米比が33年ぶりに比で空軍演習Cope Thunder再開

【追加情報:比大統領が米国防長官と会談】
5月3日に米比国防相が合意の「bilateral defense guidelines」
https://media.defense.gov/2023/May/03/2003214451/-1/-1/0/BILATERAL-DEFENSE-GUIDELINES-FACT-SHEET.PDF

米比間の「1951 Mutual Defense Treaty」に基づき、以下を再確認
●太平洋や南シナ海におけるフィリピンの航空機、公的艦艇、軍隊(沿岸警備隊含む)に対する如何なる攻撃からも防御することを両国が決意する
●両国指導者は、豪州や日本を含む地域の同志国とより緊密に連携し、共有する原則(rule of law, freedom of the seas and respect for territorial sovereignty)維持に取り組む議論を行う

●米国はフィリピン軍の近代化にコミットし、抑止力強化と嫌がらせに対処する能力強化のための装備等のパッケージを見極める
●装備など物質的な支援以外の、教育や訓練演習や作戦行動を通じての(人的な)投資拡大も優先事項として対応する

●米国防長官と比大統領が今年初めに合意した、北部ルソン島とパラワン島の4つの基地への米軍アクセスについて、速やかに実現するように取り組む
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比は過去5年間、中国との穏やかな関係を追求も
中国は態度を変えず高圧的な振る舞いを変えず
結果、比は国益保護のため米国と再び急接近
米報道官も驚く過去1年の米比関係劇的改善

Cope Thunder 2023.jpg5月1日、199年のピナツボ山大噴火以来33年ぶりに米空軍とフィリピン空軍の共同演習「Cope Thunder」があのクラーク空軍基地に戻ってきました! 折しも、2022年6月に就任して以来、劇的に米比関係を改善方向に導いているMarcos, Jr比大統領がバイデン大統領とホワイトハウスで首脳会談を行った当日に、演習開始との象徴的なタイミングとなりました

米比空軍による「Cope Thunder」演習は、1970年代半ばから毎年、1991年の噴火でクラーク基地が閉鎖されるまで行われてきましたが、火山灰堆積による基地の壊滅的被害と米比関係のギクシャクもあり、33年に渡り比での訓練は中断されてきました。

US-Phili.jpg比での中断間、アラスカで同演習が実施されることはありましたが、33年ぶり比で開催となった今年は、日本の三沢基地所属の米空軍F-16戦闘機12機と兵士約160名が同基地に展開し、フィリピン空軍FA-50軽攻撃機と戦術訓練を5月12日までの間で実施することになっています

往時と比較すると演習規模は小さく、クラーク基地の装備や施設不足で「Cope Thunder」準備のための空輸作戦の方が大規模だったかも・・・との噂も報じられていますが、4月に米陸軍や海兵隊を中心に約1.7万名が参加し、米海兵隊が対中国用に改編した新部隊MLR(Marine Littoral Regiment)までも投入してフィリピン側と連携を深めた大規模演習「Balikatan」演習に続く、意義深い軍事訓練となりました

US-Phili2.jpg米国政府のJohn Kirby戦略調整官は1日、「マルコスJr大統領就任後の1年弱の短期間に、米比同盟や両国関係はまさに驚愕の進歩を見せている」と記者会見で語っていますが、今年2月の米国防長官訪比時の米軍の比軍基地へのアクセス数倍増(4個基地から8個)合意、3月の米軍第5世代機(F-22)初訪比と南シナ海上での訓練、4月11日の「2+2」会合での国防支援調整協議(レーダー、無人機、軍用輸送機、防空装備、F-16輸出)など、Kirby氏による「stunning」との表現がふさわしい劇的な進展ぶりとなっています

両国間の連携改善は日々の対中国対応でも顕著で、1日の米比首脳会談直前に、中国のコーストガード海警の艦艇がフィリピン船舶に南シナ海上で嫌がらせ行為を行いましたが、米国がすかさず中国を非難して比への艦艇提供を発表し、「比は複雑な状況下での平和と安定を願っている」と米高官がコメントを出すなど、対中国連携も洗練の域に入っている様子をうかがわせています

Cooper 2.jpg米国の専門家も米比関係の急改善に注目し、ハドソンのPatrick Croninは「同演習は比空軍が(軽攻撃機のみ保有から)増強されることを示すシグナルであり、2+2でのF-16売却協議の流れに沿ったもの」と解説し、

更にAEIのZack Cooper氏は米比関係の大きな変化の背景について、「比は過去5年間に渡り中国との関係改善を狙ったアプローチを試みたが、中国側がその高圧的な態度を変える様子を全く見せないことで比国民の反感を買い、フィリピンは国益保護&追求のため、現実的に唯一可能なオプションとして米国との協力強化の道を選択するに至った」と分析しているところです

Philippine China2.jpg東南アジア諸国は中国をよく見ています。不動産バブル崩壊で混乱する中国経済の中で、習近平政権がますます強権的な態度を強め、柔軟性を失いつつあることを・・・。このフィリピンの急激な変化を見た他の東南アジア諸国や太平洋の島嶼国家が、今後対中国の姿勢をどのように変化させるかに注目です

フィリピン関連の記事
「米比2+2とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「5世代機初展開F-22」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「第3MLRの編成」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「前政権時の米とのギクシャク」→https://holylandtokyo.com/2021/08/02/2065/
「三菱製レーダーを提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/

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