南シナ海監視強化へ:三菱の対空監視レーダー輸出契約

フィリピンへ防衛装備移転三原則に基づき初の完成品輸出
固定型3基と移動型1基を100億で
両機種ともFPS3とTPSP14をベースに「新たに開発・製造」

FPS-3 2.jpg8月28日、日本の防衛省とフィリピン国防省はそろって、フィリピンが南シナ海の警戒監視強化のため2018年から進めてきたレーダー選定プロジェクト「Horizon 2 Air Surveillance Radar System acquisition project」に関し、「フィリピン国防省と三菱電機㈱の間で同社製警戒管制レーダー・4基を約1億ドルで納入する契約が成立した」と発表しました。契約書への署名は、マニラと東京でそれぞれ行われた模様です

フィリピンの同プロジェクトは、南シナ海、海底資源や水産資源が豊富とされるルソン島から東約300㎞の「Benham Rise:ベンハム隆起」周辺を中心とした上空の警戒監視強化を狙ったものです
South china sea.jpg日本にとっては、2014年に安倍政権が、武器輸出を原則禁止してきた「武器輸出三原則」に代わり、「わが国の安全保障に資する場合」などの条件を満たせば装備品の輸出や国際共同開発を認めるとした「防衛装備移転三原則」の枠組みでの、初めての国産完成品装備の輸出となりました

これまでも部品レベルでは、「防衛装備移転三原則」に基づく輸出は米国などに行われましたが、完成品としての輸出契約は初めてです

完成品輸出の取り組みは、オーストラリアへの潜水艦(そうりゅう型)輸出でフランス企業に敗れるなど厳しい状況が続き、タイ軍への同じ警戒管制レーダー売り込みでも、三菱電機提案のFPS-3廉価版がスペイン製品に敗れた苦難の道がありました
各種報道では、共に1990年前後から自衛隊が導入を始めて調達が終了している空自の固定式警戒管制レーダー「FPS3」3基と陸自の移動式対空レーダー「TPSP14」1基の計4基を、約100億円で輸出と紹介されていますが、防衛省の公式発表(お知らせ)では、「当該レーダーは、三菱電機㈱がフィリピン空軍の要求に基づき、自衛隊向けのレーダーを製造した経験を踏まえて、新たに開発・製造するもの」となっており、自衛隊使用型よりダウングレードする部分があると推測されます

FPS-3 3.jpg例えば空自の固定式FPS-3は、遠方用と近空用の2つのレーダーアンテナで構成されており、1セットで100億円ぐらいの価格だったと思いますので、今回の4基で100億円となれば、かなり装備を絞り込んだものとなると思います。もちろん技術進歩により、30年前の設計思想を安価に最新技術で再現し、性能や信頼性を向上させ、価格低下が可能になっているとも思いますが

警戒管制レーダーは、専守防衛の日本では重視され、信頼性や耐久性に高い要求がなされているとも言われていますので、世界一般のレベルにそのあたりをそろえれば、価格が下がるのかもしれません
この種の警戒管制レーダーは、約450㎞程度の監視範囲を持ちます。地球が丸く、電波が直進するので、遠方になれば高度の高い物体しか探知できませんが、フィリピンのルソン島沿岸部に設置すれば、南シナ海の1/3~1/2ぐらいを探知範囲に入れることが可能になります

TPSP-14 2.jpg「Horizon 2」プロジェクトでは、2022年からレーダー提供開始(expected to be delivered to the Philippines starting 2022)となっているようで、工事開始が2022年なのか、1基目が2022年から稼働するのか細部は不明ですが、工事の無事進捗を願いたいと思います。特にジャングルを切り開いての工事が予想され、中国から支援を受けたフィリピン国内分子の嫌がらせなども想定されるます。武運長久を祈らずにはおれません

なお今回の契約成立の背景には、2017年に成立した自衛隊不用装備品の無償譲渡等を可能とする自衛隊法上の規定により、陸自UH-1ヘリの部品や海上自衛隊のTC-90練習機5機を、フィリピンに無償譲渡した両国間のつながりと維持整備に関する信頼感もあったものと推測いたします

「日本が譲渡のヘリ部品でフィリピンUH-1が復活へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-13

防衛省の公式発表(お知らせ)
フィリピンへの警戒管制レーダーの移転について
→ https://www.mod.go.jp/j/press/news/2020/08/28a.pdf

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東アジア戦略概観2020のwebページ
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/east-asian/j2020.html
同概観紹介記事https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-21

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