期限は設けず。駐留経費負担増より筋が良い要求かも
NATOは2014年に2%設定も、達成率1/3以下
16日、エスパー国防長官が加州サンタモニカのRAND研究所で講演し、日本を含む同盟諸国に対し「防衛費を国内総生産(GDP)比で少なくとも2%に増額するよう要請する」と表明しました。
太平洋に面した西海岸での演説であり、中国を念頭にアジア太平洋諸国への呼びかけであったと考えられます
2014年のロシアのウクライナ侵攻を受け、NATOは当時のオバマ政権の強い働き掛けにより、GDP比2%以上の目標を2014年に設け、10年後の2024年を達成期限に設定しましたが、NATO以外の国に類似の数値目標を示したのは初めてです。
RAND講演での関連発言要旨(各種報道より)
●私たちは今日の安全保障上の懸案に対処しつつ、将来の課題に備える集団的な責任がある。(中国の軍事的脅威の増大などを念頭に、)無関心は許されない。状況の変化を認識しなければ、私たちの価値観や安全が大幅に侵害され、さらなる挑戦を受ける危険が高まる
●米国が急速な軍備拡大を進める中国に対抗し、今後も軍事的優位性を維持していくためには産学官一体となった取り組みが必要だ。
●世界中の同盟・パートナー国に対しては、共通の利益や価値を守り、安全を維持するという目標を達成するため、国防費を少なくともGDP比2%に増やし、軍事力向上に必要な投資を行うよう求める
NATO諸国への2%要求の状況
●オバマ政権時代の2014年、NATOはロシアによるウクライナ南部・クリミア半島の併合を受けて対ロ防衛の増強を決定。2024年までに各国の国防費をGDP比2%以上に引き上げる目標も設け、欧州での平均は14年の1.44%から18年は1.51%へ上昇
●トランプ政権は米国の一段の負担軽減に向けて早期の実現を求めているが、2020年時点で達成したのは加盟30カ国のうち米を含む9カ国だけ。今年6月には、ドイツが未だこの目標を達成せず、2030年頃達成との計画でいることに不満を示し、トランプ大統領は在独米軍約3.6万人から1.2万人を削減すると発表
●NATOの資料によると、2018年にGDP比2%目標を達成したのは7カ国。17年も達成していた米国(3.39%)、ギリシャ(2.22%)、英国(2.15%)、エストニア(2.07%)の4カ国に加え、ロシアの危機に直面するポーランド(2.05%)、ラトビア(2.03%)、リトアニア(2.0%)が伸びた。
●目標を大幅に下回ったドイツは、2018年で1.23%。2020年には同1.37%に上がるが、23年には1.25%程度に再び下がる見通しで、独政府は「2031年までに2%を達成したい」との態度を示している。
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日本の防衛費はGDP比で約0.9%だそうですが、岩屋毅防衛相(当時)はNATOの基準に基づけば最大約1.3%になるとの試算を示したことがあるようです。
エスパー国防長官の発言が、2021年3月で現協定が期限を迎える在日米軍駐留経費の日本側負担「思いやり予算」交渉に、どのように関連してくるのかよくわかりませんが、「思いやり予算」増より、日本が使用できる国防費が増えた方が日本にとって意味があると思います
アジア周辺国のGDP比は、韓国2.6%、インド2.4%らしいです。台湾や東南アジア諸国と比較しても日本は低い可能性がありますから目立つでしょうね・・・。増やすならば、無理やり米国製兵器を交わされるのではなく、実質的な国防力・抑止力向上につなげてほしいと思います
ドイツ駐留米軍削減の関連
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