米国防省や宇宙軍が前向きなのか微妙です
相手を抑止するために我の能力開示はある程度必要も
サイバーと並び宇宙ドメインでの抑止は難しい課題
5月11日、米上院軍事委員会の小委員会でJohn Plumb宇宙政策担当国防次官補が証言し、2022年国防授権法で求められている宇宙関連事業に関する「公開or非公開」区分の見直し等について、確認作業が終了して現状の秘密区分は「probably appropriately classified」と官僚とは思えないいい加減な表現で説明し、「公開or非公開」区分基準見直しについては議会と共に検討を進めたいと述べています
Plumb次官補の証言ぶりからは前向きな姿勢をあまり感じませんが、米宇宙軍トップのJay Raymond大将は昨年3月、「宇宙軍の主任務は、紛争が宇宙から始まったり、宇宙に拡散することを抑止することだ」と語り、「敵との意思疎通が重要だ」、「全てを秘密にして非公開にしていては、我の抑止力を制限することになる」とナショナルプレスクラブで説明しています
そしてその2か月後の2021年5月には、従来秘密計画として非公開だった「宇宙配備の地上移動目標探知追尾アセット配備計画」の存在を同大将が公開して注目を浴びています。(同計画は現時点で未実現)
また、宇宙軍と他の米政府宇宙機関は、能力向上計画や脅威動向に関する情報公開増に協力して取り組んでいると言われているようでもあります
一方でPlumb次官補は、我の宇宙能力強化プログラムの公開基準と、敵からの脅威に関するインテリジェンス情報の公開基準は異なったプロセスであるべきだと議会で証言し、「敵脅威情報の公開基準についても絶えず再検討が必要であり、我々も取り組んでいるが、我々は我のインテリジェンス活動全般への利点と欠点を慎重に見極め、万事に対応する必要がある」と議員たちに説明しています
同小委員会の主要メンバーで(先日は空軍が今後5年間で1000機航空機削減を計画していると誤情報を基に空軍幹部に迫っていた)共和党のDeb Fischer議員は、国民には可能な限り情報公開すべきで、「国民や国のシステムが情報を入手する機会を妨げてはならない」と、引き続き国防省や軍に、2022年国防授権法で規定の事項履行を求めていく姿勢を示しています
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米宇宙軍トップのJay Raymond大将と、議会証言したPlumb次官補には温度差が感じられるようにも見えますが、ご紹介したRaymond大将の発言や行動は1年前のものであり、Plumb次官補の議会証言は今年の5月11日のものである点に注意が必要です。
新たに急速に注目を集め始め、抑止への影響が読みにくいサイバーや宇宙ドメインに関することですから、個々の事業や政策や敵の脅威行動に応じ、様々な角度から慎重に検討する必要がある問題だと思いますし、緊密な意思疎通が図られていると思います
特にウクライナ関連では、米国は宇宙からがっつり状況を把握して「ウ国」に提供しているでしょうが、ロシアへの刺激を避けるため公開することには慎重だと推測いたします
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