次の米軍人トップ候補に黒人Brown空軍大将が

Colin Powell氏に続き2人目の黒人統合参謀本部議長へ
空軍大将の同ポスト就任は承認されれば18年ぶり

Brown2.jpg5月4日頃からの各種メディア報道によれば、次の米軍人トップである統合参謀本部議長(現在はMark Milley陸軍大将)候補に、現在の米空軍参謀総長であるCharles Q. Brown Jr大将が推挙されたとのことです。

Brown大将が上院で承認されれば、1989年から93年(湾岸戦争時)に初の黒人として同ポストについたColin Powell陸軍大将(後の国務長官)に続く30年ぶり2人目の黒人議長となり、空軍大将としては2005年に退任したRichard Myers大将依頼18年ぶりの空軍からの米軍人トップとなります。なお同ポスト創設以来73年の歴史の中で、空軍大将はこれまでにわずか4人です

Brown.jpgBrown大将が太平洋空軍司令官から空軍参謀総長に推薦された際も、陸海空海兵隊トップに初の黒人就任だと大きな話題になり、今回も何かと話題になりそうですが、Brown大将の経歴を見れば、アジア太平洋のみならず、欧州アフリカと中東でも主要ポストを歴任した、現在の複雑な国際環境にふさわしい人物だとご理解いただけると思います

先ず欧州アフリカ地域では、ロシアによるクリミア侵略が始まった直後の2014年から、欧州&アフリカ米空軍司令部(@ドイツ)で戦略作戦部長(director of operations for strategic deterrence and nuclear integration)を務めており、イタリアのAviano基地で航空団司令官を務めた経験と併せ、露のウクライナ侵略がホットな情勢下で地域の細部にも精通しています

Brown nomination.jpg中東では2018年から20年に中東米空軍司令官(兼ねて中央軍JFACC)として、中東における対テロ作戦で陸海空海兵隊の全ての航空戦力運用を担当した経験に加え、中央軍副司令官として地域諸国との連携を含めた政軍関係の複雑な部分も経験した人材です

アジアでは、若きF-16パイロットとしての韓国Kunsan基地が初任地で、同基地航空団司令官も後に務めたほか、2020年春からの太平洋空軍司令官(兼ねてアジア太平洋軍JFACC)としての2年間で、北朝鮮情勢から中国、更には極東ロシア軍情勢まで、インド・アジア太平洋地域への見識を十分すぎるほど蓄えたと言えましょう

1962年生まれの61歳で、空軍士官学校ではなくテキサス工科大学出身ですが、大尉として米空軍参謀総長(早期辞職したFogelman大将)の副官室勤務を経験し、空軍大学のACSC(指揮幕僚コース)を優秀成績者として卒業し、大佐として空軍長官直属の特別検討チーム長を務めた経験を持つなど、早くから将来を嘱望されたパイロットであったことが伺えます

Carlisle UK.jpg米空軍トップに推薦された際もBrown大将を推薦する声が多く、日本でもおなじみのカーライル退役大将が「Brown大将は、厳しい仕事を部下に押し付けたり、他部署に責任を押し付けることは決してしなかった。静かな男だが、厳しい決断や困難な仕事から逃げることは決してなかった」、「本当に必要と思うことには徹底的にこだわり、厳しい予算審議でも、周到な準備を基に熱い情熱で議論に臨み、同時に最後に折り合うことにも潔かった」と評し、

James-House.jpgJames元空軍長官は、「ペンタゴンでの統合職勤務がないという人もいるが、難しい中東作戦遂行に際し、各軍種のみならず、米議会とのパイプ役としても精力的で信頼のおける働きぶりが印象的で、国防省の外でも評判の良い人材」だと人柄を推薦しています

その信念の強さを示すエピソードとして、黒人への警察の厳しい対応が社会的問題となっていた空軍トップ就任直前に、黒人である自身の空軍での体験を「白人の2倍努力しなければ認められなかった」等と赤裸々に語って映像を公開し、大きな話題となったこともありました。

Brown5.jpg空軍参謀総長就任後は、小冊子「変化を加速せよ。さもないと敗北する:Accelerate Change or Lose」を空軍内に配布して、対中国やロシアに向けた変化を急ぐ姿勢を示すと同時に、ACE構想普及を推進すると同時に、難しい国際情勢と軍事環境にあって「Airpower is the answer」との言葉を使って空軍の重要性を訴えるなど、信念の人であることで内外から評価の高い人物です

対中国や台湾有事が差し迫っていると危機感が高まる米国防省で、大平洋空軍司令官や空軍戦闘コマンド司令官へのアジア太平洋の経験豊富な「専門家」人事案が相次いで明らかになる中、米軍人トップの統合参謀本部議長にも対中国有識者が配置されることで、米軍の体制は対中国モードに突き進んでいます

次の米空軍参謀総長が誰になるかも気になりますが・・・

Brown太平洋空軍司令官の関連
「弾薬調達の効率性優先を変更」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CCAは多様な任務に」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
「KC-YとZはKC-46の改修型へ?」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「行動指針を小冊子で」→https://holylandtokyo.com/2020/09/02/471/
「Brown大将が次期空軍トップ候補に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-03
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

黒人としての空軍勤務経験を赤裸々に語る
「空軍へ来たれ!募集映像が話題」→https://holylandtokyo.com/2021/08/10/2087/
「Brown大将が人種問題を経験から語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/07/617/

2023年3月発表の米空軍新作戦コンセプト
Air Force Future Operating Concept (AFFOC)
https://www.airandspaceforces.com/browns-future-operating-concept-airpower-is-the-answer/

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