CNAS:米軍は弾薬にもっと予算を配分せよ

最近の紛争事例から急激な弾薬ミサイル消耗に着目
目立つ装備ばかりでなく、いつも後回しの弾薬備蓄に警鐘

CNAS weapon 2.jpg11月17日、シンクタンクCNASの女性研究者2名が「Precision and Posture」とのレポートを発表し、対中国作戦の予想様相やウクライナなど近年の紛争の事例も踏まえ、米国防省2023年度予算や5か年計画における弾薬調達予算配分が不十分だと警鐘を鳴らしています

弾薬の備蓄や製造にかかわる軍需産業基盤の弱体化問題は、長引く露によるウクライナ侵略への米国の兵器支援によって顕在化し、例えばJavelin対戦車ミサイルの米国備蓄の半分以上8500発をウクライナに提供した結果、その穴埋めには現状だと12年が必要との衝撃的数字が明らかになるなどして問題化し、対中国でも対艦精密誘導ミサイル「LRASM」の深刻な備蓄状態などを複数回取り上げてきたところです

そんな中でのCNASレポートは、より広範な事例から米国の弾薬事情について取り上げ、紛争のたびに問題が顕在化しているのに、一向に改善が進まない状況を指摘していますので、レポートの断片的な「つまみ食い」説明を試みたいと思います

レポート「Precision and Posture」は・・・
CNAS weapon 2022.jpg●対中国では中国による迅速な勝利を阻止し、米国や同盟国は粘りづよく反撃して膨大な攻撃目標に対処する必要があり、同時に中国の強固な防空網に我の兵器の一部が迎撃されることも考慮して弾薬の確保を今から準備する必要がある。ただ現在でも緊急にやるべきことが米国防省には多く残されており、現状の予算計画では不十分だ

●2023年度予算におけるICBMやSLBMを含めたミサイル予算は3兆5千億円程度にまで伸びているが、対中国で不足が叫ばれている対艦精密誘導ミサイルなどの予算は8000億円程度で増えていないのが現状である

JDAM-Empty.jpg●過去においても同様の問題が発生し、例えば2014年から17年に遂行された対ISIS作戦では、連合国の空爆で11万5千発の精密誘導兵器を多数含む弾薬が消費され現代戦の様相を呈したが、JDAMとレーザー誘導ミサイルの備蓄が枯渇して、需要に対応する軍需産業基盤の重要性が叫ばれた
●しかしウクライナ支援でも弾薬備蓄や製造能力不足が露呈し、米国は例えば韓国から155mm砲弾を購入してウクライナ支援に充てようとしている。ただこの窮状は米国に限らず、ウクライナを侵略しているロシアも、北朝鮮にまで弾薬補充を頼る状況に至っていると米国関係者は分析している

LRASM4.jpg●対中国作戦で考えてみると、例えば中国海軍艦艇は高度な地対空ミサイルを装備し、同時に「おとり艦艇」等で欺まんする可能性が高く、米軍の対艦ミサイルLRASM(Long Range Air to Ship Missile)の一部が迎撃されたり、誤目標攻撃に消耗させられる可能性を予期する必要があり、余分にLRASMを保有しておく必要がある

(LRASMは対中国作戦で800~1200発必要と言われているが、現有200発のみで、毎年の調達数はここ数年は38発たらず。2023年予算は88発導入を計画も、このペースでも1000発確保に10年は必要)

LRASM-B1-2.jpg●重要な弾薬備蓄と弾薬製造基盤育成への投資不足に関してはこのCNASレポート以外にも、9月のForeign Affairs誌で、フロノイ元政策担当国防次官とMichael Brown前国防省DIU局長が、対中国で必要な弾薬種と必要な数量見積もりを踏まえ、厳しい現実を改善するために必要な措置が緊急に望まれると主張している
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CNASレポートをうまく紹介できていませんが、レポート内では重要な弾薬が「戦闘機や艦艇や戦闘車両など主要装備に予算が割り当てられた後、残予算で言い訳程度に調達されてきた経緯」なども説明されており、軍組織と軍人の硬直性を厳しく指摘しているようです

日本の自衛隊も同じような状況だと考えられ、「たまに撃つ、弾が無いのが、たまにきず」と自虐的に笑っている状況ではないのが今現在です。

レポート現物45ページ
→ https://s3.us-east-1.amazonaws.com/files.cnas.org/documents/Budget2022_Final.pdf?mtime=20221116160642&focal=none

弾薬量の圧倒的不足
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/

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