ウクライナ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ

中国が迅速に「既成事実:a fait accompli」を確保前に
後れを取っている米軍が迅速になすべきこと9項目
2017年まで太平洋軍作戦部長だった人物の寄稿

montgomery.jpg3月8日付Defense-Newsが、元太平洋軍作戦部長(J3:2017年退役海軍少将)とシンクタンク研究者(陸軍士官学校助教授:Black Hawkパイロット)による「ウ戦争から考える台湾への教訓9個」との寄稿を紹介し、具体的なウクライナ戦争での戦術的な教訓との視点ではなく、中国側が緒戦で「既成事実:a fait accompli」を確保し、米軍等の反撃の余地が無くならないよう今すぐ取り掛かるべき9つの提案を行っています

Bowman3.jpg寄稿者は、大平洋軍や国防省の予算要求をことごとく退けてきた米議会と米政府への不満一杯で、今頃言っても「時既に遅し」かもしれないが、米国が一丸となって取り組めば活路はあるとの姿勢で9個の提言を行っており、実現可能性や別として、台湾有事の際の軍事的課題を考える機会としてご紹介いたします

以下のご紹介する9項目は、まだ現役とのパイプも太い2017年まで太平洋軍J3だった人物(Mark Montgomery)と陸軍予備役ヘリパイロット(Bradley Bowman)による、現場の怒りと危機感あふれる声を反映した提案とまんぐーすは「邪推」しています

1.対艦ミサイルLRASM発射母機と同ミサイルを多数準備せよ
P-8.jpg●中国軍は台湾侵攻に多数の艦艇を使用するが、その撃破が緒戦で極めて重要。現在は、空母発進のFA-18と米空軍が退役させようとしているB-1が長射程対艦ミサイルLRASM(射程約800㎞)の発射母機だが、100機のP-8哨戒機をアジア各地から分散発進させ、またB-52に同ミサイルを多量搭載して大量に投入する必要がある
●このため米海軍と空軍は、それぞれLRASMを毎年50-75発購入して備蓄する必要がある(空軍は2022年に調達計画ゼロだが・・・)

2.米海軍の攻撃潜水艦配備数を増やせ
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに4隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

3.グアム島の防空・ミサイル防衛を強化せよ
THAAD3.jpg●台湾事案を考えた場合、グアム島は海空海兵隊部隊の極めて重要な作戦基盤基地や兵站支援基地になる。多くの作戦機や爆撃機や輸送機の拠点となるほか、海軍や海兵隊にとっての後方支援拠点ともなる
●中国もグアムの重要性を認識し、各種弾道&巡航ミサイルや極超音速兵器での攻撃を計画するであろうから、米軍はミサイル防衛を強化する必要がある。複数の監視レーダーや迎撃用ミサイル発射機、関連指揮統制システム等は、その気になれば3年で完備できる。今すぐ取り掛かるべき

4.E-7早期警戒管制機の導入
E-7 2.jpg●米空軍は過去30年に渡り航空優勢を全世界で維持してきたが、今の中国を考えると困難であろうことから、当初米空軍は老朽化著しいE-3後継を宇宙アセットと地上戦闘管理システムの組み合わせで構想していたが、技術進歩が追い付いていない
●この現状に鑑み、第5世代戦闘機の能力の最大発揮等の観点からも、米空軍は早期にE-7を調達すべきである

5.台湾への軍事予算援助(米国最新兵器購入支援)
Taiwan1.jpg●中国は台湾の約15倍の国防費を支出している。台湾はそのGDPの2.4%を国防費としており、他の民主主義国の中では最上位クラスであるが、この比率を3%程度のまで引き上げたい
●米国は年間2200~3500億円程度の安全保障援助資金を提供し、台湾国防費不足をカバーし、中国からの攻撃の抑止や撃破に必要な米国製最新兵器購入を支援すべきである

6.台湾への武器提供を他国より優先すべき
Taiwan4.jpg●米国は過去6年間に約2兆2000億円の武器売却を約束しているが、その実際の提供は他国への武器売却と同じ待ち行列に並ぶことになって迅速ではない
●特に中国の侵攻戦力を撃破する主要兵器であるハプーン対艦ミサイルや空中発射対地攻撃長射程ミサイルなどは、台湾に最優先して提供できるよう米議会が枠組みを整備すべき

7.米国と台湾の共同軍事演習を
Taiwan2.jpg●政治的な制約から、米軍と台湾軍が共に戦う準備ができておらず、この弱点を中国はよく認識しており、実際いま中国が侵攻を始めれば、米台の共同作戦遂行は非効率にしか進まないだろう
●米軍が台湾国土に展開しなくても、海軍や空軍間の訓練は実施可能であるし、両国共同の机上演習も相当の効果を得られる。これら共同訓練やゲームを通じ、米軍による台湾軍支援の要領や、両国それぞれの作戦計画の弱点把握や、兵站支援の課題を明らかにでき、相当のメリットが期待できる

8.両国の連合サイバー能力
●米サイバーコマンドは欧州において、ロシアの悪意に満ちた行為に対抗する「前方捕捉作戦:hunt forward」を行っていると認めている
●同様のサイバー作戦を台湾のサイバー関係者と協力して推進し、台湾の緊要インフラの脆弱性を見つけ出し、中国の仕組んだマルウェアを発見し、台湾のサイバー強靭性を強化すべきである

9.他の同盟国を上記の取り組みに巻き込め
Taiwan-China.jpg●上記のような米国の台湾支援取り組みに、有志ある他の同盟国を巻き込み、特に日本や豪州には、有事の際に米軍のアクセスを認めされるとともに、両国戦力を中国侵攻阻止に投入するよう「press」すべき
●さらに米国は、シンガポールやフィリピン、その他の近隣同盟国等に、中国による侵略は台湾に留まらないことを理解させ、協力させるべきである
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ウクライナでは、米国やNATOは直接ロシアとの交戦状態にならないよう配慮していますが、台湾の場合は米国は中国と交戦することになります。

Montgomery2.jpgその場合、米軍兵士に犠牲が出ることとなりますが、その事態に至って日本が後方支援だけで済まそうとすれば、米国のみならず世界の世論が許さないでしょう。

この問いは、岸田政権にだけでなく、日本国民に突き付けられる問であり、米国の退役少将による「特に日本や豪州には、有事の際に米軍のアクセスを認めされるとともに、両国戦力を中国侵攻阻止に投入するよう「press」すべき」との要求に、答えを準備しておくべきでしょう

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CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

中国の優位性を誇示する心理戦映像か!?
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