次期ICBMシステム整備の「強制見直し」検討状況

当初総経費11兆円から21兆円に爆発膨張も事業再承認で2024年7月から計画見直し中
米空軍の巨大事業統括White大将の下で2026年末までに計画再構成
Minuteman III後継の次期ICBM:LGM-35A Sentinel開発は比較的順調も
光ファイバー敷設やICBMサイロ新設や地下発射管制所改修等の難題解決方向は?

10月9日、加州の宇宙軍基地から行われた、Minuteman III後継である次期ICBM(LGM-35A Sentinel)の新型再突入体(Reentry Vehicle:RV:Mk21A)の試験発射が無事に成功し、LGM-35A Sentinelミサイル開発は次の「起爆・信管サブシステム」の統合フェーズへと比較的順調に進んでいることを証明しました。

一方で、次期ICBMシステム整備の大問題で、当初総経費が当初見積の11兆円から21兆円に爆発膨張した主因である地上インフラ整備、つまり「約8000㎞の光ファイバー」、「ICBM格納サイロの新規設置」、「24か所の指揮指令所改修」等については、2024年7月の計画見直し開始後(2025年5月のサイロ再使用が不可判明後も)、ほとんどご紹介していませんので、

2026年末予定の「マイルストーンB再承認」(システム設計、工事&調達計画や予算規模)や、2027年3月中のSentinelシステム全体の「詳細設計審査(CDR)」(ミサイル本体や地上設備を含めたシステム全体の技術的な最終設計図を検証・確定)に向けた、米空軍の巨大プロジェクト統括責任者Dale R. White空軍大将の下での検討状況概要を、

「光ファイバー」、「ICBM格納サイロの新設」、「地下発射管制所改修」、「作業員セキュリティークリアランス」の視点からご紹介しておきます。なお、当初計画の総経費約11兆円から21兆円に爆発膨張して「全体計画の徹底見直しフェーズ」に入っている本事業ですが、現在では「21兆円を削減」するのではなく、「上限21兆円規模」に抑えることに注力しています。また「あまりにも杜撰」な経緯については、過去記事をご覧ください。

【約8000㎞の光ファイバー敷設】
・次期ICBM計画で最大のコスト上昇要因。5州に拡散配置の450個の地下ICBMサイロを結ぶ光ファイバー網敷設は、その距離と地主との交渉や補償面から「悪夢の土木工事」と言われ、総経費や工期の見通しも立たないたい状況だった。(なお、古い通信経路再利用は、老朽化や運用中断防止やルート秘匿から当初から不可判定)
・以前は地面を掘り返してケーブルを埋める方式で検討も、今は最新技術で地上農地への影響を局限する「地下横穴ボーリング」や「振動式プラウ(特殊重機で地面に細い溝を掘り、同時に光ファイバーを地下に埋め込む)工法」導入で解決に道
・インフラ工事に関し、民間ゼネコン丸投げ方式から、米陸軍工兵部隊による工事業者の直接指導体制へ変更し、工事管理体制を強化

【ICBM格納サイロの新設】
・当初はMinuteman III格納地下サイロの改修&再利用を見込んでいたが、2025年に老朽化等から再利用不可が判明してサイロ450個の新規建設の必要が生じ、コストや工期を含む計画全体が五里霧中の振り出し状態に
・LGM-35A Sentinel用の新サイロは、旧サイロから数十〜数百メートル離れた同じ空軍保有地内に建設されることに決定。細部が個々のサイロで微妙に異なる旧サイロの再利用ではなく、新たな穴を掘る新方式を利用し、新サイロは工場で一括製造される「モジュール式サイロ」埋設方式に
・旧サイロの改修&再利用には、旧サイロの非破壊検査→有害物質(アスベストや鉛)の除去→劣化部分の交換&補修等+「未知の問題対処」等の個別作業を、地下で450箇所行う必要があったが、新方式は穴に「新モジュールを埋めるだけ」でシンプル化。同時に画一された「新モジュール式」導入で、改修や部品交換作業を単純化&均一化可能に。2075年までの維持を容易に

なお、約120個のサイロについては、新たに用地取得(1サイロ当たり東京ドーム1個分の地籍)が必要になり、環境影響調査EISと意見聴取が10月9日公示で開始されています。

【24個の地下発射管制センター(LCC)改修】
・当初計画では、約24の「地下発射管制センター」を大規模な施設へ刷新する計画も、膨大な工事コスト抑制のため、同センターの物理的な規模や複雑さを見直す方針が決定。既存の地下構造を極力活かしつつ、中身のシステムを入れ替える現実的な設計へダウングレード
・指揮統制システムのソフト開発やハード設計関し、国防省から製造&デジタル技術顧問団が投入され、デジタル設計とデジタル確認を経た後、実機を製造するプロセスの厳格導入へ
・また全ての事業をNorthrop Grumman社だけに任せては巨大事業の管理は困難と判断され、非ミサイル分野(通信網の敷設、施設の建築、指揮センターのハード設置など)のインフラ工事は、契約を細分割し、他の専門企業へ競争入札、又は陸軍工兵隊や空軍が直接管理の方向で調整中

【作業員セキュリティークリアランス確保】
・当初は巨大作業に必要な作業員数万人への「核兵器関連施設立ち入りセキュリティークリアランス申請&許可」を追求していたが、あまりにも膨大な審査量に事務手続きが破綻。また辺鄙な5つの州周辺で、審査をクリアする作業員確保が実質困難と判明
・「モジュール式サイロ」への移行など、現地で作業する工程を減らし、一般民間工場でモジュールやパーツ製造を増やすことで、一般工場で働く作業者には厳しいセキュリティークリアランスが「不要」になり、人員確保のハードルが劇的に低下。要クリアランス人員は、「現地で組み立てる最小限の作業員」だけに絞り込み。
・既にセキュリティークリアランスを通過している陸軍工兵や、軍専属の契約企業を投入することで、クリアランス新規申請を低減
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複雑な「見直し方向」を単純化してご紹介しました。

このような見直しによっても、次期ICBMシステムが部分的に運用可能体制に入るIOC(初期運用態勢確立)の時期は早くても「2030年〜2033年頃」に設定される模様で、段階的に新ICBMに入れ替わる現在のMinuteman IIIミサイルの運用は、多弾頭化も見送られる模様で、2050年頃まで継続せざるを得ないと見られています。

1970年代から使用されているMinuteman IIIや関連施設は老朽化が激しく、「部品の共食い」や「製造中止や製造企業消滅部品の信頼性に疑問のある模倣品作成使用」や「極めて危険な固体燃料交換」で無理やり延命使用を続けていくことになります。

Minuteman IIIは年に数回の実射試験(訓練を兼ねて)を行っていますが、2023年以降、発射後のミサイルの不調や発射直前のシステム不具合発生が急増しており、老朽部品や模倣部品の不具合や、固体燃料の劣化が原因と推定され「核抑止戦力」の信頼性問題を引き起こしています。その中でも米国は「核抑止の3本柱」を維持する方針を固め、巨額の投資をICBM維持につぎ込むことになります

超巨大次期ICBMシステム整備の苦悩
「再検討責任大将が語る」→https://holylandtokyo.com/2026/02/24/13999/
「老朽ICBMの更なる延命が可能!?」→https://holylandtokyo.com/2025/09/17/12771/
「サイロ再利用不可判明」→https://holylandtokyo.com/2025/05/14/11544/
「ずさんすぎる再承認」→https://holylandtokyo.com/2024/07/10/6109/
「国防次官あきらめムード」→https://holylandtokyo.com/2024/06/05/5929/
「米空軍だけでは対応不能」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

米軍核兵器の惨状
「初のオーバーホール」→https://holylandtokyo.com/2017/05/17/7308/
「移動式ICBMは高価で除外」→https://holylandtokyo.com/2016/06/17/7624/
「米空軍ICBMの寿命」→https://holylandtokyo.com/2012/09/24/9086/
「米国核兵器の状況」→https://holylandtokyo.com/2011/03/06/9644/

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