8月20日のバーチャル環境でのAI操縦者圧勝を受け
9日エスパー長官が大々的に発表
9日、エスパー国防長官が国防省主催の「Artificial Intelligence Symposium」で講演し、2024年に実際の作戦機に人工知能を搭載し、人間パイロットが操縦する航空機と対戦させると発表しました
人工知能AIと人間操縦者の対決は、国防省最高の研究機関DARPAが8月20日に開催したバーチャル環境下での「AlphaDogfight Trials」で実現し、5回戦ってAI側が5勝との「完勝」で終わりましたが、この結果を受け更に発展させようとエスパー長官は語っています
ただ「AlphaDogfight Trials」の結果があまりにも衝撃的であったこともあり、主催者側から、AI側の問題点や対戦条件がAIに有利だったかもしれない等の発言も出はじめており、更に「実機」へのAI搭載には安全面等で様々なハードルが予想されることから、今後の対戦準備や場の設定は単純ではないと想像いたします
9日付C4isrnet記事によれば
●エスパー長官は講演で、「(8月20日の)AI側の圧倒的勝利は、バーチャル環境下での模擬空中戦において、AIの最新アルゴリズムが人間を上回る能力であることを示した。このシミュレーション対決を、2024年には現実世界におけるフルスケールの作戦機勝負へと発展させることにする」と宣言した
●「AlphaDogfight Trials」で参加8企業チームの戦いを勝ち抜け、Weapon Schoolを卒業したばかりの人間操縦者に挑戦した「Heron Systems」のAIは、その攻撃的な戦いぶりと射撃の正確さで会場に名を轟かせた(gained notorietyとの表現です。悪評か?)
●(まんぐーす注→敗れた人間操縦者が大会後、飛行の安全を考えて米空軍が普段遵守している、敵との最低限の高度差を確保するとか、真正面に近い方向からの接敵を避ける配慮は、AIにはなかったと初対戦時に気づいて戦い方を修正したと語っており、この点も今後の要考慮点で悪評の原因か)
●ただし、Heron Systems社のソフトも完全ではなく、基本的な戦闘行動パターンの途中で、敵の在空また飛行する方向の認識を誤り、逆方向に旋回する誤ちをしばしば起こしており、大会中改善されなかった
●DARPAの担当責任者Dan Javorsek空軍大佐も大会後に、「付け加えるべき多くの警告事項や前提条件が明らかになった」と述べ、またAI側に実際の戦闘場面では入手不可能な多くの事前データを与えていたかもしれないと、対決の場の設定に再考の余地があるような発言をしている
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原点に立ち返ると、このプロジェクトは、人間の「AIへの信頼性を高め、「AIは使い方によっては使える」と有人操縦者に信じてもらえるようにすることを目的に始まっています。
ですから、AIがかった、人間が勝った・・・との話ではなく、無人機ウイングマンにAIを搭載した場合、どのような判断をAIに任せ、人間操縦者はどの部分を担当すれば全体の戦闘力アップにつながるかを見極めるための研究です。また無人機を地上から操作する場合には、どこまでAIゆだね、どの部分を地上からサポートすべきか、を見極める研究でもあります
まんぐーすも、「速報、AI側の圧勝」とツイートしてあおった側の人間ですが、AIの発展には大いに期待しつつ、今後の展開を見守りたいと思います
補足、下記の過去記事で、米空軍研究所が2021年7月に無人戦闘機と有人戦闘機のが空中戦対決を準備しているとご紹介していますが、この取り組みとエスパー長官発言の関係は不明です
無人機空中戦の検討プロジェクト
「AI操縦者が5-0で圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-11
「無人機含む空中戦を支えるAI開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-19
「米空軍研究所AFRLは2021年に実機で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-05
米空軍の計画
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
「空母搭載の小型無人機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-03
「空軍研究所が関連映像公開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-3