米軍喫緊の課題:弾薬確保を産業基盤育成から

退役軍人研究者が心もとない現状を取り上げ
政府・議会・米軍・同盟国を含めた対応を訴え
ウへ提供の対戦車ミサイルは米軍保有の半分以上で補填に12年

SM-6 4.jpg10月12日付Defense-Newsが、元太平洋軍作戦部長(J3:2017年退役海軍少将)とシンクタンク研究者(陸軍士官学校助教授:元Black Hawkパイロット)による寄稿を掲載し、米国は同盟国とも協力して、早急に弾薬の製造産業基盤の育成や備蓄量増に取り掛かるべきだとの訴えを紹介しています

LRASM-B1-2.jpgこのお二人の寄稿は今年3月、「ウクライナ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」とのタイトルのものを一度取り上げていますが、その中でも一番に訴えていたのが「対艦ミサイルLRASM発射母機と同ミサイルを多数準備せよ」で、今回の寄稿にも通じるものがあります

中身は、ウクライナ支援で露呈した米軍の関連弾薬や兵器の備蓄量や製造基盤の弱体振りや、対中国でカギになる対艦ミサイルが同様の問題を抱えていることを紹介し、政府・議会・同盟国も巻き込んだ産業基盤政策と弾薬調達予算が急務だとの訴えです。特に備蓄量や製造能力に一部具体的数字が出ており、興味深いのでご紹介します

2名による寄稿の概要は・・・
Bowman3.jpg●長年にわたり、米国防省と米議会は米国の弾薬製造基盤と調達数の問題を無視し続けてきた。航空機や艦艇や戦闘車両を重視し、弾薬については余った予算枠で調達するような状態を続け、結果として弾薬製造企業が最低限生存できる程度の調達を細々と続けてきたのが実態である
●そして今、我々はウクライナの現状や台湾に迫る危機に直面する中で、この弾薬問題をこれ以上放置することができないぎりぎりのタイミングにある

事例で見る現在の弾薬製造能力
montgomery.jpg●このような弾薬問題は、例えばウクライナ支援でもクローズアップされることになった。約8500発のJavelin対戦車ミサイルをこれまでに提供しているが、これは米軍が保有する同ミサイル約15000発の半分以上に相当する。また同ミサイルの最大製造能力が年675発であることから、ウクライナ提供分の補填には今後12年を要するのが実態である
●この事態を受け、国防省と議会は遅ればせながら動き始め、関連軍需産業は同ミサイルの製造能力を2倍にしようと検討を始めているが、実際に動き始めてから製造能力拡大が完成するまで2-3年は必要である

●また台湾への中国侵攻リスクが高まる中、世界最大規模の中国艦艇部隊への抑止と対処が重要となるが、このための主要兵器となる対艦ミサイルが大きく不足している
Javelin FMG-148.jpg●例えば、代表的な空対艦ミサイルLRASM(Long Range Anti-Ship Missile、海空軍機に搭載可)は、最近のシミュレーションでは800-1200発必要とされているが、現実には200発しか保有していないし、毎年の調達数はここ数年僅か38発でしかない。

●国防省は2023年度予算要求で年88発を要求しているが、このペースが守られても、1000発確保するのに2032年までかかることになり、中国による台湾危機への対処準備の重要性が叫ばれる中、現実との乖離があまりにも著しい

解決への方向性
LRASM4.jpg●このような状態への解決策は、政治的な意思次第で極めてシンプルであり、まず米議会が現在の最大弾薬製造能力分を調達可能な予算を配分し、次のステップとして最大製造能力を拡大できるように更に予算を拡大させていく事である
●この過程で議会は、弾薬に関する複数年購入合意を可能にし、関連軍需産業が将来を見通して製造現場の専門作業者や技術者を確保&養成できる態勢の基礎づくりを支援すべきである

●米国政府は国内政策に加え、同盟国に働きかけ、米国の製造能力拡充に合わせて、米軍や米国納税者の負担を軽減するため、同盟国へのカギとなる弾薬売却を推進すべきである。豪州・日本・英国などはLRASMやSM-6などの将来調達数をレビューすべきである
●この過程で、同盟国との弾薬の共同生産合意も追求すべきである。多国間の協力体制で可能な、より大きな製造能力を年月をかけて構築することで、より抑止力の高い一体となった軍事力を構成可能となる
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Gates Nato.jpgこの問題は米国に限らず、欧州でも日本でも同じだと思います。かつてリビア支援作戦を米国が欧州に委ねたところ、僅かな期間で欧州諸国の弾薬が底をつき、米国に泣きついた事例があり、当時のゲーツ国防長官が激怒したり、「戦闘機ばかりに投資しないで、弾薬のことも考えろ」と国際問題担当次官補が怒りをあらわにする場面があったりですから・・・

欧州やアジアの同盟国を叱る
「同盟国へ:米軍弾薬を頼りにするな」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-21-1
「警告する、NATOの2極化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12

日本も決して例外ではありませんし、豪州や英国と並んで、名指しで協力しろと言われていますので、早めに対処が必要だと思います。老婆心ながら・・・

統合作戦準備が進まず
「大平洋軍や米軍の統合運用進まず」→https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

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