、部隊指揮官が演習シナリオの中に「ALIS不具合対処」を訓練項目に入れなければならない情けない状態である
●またGAOは、5年前から国防省に対し、ALISの不具合が原因で、どれだけF-35の稼働率が低下しているか、要求性能に対して、どこがどれだけ未達成なのかをまとめよう要求しているが、国防省はこれを行っていない

●GAOは、ALISの問題点とその影響を明確にしないと、新しいODINを設計開発するにしても、どこにどれだけコストと時間を投入すべきか判断できないはずだと指摘し、米議会に対し、まずALISの現状とその影響を国防省に把握・報告させるような法的措置を執るよう要求している
●この背景には、ALISの開発経費が当初想定で1兆9000億円だったのに対し、様々なトラブル対処に継続対処中の現時点で、どれだけの経費が投入されているかについて、国防省から情報が出てこないことへの不満と、ODINへの警戒感がある

ODINの現在位置:Lord調達担当国防次官は
Lord2.jpg2月23日付のGAO宛レターでLord次官は、「国防省は、ODIN開発を導く戦略を構築しつつあり、その中に主要課題、スケジュール、リスクと機会、開発管理体制、コスト見積もりを含んでいる。国防省F-35計画室がこれを取りまとめ、担当国防次官の承認を3月末までに得ることとなっている」と状況を説明し、
●更に「上記のODIN開発戦略とは別に、ODINの要求性能書とユーザー同意文書を、ODIN開発の基礎として、国防省の責任で準備する」、「これらの文書には、明確な要求性能と将来にわたっての能力拡張柔軟性の規定が必要だと考えている。また、前線のF-35から収集したデータの管理が十分に信頼され保障された環境で行われるようなシステム構築にもコミットしている」と述べている

●GAOは、現時点で世界に400機あまりが存在し、今後4年程度で1000機に達するF-35が、各所で「問題児」化することを懸念しており、これを防止するための基礎として、ALISの現状を国防省が明確な基準で包括的に把握することが大前提だと考えている
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ALISに代わる、「快刀乱麻」のような解決をロッキードが担当するODINに期待していたわけではありませんが、まだまだ泥沼感が続きそうですねぇ・・・

しかし、世界各地への機動展開が不可欠なF-35飛行部隊なのに、ALISの実態が「bulky:かさばる」、「Internet connectivityが限定的」、「契約企業の技術者支援が必要」で機動展開に不便だなんて、どんな要求性能と妥協の産物で生まれた「お荷物」なんでしょうか・・・

こんなものに振り回される、世界13カ国の空軍兵士がかわいそうですし、資源の浪費です。だから「亡国のF-35」なんです

最近のF-35
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
ALIS関連の記事
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02
F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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