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5世代機F-35以降の高性能機が求める操縦者育成に向け
1988年から導入のT-4練習機の後継を巡る米欧日企業の争い
加えて「時代遅れ」な空自操縦者訓練体系改革も視野に
日本政府機関(防衛、外務、経済産業、警察)等が主催して5月下旬に幕張メッセで開催された防衛治安装備品展示会「DSEI Japan 2025」における、上記3企業提案や関係者のコメント等を紹介しつつ、T-4後継機選定を取り巻く環境や提案概要だけでなく、海外専門家が「時代遅れ」と評する航空自衛隊戦闘機パイロット教育改革に向けての動きなどを紹介しています。
まず、3つの提案概要は
●米国ボーイング社のT-7A
・米空軍が2018年にT-38練習機の後継機として約350機導入を契約している機体で、デジタル設計技術を最大限に活用した開発をアピールし、実際に設計図から試作機初飛行まで僅か3年で実現して航空機設計に「革命をもたらした」と話題に。「レッドホーク」の愛称
・しかしその後は、「高迎角時にロール軸不安定」問題、「飛行制御ソフトウェア」問題、更に「射出座席」問題など、デジタル設計の限界が次々に露呈し、「量産契約時期」は3年遅れの2026年、「IOC 初期運用体制確立時期」は4年遅れの2028年となっているドロ沼開発問題に絶賛対処中の機体
・一方で、2024年4月の日米首脳会談(岸田・バイデン)で、「T-4機に代わる練習機の共同開発を検討する」と発表されており、問題山済みの候補機ながら、トランプ政権のごり押し政策もあり、選定に絡んでくるだろうと誰もが考えている機体
・ボーイング関係者は、航空自衛隊と米空軍は、共にF-15とF-15を運用する類似性の高い空軍同士であり、T-7は間違いなく両国空軍のニーズに最もフィットするとアピール
●イタリアLeonardo製M-346 Block 20
・最初の海外顧客である豪州に2028年納入が決定している機体で、既に空自の戦闘機操縦者数名が伊サルデーニャ島の民間飛行訓練施設で、同機を使用した飛行訓練を体験し、訓練内容に高い評価を与えている
・英伊日(+サウジの可能性も)が開始している次世代戦闘機開発(GCAP:グローバル戦闘航空機計画)で、日欧の協力関係が急速に深まる中、日本が米国以外との多角的関係強化を重視する場合に有力となる可能性
・更にLeonardo社は、日本への技術移転と日本国内企業との協力に意欲的で、同社海外担当責任者が「我社は日本企業を最大限に活用することを目指している」とアピール
●三菱重工のT-X練習機
・同社はDSEI Japan 2025でT-Xの小型モデルを展示したが、2024年に検討作業が始まったばかりで、企業関係者が具体像を説明することが困難な実態を露呈
・展示されたモデルはF-2と似ており、F-2とF-15の複座型(教官と訓練生が同乗する訓練用機体)の後継を目指す可能性を関係者が示唆
・これから本格的開発に入るため実現には時間が必要で、日本側が完全国産を追求する場合で、空自T-4の退役スケジュールに余裕がある場合には選択肢になりえる
戦闘機操縦者養成の改革関連
●民航機を含む操縦者教育へのシミュレーションやAI利用を支援する企業CAE幹部は、1年半前に空自操縦者30名に実施した調査結果を基に、「現在の空自養成プログラムは、陳腐化しつつある航空アセットに依存しているため、訓練から得られる練度や知識が、F-35運用に必要なレベルと大きなギャップを生んでいる」と現状を厳しく評価している。
●また調査の一環として行われた同社提供プログラムをアピールし、「仮想現実(VR)シミュレーターを用い、AI活用コーチングをわずか1時間行うだけで、人間の教官による教育無しで、受講者の成績を約20%向上させることを実証した」と説明している
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戦闘機とは異なり、練習機は世界中に様々なモデルが存在し、それぞれが一定レベルの性能を持っているため、誰からも文句が出ない機種選定を行うことが極めて難しいい分野です。担当者殿のご苦労をお察し申し上げます
Defense-News記事は3企業提案だけ取り上げていますが、他にも候補がある可能性もあります。
しかし今の軍事情勢下でこの問題を考えると、F-35を大金を投じて導入し、F-35パイロットの育成用にも高性能練習機を調達し、更にAIや高度なシム装置まで購入してパイロットを育成し、巨額の予算をつぎ込んだ挙句の果てに、
F-35が離陸する前に地上で無効化される様や、安価なドローンを撃墜する任務に奔走する姿を想像すると、この日本での戦闘機への巨額投資は「完全に狂っている」と思わざるを得ません。空自内でも、白けた雰囲気が漂っているものと拝察いたします
米空軍T-7A開発の昏迷
「更に1年遅れ」→https://holylandtokyo.com/2025/02/20/10642/
「更に遅れます」→https://holylandtokyo.com/2024/04/04/5706/
「3年遅れ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/24/4539/
「女性配慮の射出座席が」→https://holylandtokyo.com/2022/12/19/4065/
陰鬱で伏し目がちな雰囲気漂う日本のGCAP開発の世界
「米軍事メディアがGCAPを報じると」→https://holylandtokyo.com/2025/01/24/10678/
「英が踏みとどまる」→https://holylandtokyo.com/2024/11/12/6529/
「日英伊がやっと合意」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/
「英伊が日本に:逃げるな!」→https://halylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
ドローン攻撃の脅威で世界が震撼
「ウ軍の革新的ドローン遠方攻撃」→https://holylandtokyo.com/2025/06/06/11771/
「米軍F-16が懸命のドローン撃墜訓練」→https://holylandtokyo.com/2025/04/28/11366/
Stimson Center による当然の帰結レポート
「日本やグアムの滑走路には期待できず」→https://holylandtokyo.com/2025/01/06/10547/
米空軍関係者の本音は、
「幹部の発言:嘉手納には期待なし」→https://halylandtokyo.com/2024/05/22/5868/

