英議会国防委員会が危機感溢れるレポートも
嘆く声、懸念する声にあふれるも・・・
3月7日英国議会国防委員会が、大量の弾薬をウクライナ支援に提供したことで生じている英国軍の弾薬不足が危機的な状況になっているとの警告レポートをまとめ、英国防省に至急対応策をまとめて英議会に報告せよと求めています。
英国は露によるウクライナ侵略が始まって以来、米国に次ぐ2番目の武器支援国としてウクライナを支え、NLAW対戦車ミサイル、Javelin対戦車ミサイル、Brimstone空対地ミサイル、Starstreak防空ミサイル AMRAAM空対空ミサイルや10万発の火砲砲弾など総額3000億円の支援を行い、追加で砲弾10万発などの提供を約束しているとのことですが、
冷戦終了からつい最近までの軍縮の流れの中で、弾薬製造産業基盤を含む軍需産業全体が大きく縮小した結果として、ウクライナへの提供分「穴埋め」には10年以上必要な懸念すべき状態だと同レポートは訴えています
レポート発表に際しTobias Ellwood国防委員会委員長は、「英国やNATOの弾薬備蓄は危険なレベルにまで縮小している」、「信頼に足る軍隊であるために、英国は十分や軍の人員、兵器、弾薬と装備が確保されなければならない」、「英国軍備蓄を補給するのに長期間要する現状を懸念する」、「政府と産業界は行動を起こさねばならない」と訴えています
同レポートにはRichard Barrons前英国統合軍司令官の証言も掲載され、「1990年から続く重要装備やプラットフォーム投資削減の流れで、弾薬備蓄も予備役も施設インフラも空虚な状態に陥っている」、「ハイエンド紛争に直面した場合、英国軍の弾薬は1週間持たないだろう」と厳しい現状を語っています
現在の政府対応について同レポートは、英国防調達省は昨秋の追加予算で英国軍弾薬備蓄の保管増強予算を確保しているが、この程度の対処では必要な備蓄回復までに10年以上必要であると警鐘を鳴らしています
また同レポートはNATO全体でも同様の厳しい状況だとし、「NATO司令部での聞き取りでは、Javelin対戦車ミサイルの調達は5年待ちの状態で、CSISの換算によれば、ウクライナに提供されたスティンガー携帯防空ミサイル数は、過去20年間に米国以外の国が購入した同ミサイル総量と等しいレベル」だと、消耗の激しさと増産の難しさを指摘しています
////////////////////////////////////////////////
米軍の弾薬不足が深刻で、補給のための軍事産業基盤も弱体化している現状を、様々な研究や発言からをご紹介してきましたが、英国やNATOも同じで、冷戦後の大軍縮の後の現状からすれば米国よりもはるかに厳しい状況と考えられます
英議会国防委員会のレポートは懸念の声に満ちていますが、ウクライナ戦争の影響を強く受け、疲弊した英国やNATO諸国の経済は急激な国防費増を支える余裕はないと思います。残念ながら・・・
弾薬量の圧倒的不足問題
「空軍は弾薬調達の効率性優先を変更」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「上院軍事委員長:弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/