米軍電子戦機の今後:海軍EA-18Gと米空軍EA-37Bへの投資計画

米海軍はEA-18G用の新型ポッド開発導入に既に8000億円
米空軍はビジネスジェット基礎の新型機EA-37Bを現5機から22機体制へ
冷戦後「電子戦を忘れた反省」から体制立て直し中

5月4日付DefenseOne5日付米空軍協会web記事が、米海軍電子戦機EA-18Gと米空軍新型電子戦機EA-37Bへの取り組みについて偶然同時期に掲載していますので、冷戦後の「電子戦体制の冬」からの立て直しを図る取り組みと、対中国本格紛争に向けた体制整備に取り組む両軍種の今後の計画をご紹介いたします。

【米海軍EA-18Gに新型電子戦用ポッド開発】
●米海軍電子戦攻撃機EA-18Gは、1月のベネズエラ大統領逮捕作戦では、ロシア製および中国製の防空システムの制圧・破壊を担い、2月末の対イラン作戦開戦時にも、空母リンカーンや空母JRフォードから発艦し、搭載電子妨害装置とミサイル攻撃で、イランの通信レーダーシステムや地対空ミサイル部隊を妨害&破壊して、その存在感を印象付けた
●EA-18Gは、ボーイング製の艦載戦闘攻撃機F/A-18を電子戦攻撃機に改良したもので、2003年契約で2006年から納入が開始され、当初90機のみの購入予定だったところ、2018年の最終号機納入時点で160機を米海軍に提供。また豪空軍も12機を導入済。

●EA-18Gは現在、2020年頃から開始の新型電子戦ポッド(ALQ-249 NGJ:Next-Generation Jammer pod)開発による能力向上を精力的に進めている。
●開発は対象周波数帯別に3バージョン(レイセオン社とIncrement 1 (中帯域Mid-Band)、 L3Harris 社とIncrement 2 (低帯域Low-Band)、Increment 3 (高帯域High-Band))で行われており、これまでに計8000億円以上が投入され、2027年度予算案にも約650億円が計上されている。

●低帯域担当のL3Harris 社とは、2020年に作戦用や訓練用のポッド20本以上を約800億円で、更に2024年に880億円を契約している
●中帯域担当のレイセオン社とは、2023年の契約約10000億円で、11組のポッドを米海軍用、4組を豪空軍用に発注している。

●また米海軍は2026年3月にレイセオン社と、交換用部品キットや関連支援機材調達のための約800億円の契約を結んでいる。
●別途豪空軍も、EA-18Gのレーダー改修のため、2023年2月に約420億円の契約を担当企業と結んでいる

【米空軍はEC-130H後継の新型EA-37Bを倍増へ】
●空軍電子戦機EC-130Hは、敵の通信、航法、レーダーを妨害し、敵の防空網を抑制や無効化が可能で、これにより敵のキルチェーンを崩す。ただし海軍EA-18Gが搭載可能な、物理的破壊用ミサイルは搭載していない
●14機保有の電子戦機EC-130Hの後継機として、米空軍は2017年、L3Harris社が提案したビジネスジェット「Gulfstream G550」にEC-130Hの電子戦装備を搭載したEA-37Aを選定し、2023年に初号機が納入され、現在までに5機受領(27年と28年に追加5機で10機体制へ)で活動を開始している。これに併せ、2025年時点で、14機のEC-130Hのうち10機が退役済

●予算枠の関連で空軍は10機で調達終了予定だったが、米議会は2026年度予算で追加2機取得分の予算を承認。
●トランプ政権による国防費1.5倍増の流れを受け、米空軍は2027年度予算案に追加で3機発注予算を計上し、更に2031年までの5年間で更に7機導入する計画を明らかにし、計22機体制を目指すとMeink空軍長官が議会説明

●納入済の最初の5機は基本的機器構成となっているが、6機目以降は、将来の能力向上が容易に行える「System-Wide Reconfigurable Dynamic Architecture」を採用している。また搭乗員はEC-130の13名から、EA-37では9名に減少している
●退役開始のEC-130Hも搭載機器は継続的に更新されており、EA-37Aも同じ搭載装備で運用を開始したが、プロペラ機のEC-130とビジネスジェット基礎のEA-37Aでは、飛行速度や航続距離、更に飛行高度が格段に優れており、同じ搭載装備でも電子戦作用の影響範囲が格段に広がっている
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米空軍はかつて、戦闘機や戦闘爆撃機タイプ電子戦機として、ワイルドウィーゼルF-4G Phantom(1996年退役)や、戦闘爆撃機改良のEF-111 Raven(1998年退役)を保有していましたが、「米空軍にはステルス戦闘機やステルス爆撃機があるから大丈夫」、「F-35には自己防御電子戦能力あり」等の理屈で、使い捨て電子戦用デコイMALD以外の関連装備は現在保有しておらず、随伴型電子戦機は機体も要員ノウハウも「喪失」しています。

最近になって米空軍は、中国の強力な電子戦能力対処用として、無人ウイングマン機CCAに随伴型電子戦機の役割を付与しようとの選択肢検討も行っているようですが、現時点で方向性未定です。

一方で米海軍は、F-35Cとのステルス戦闘爆撃機の空母搭載が始まっている中でも、ステルス機では無い随伴型電子戦機EA-18Gの能力向上に継続投資を行っており、「軍種による考え方の差」なのか、「米軍全体、つまり統合戦力としてのニーズ」に対応するものなのか、この違いは興味深いところです。

電子戦能力との、きわめて秘匿度の高い話題で、細かな新装備の能力や従来との比較ができず申し訳ありませんが、とりあえず久々に電子戦能力強化の話題を提供させていただきます。

米空軍EA-37(EC-130H後継)関連の記事
「同盟国も強い関心」→https://holylandtokyo.com/2025/07/18/11288/
「EA-37の初号機受領」→https://holylandtokyo.com/2023/09/20/5052/

海軍EA-18G関連記事
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米空軍とEA-18G関連の記事
「米空軍電子戦を荒野から救出する」→https://holylandtokyo.com/2016/06/24/7631/
「ステルス機VS EA-18G」→https://holylandtokyo.com/2014/04/25/8476/
「米空軍の電子戦文化を担う」→https://holylandtokyo.com/2012/09/12/9074/

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「SpaceXのウクライナ対処に学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「電子戦とサイバーと情報戦を融合」→https://holylandtokyo.com/2020/11/17/389/
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