部隊提供は2023年予定から2024年夏に延期か
飛行制御ソフトと射出座席等の問題が障害に
事故多発の60年経過T-38練習機の後継遅れが・・・
12月12日米空軍報道官は、デジタル設計技術を駆使した迅速な開発&部隊配備をアピールし、2023年中に量産型の提供を開始するとしていたT-7A練習機について、飛行制御ソフト開発や射出座席開発のトラブルにより、量産型提供開始が1年程度遅れて2024年夏頃になる見積もりだと明らかにしました
2018年に5つの提案から「ボーイングとSaab」チーム提案が選定された次期練習機T-7Aは、使用開始から60年以上が経過して最近事故が多発している約400機のT-38練習機後継として早期配備を求められ、既存成熟技術を総動員した迅速開発の期待に相当程度答えてきましたが、完全に計画通りにはいかないようです
遅れの主原因とされた2つの問題の内、「飛行制御ソフト問題」はこれまでの原因究明とソフト改修で対処を終え、2023年第一四半期から飛行試験を再開する予定で、2021年末の試験で発覚したもう一つの「射出座席問題」も、一応の改善対策を行って2023年第一四半期から試験を再開するとのことです
T-7A練習機の射出座席は、従来の米空軍機の射出座席が60-70年代のパイロットの平均体格(結果として男性の体格)データから設計されていたところ、パイロット不足もあり、女性も含む空軍入隊資格基準を満たす者が搭乗できるように大幅な設計見直しを行っていた装備で、米会計検査院GAO等から「リスクの高い困難な開発」と以前から指摘されていた案件です
米空軍としては、1年程度の遅れであれば、これまで順調だったこともあり「誤差の範囲」としたいところでしょうが、機体平均年齢60歳以上のT-38練習機に最近4年間だけでも10件の重大事故が発生し、今年11月には胴体着陸と離陸直後の制御不能事案が2件連続する状況に余裕がないのが現状です。また稼働時間より整備修理時間が長い、維持整備面での部隊負担が重い点も重くのしかかっているようです。
デジタル設計技術は、実機による飛行試験や各種確認&開発期間の短縮とコスト削減、また開発段階における設計審査等のペーパーワークの削減面で大いに期待されており、T-7Aの遅れを持って「傷がつく」とは思いたくありませんし、B-21新型爆撃機もデジタル設計を大いに活用していることから、デジタル設計の発展応用には今後も楽しみに注目していきたいと思います(詳しいことを全く理解していませんが・・・)
まぁ・・・B-787や大統領専用機やKC-46Aで散々な目にあい、加えてコロナウイルスで瀕死の状態にあるボーイング社にこれ以上の負担は酷な気がすることもあり、T-7A練習機のトラブル早期解決と武運長久を祈念申し上げます
T-7A練習機(T-X計画)関連の記事
「デ設計技術で審査短縮や新規参入促進」→https://holylandtokyo.com/2022/08/23/3550/
「T-7に中東諸国も関心」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-20
「ボーイング提案をT-Xに採用」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-28
デジタル設計の旗手T-7A練習機開発が1年遅れへ
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