米豪2+2で駐留米軍増など更なる関係強化合意

15日発表の米英による豪への原潜技術提供に続き
在日米軍削減とリンク可能性がある豪駐留米軍増強を表明

AUKUS2.jpg米英豪の首脳が15日に新協力枠組み「AUKUS」創設を表明し、その柱として米英の原子力潜水艦技術を豪に提供して豪が少なくとも8隻の原潜建造を目指し、AIやサイバーや量子技術でも連携強化する方針を明らかにされた翌日、米豪の2+2が開催され、豪への米軍派遣兵力方針が明らかにされました

バイデン大統領による15日の「豪への原潜技術提供」発表は衝撃的で、米国が英国にしか提供(1958年)していなかった最高軍事機密の対中国を念頭にした提供であり、また核兵器を保有しない豪の原潜保有決断であり、更に豪が仏と2016年に結んでいた通常潜水艦約4兆円契約の破棄でもある点で、ニュースが全世界を駆け巡りました

SSN X.jpgフランスは怒り爆発で、在米大使館で予定されていた「仏米軍事協力」祝賀会の開催を急遽キャンセルし、駐米および駐豪大使を召還しました。まぁ、約4兆円のビックプロジェクトで、経済「青色吐息」のフランスの怒りもごもっともですが、4兆円の通常潜水艦開発が難航して価格急騰だったことから、豪内でキャンセル論が高まっていたところでした

第28代アボット首相が「日本から潜水艦を買いたい」、29代ターンブル首相が「フランス潜水艦を買います」、そして30代モリソン首相が「アメリカとイギリスから原潜を買います」のどんでん返しですから、さざ波では済まないのかもしれません。でも同盟国豪州の戦力強化は対中国でプラスです。中国からの嫌がらせをものともせず、豪州には突進して頂きたいと思います
(日本のそうりゅう級を豪が発注していたら、今頃どんな事態に???


US and Australia4.jpg本題に戻って本日は、16日にDCで開催された、米豪2+2で豪への米軍派遣兵力や航空戦力増強方針が明らかにされた件をご紹介しておきます

取りまとめ発表が遅れている米国防省の全世界を見渡した「米軍再編:Force Posture Review」の一部をなすと考えられる、米軍の豪州派遣部隊(ローテーション派遣か)の増強がぼんやりと発表されていますのでご紹介しておきます。中国に近接してリスクの高い在日米軍の削減とリンクしている可能性がありますので、前振りも兼ねて・・・

16日付米空軍協会web記事によれば
●16日、米豪2+2会合後に4名が揃った共同記者会見でAustin米国防長官は、両国が演習、訓練、軍事技術共有をより強化していく事で合意したと述べ、在豪米軍兵力や米空軍派遣戦力の増強を明らかにした

US and Australia.jpg●Austin長官は「今後も継続して、より大規模に、より頻繁に、米空軍戦力の関与を深め、米軍地上戦力の豪での訓練演習機会を増やし、兵站面での強化も豪州で図りたい」と表現した
●同長官は、発表が遅れている「Force Posture Review」が発表されれば全世界の構図が明らかになるであろうことを示唆しつつ、豪駐留米軍の増強を明らかにし、「本日両国で、豪州への米軍アクセスとプレゼンスを増強することに合意した。これは更なる両国軍の融合と一体化方法を示すものである」と説明した

●豪州のDutton国防相はAustin長官の発言を受け、「私は両国が合意して米軍駐留兵力が増強されることを強く望んでいた。ローテーション派遣を通じ空軍力が強化され、我が海兵隊の能力が向上し、特定戦力の態勢が強化されることになろう」と会見で語った
●またDutton国防相は「両国はspace framework agreementに合意し、豪州の宇宙認知力や能力向上につながるだろう」と述べたが、Austin長官は細部への言及を避けた

U.S. and Australia3.JPG●中国のコロナへの初期対応等を豪が厳しく非難したことで豪中関係が悪化し、中国が豪のワインや農産物に制裁を課すなどしている状況を踏まえ、また「AUKUS」創設や今回の2+2合意を受け、中国から豪へのサイバー攻撃が増加するとの専門家予想等を踏まえ、
●Blinken米国務長官は会見で、「米国は豪州を孤立させない(will not leave Australia alone)」、「我々は公私にわたって、中国による経済的嫌がらせ行為に強い懸念を表明してきた」と豪州を支援する姿勢を改めて示した
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日米豪印のクワッドに加え、英国も加えた米英豪のAUKASとは、米国もいろいろ複雑で大変そうです。

US and Australia2.jpg豪州も原潜8隻を維持する予算は大丈夫なんでしょうか? これからは隠密性や残存性の高い潜水艦の時代なんでしょうか?

ルトワック氏も「ラストエンペラー習近平」(奥山真司訳)で、西側にとっての潜水艦の優位性と空母の脆弱性を対比で訴え、返す刀でF-35をぶった切っていましたが、潜水艦の重要性を再認識する時かもしれません

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