ウクライナ軍が無人機で世界初の負傷兵救出

地上走行の無人車両で負傷者搬送の事例はあるが
救出には物資輸送用ドローンGurzuf Defence社製Ayudag-6を使用

10月19日、ウクライナ軍(正確には第92独立強襲旅団無人システム部隊)が、前線で負傷した兵士1人を、ローター6個の無人機を使って救出に成功し、空を飛ぶドローンによる前線からの負傷兵救出は「世界初」だと発表しました。

ウクライナ軍は、救出作戦が実施された具体的な日時や場所等については作戦上の非公開事項として公表していませんが、各種報道等によると・・・
●救出作戦実施エリア(ハルキウ州)では、露軍の激しいドローン攻撃が継続し、周辺に地雷が敷設されていたため、ウクライナ軍が従来行ってきた地上走行の無人車両による負傷者搬送が困難な状況
●救出された負傷兵は現在治療中も、命に別状なし。(報道では、両脚の切断手術など複数の手術を受けているとの情報もあり)

●使用ドローンは物資輸送用のGurzuf Defence社製Ayudag-6
・ヘキサコプター(ローター6個)で、「物資輸送」や「爆撃」を主目的に開発(爆撃機仕様の呼称は「Heavy Shot」)
・機体重量は約98kg、ペイロードは通常70〜90kgも、最大150kgまでテスト済
・緊急の要請で、上記運用部隊が急遽、人間運搬時の空中での揺れや傾き防止のための安定化調整や負傷者固定用の改良を実施後に実戦投入
・往復の総飛行距離は約40nm(約70㎞:東京駅から小田原駅の距離に相当)に及び、作戦には約75分間を要した

なおウクライナ軍は、「負傷者搬送専用の無人機」として、SkyFall社製と「StarGate」とのヘキサコプター(ローター6個)を別に開発中で、10月16日にAP通信が独占報道していたことから、一部ネット上では、今回の負傷者搬送を「StarGate」によるものと紹介していますが、これは誤りのようです。

なおSkyFall社製の「StarGate」は
・負傷兵搬送を前提に、「医療用担架ストレッチャー」を装備した機体で、防弾チョッキや装具を装着した兵士を想定し、150kgの積載能力
・露軍の電波妨害(EW)対処用に、SpaceX社のStarlinkと独自システム(L-Link)の2つの通信経路を持ち、GPS遮断時も自律飛行可能なAIナビ能力を搭載
・10月16日のAP報道では、「今後前線部隊で少なくとも1ヶ月間の実戦評価試験を行う。SkyFall社は2026年末までに月最大1,000機の量産を目標にしている」と説明
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日テレNewsの映像(約1分30秒)


陸続きの欧州戦場と、海上での戦いが主になる「西太平洋での中国との闘い」は様相が大きく異なりますが、中国が強固な防空網を形成している東シナ海や南シナ海や台湾海峡周辺で、米軍を始めとする西側軍のCSAR(戦時捜索救助)体制は「極めて不十分で不安な状態にある」と考えている「まんぐーす」は大いに注目したいと思いますし、日本としても米軍と共に作戦する上で「超重要技術」だと位置づけるべきです。

米空軍は2020年から、CSAR用へりHH-60G(Pave Hawk)の後継機として、新型へりHH-60W(Jolly Green II)を導入開始しましたが、2023年度予算検討段階で米空軍幹部が、「HH-60Wはイラクやアフガン用に検討導入したもので、対中国用ではない。HH-60Wは対中国の厳しい作戦環境では任務遂行が困難」との理由で、同機の調達機数を下方修正しました。

その後、HH-60Gの機体疲労や老朽化が著しいため、HH-60Wの調達数は少し盛り返しましたが、「対中国」との視点では、米空軍は「米陸軍が開発検討中のティルローター型機Bell V-280やステルス性も追求するSikorsky-Boeing社製Difiant Xへり等も検討対象」とか、「電動ヘリや電動固定翼機も検討」との話をしてきましたが、未だ「実質放置プレー」が続いています。

対中国で、母国から遠く離れた中国大陸近傍での戦いを強いられる米軍兵士にとって、航空機や艦艇が撃墜撃沈されたり、展開先で負傷した場合に、友軍が必ず救出してくれるとの「安心感」「信頼感」は士気に直結しまし、CSAR活動が「道徳的義務:moral imperative」と表現される所以です。

日本にとっても極めて重大な課題です。東シナ海や台湾近傍で救助を求める米軍兵士に、同盟国である日本が救助の手を差し伸べられなかった場合、米国民感情からも、米軍兵士から見ても許容できるものではなく、日米同盟の根幹を揺さぶるものとなりえることを、日本は認識しておくべきでしょう。

救難救助体制は迷走中
「HH-60Wの電子戦能力テスト」→https://holylandtokyo.com/2025/09/19/12718/
「対中国救難検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

電動ヘリ&固定翼導入検討「Agility Prime」計画
「固定翼型3か月のお試し試験終了」→https://holylandtokyo.com/2024/02/08/5523/
「固定翼機Aliaの試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/12/05/5267/
「Joby社電動ヘリで試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/05/5076
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/10

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