太平洋空軍が戦力分散運用ACEに動く

久々にACE(Agile Combat Employment)について
作戦機を分散基地で支援する地上支援機材が鍵の一つ
地上要員にパワースーツ装着も検討

Agile Combat Emp.jpg11日付Defense-Newsは、中国による各種ミサイル兵器の増強により、西太平洋の米空軍拠点航空基地の脆弱性が増し、貴重な米軍航空戦力が地上で無効化される恐れが高まる中、米空軍が対処策として取り組んでいるACE(Agile Combat Employment)構想の現状について、太平洋空軍副司令官らへのインタビューを基に紹介しています

ACEとの言葉を初めてご紹介したのは2017年10月のことで、当時の国防高官が記者団に断片的に・・・

米空軍が現在使用している西太平洋の空軍基地は、作戦初動で大きな被害を受ける可能性があるので、その対処策として、作戦コンセプトACEを共有して取り組んでいる
在日の米軍最新戦闘機は、地域の島々10-15箇所の未整備な緊急展開基地に分散させる

●このコンセプトでは、分散した不便な展開場所でも最新戦闘機が作戦可能なように、兵たん部門の分散運用支援体制を迅速に整える必要がある
●米空軍は最近の演習などで、燃料の緊急配分訓練をすでに開始している

戦力を分散配備することで、中国がどこを優先して攻撃すべきか判断することを困難にすることが狙いだ
Agile Combat Emp2.jpgまた2017年12月には当時のO’Shaughnessy太平洋空軍司令官が
太平洋軍エリアでACE関連訓練が開始され、戦力を分散して柔軟性と強靭性を確保する取り組みが始まっている

予算の強制削減と過去約20年間の継続した戦いにより、わが米空軍に再投資して立て直すには時間が掛かるので、現有戦力で戦う方法を考えるしかない

最近では、例えばBrown太平洋空軍司令官は、米空軍だけで航空基地の防空を担うことは難しいので、他軍種にも協力をお願いすべく協議を始めていると語っていたところです

そんな中、戦力分散先で航空機運用するために必要な体勢を整えるため、1960年代から変わっていない航空機の地上支援機材を中心に、色々な対処法が考えられているようです

11日付Defense-News記事によれば
Agile Combat Emp3.jpg●1月29日にインタビューに応じたBrian Killough太平洋空軍副司令官は、多様な攻撃ミサイルを備えた中国やロシアと米軍が西太平洋で戦うことになれば、米軍は兵站上、大変な困難に直面すると語り、
そんな中でも米軍航空戦力を生かすため、ACE(Agile Combat Employment)構想に基づき、基盤航空基地ではなく、設備不十分な基地や同盟国の基地、民間飛行場などを活用しての戦力運用を考えていると述べた

●同副司令官は、欧州であれば鉄道や高速道路で機材や物資を輸送できるが、アジア太平洋地域ではそのような手段が確保できないことから工夫が必要で、「lighter and leaner:軽く、ほっそりと」なる必要がある、と表現した
航空機を離陸させるには、テストスタンドや兵器搭載用機材など、重くて輸送しにくい地上支援機材が必要であるが、米空軍はより輸送し易い「(多様な機種に対応できる)共有支援装備:common support equipment」を導入したいと希望している

米空軍兵站コマンドも検討していると同副司令官は述べたが、「基本的に我々が現在使用しているのは1960年代から変わらない装備で、より軽量で効率的な装置が必要だ」と問題点を指摘した
Agile Combat Emp4.jpg太平洋空軍の兵たん担当Daniel Lockert大佐は別の観点から、分散配備先の限られた人員や装備で重量物を扱うために、人間が着脱可能なパワースーツ(wearable exoskeleton)で、一人の人間が120㎏程度の荷物を扱えるような手段も考慮していると述べている

●米空軍はまた、アジア太平洋地域用に必要機材を事前集積するキット「RBCP:regionally based cluster pre-position」方式を検討しており、欧州で始まっている「deployable air base kits」を参考に、滑走路修復機材や発電機、通信機材などを含むキットを検討していると同大佐は述べ
RBCPは欧州版より輸送し易いものをイメージし、2-4機の小規模展開に対応するレベルで検討されており、状況に応じて中身を選択できるモジュラー方式を追求していると同大佐は述べた

RBCPの配備はまだ始まっていないが、RBCPを地域のいくつかのハブ基地に分散集積しておき、必要時に必要な場所に分配する方式も考えられており、今年豪州で予定されている「Pitch Black演習」で試験することが計画されている
●同大佐は、同演習後にいくつかの機材を豪州に残置し、他の演習に活用するなどの機会を利用してRBCPプロセス成熟に活用したいとの意向を示唆した

最近の太平洋空軍演習とACE
Agile Combat Emp5.jpg2019年4月にグアム島を中心に行われた「Resilient Typhoon演習」では、グアムのアンダーセン基地の航空機が、グアム島内の他基地や、テニアン、サイパン、ミクロネシア、パラウに緊急分散退避する訓練が行われた
2019年10月にアラスカで行われた「Polar Force 20-1演習」では、空軍兵士は通常の主任務とは別の任務、例えば基地の警備、航空機への燃料補給、展開部隊受け入れ施設準備などの業務を訓練し、滑走路の緊急復旧訓練も実施された

2020年1月に嘉手納基地を中心に行われた「WestPac Rumrunner演習(過去記事あり)」では、嘉手納基地の整備員が、島内の海兵隊普天間基地に展開して空軍機を受け入れ、給油や再発進準備を行った
●10日に公開された2021年度予算案でも、ACE関連予算が含まれているかは不明ながら、兵站能力強化のための予算が重点項目として、約3300億円含まれている

●米空軍協会ミッチェル研究所のMark Gunzinger研究部長は、米空軍は正しい方向に取り組んでいるが、滑走路補修機材、緊急燃料タンクなどなど必要不可欠な装備品は数多く、「短期間で完成するようなものではない。冷戦終了後、米軍は分散運用能力を全て捨て去ってしまっており、この回復には10年以上必要だろう」と語っている
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Agile Combat Emp6.jpgグアム周辺や豪州に作戦機を分散しても、当然中国は予期して分散基地を多様な手段で攻撃・無効化するでしょうし、そのような不便な分散基地からの戦力発揮が極めて難しいことや、戦力投射能力が限定的なことは十二分に米軍はわかっているはずですが、それでも懸命に取り組んでいるわけです

大統領選挙の荒波の中で、国防費や国防予算の細部が「政争の具」になる中でも、米軍や米国防省は前向きに取り組んでいるわけです・・・

それに引き換え、日本の取り組みはさみしいです。嘉手納基地が危機感にあふれている一方で、那覇基地や九州の新田原や築城はどうでしょうか・・・。これは政治の話かもしれませんが、さみしい限りです

集中配備から、分散運用する新コンセプトACEへ
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08
沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「嘉手納中心に基地防空とACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
日本を含む西太平洋地域の現実
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09

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