米国防省はウクライナの迅速新技術導入に学べ

戦前非効率の象徴だった「ウ」の軍事調達改革を教訓に
2名のRAND研究者が軍事メディアに意見投稿
米国防省の取り組みをより発展させ成果得る「ウ」

2月14日付Defense-Newsが、2名のRAND研究員の意見投稿「米国防省がウクライナの新技術導入に関し学ぶべきこと」を掲載し、ロシア侵攻前には鈍重で非効率の象徴で破綻必至といわれていたウクライナの軍事調達組織が戦時にスクラップ＆ビルドされ、安価に迅速にかつ効率的に民間企業の新技術を導入し、情報収集、ドローン活用、地雷除去誘導などに大きな成果を上げた教訓を紹介し、全てを真似ることはできないが学ぶべき点は多いと主張しています

2名の研究員は、ウクライナが露との戦争中に大量の新兵器技術を導入して上記分野で大きな成果を上げたことを「something of a surprise」だったと書き出し、戦前、ウクライナ軍事調達組織は旧ソ連の悪習を引きずった鈍重で不透明な組織で、国営企業UkrOboronProm（ウクライナ防衛産業）により支配されており、専門家は2021年時点でこの体制が崩壊寸前だと予測していたほどだったと振り返っています。

しかし2022年2月のロシア侵略以降、ウクライナはこの古い体制を即座に放棄して商業技術採用が迅速に進む形を導入し、例えば大量に保有していたソ連製のRKG-3対戦車手榴弾を、商業市場で見つけてきたドローンに取り付けてロシア軍への攻撃を始め、ドローンをこれまた迅速に自国開発ドローンに置き換え、自国で尾翼を改造したRKG-3手榴弾をロシア戦車や装甲車両に接近して投下可能にして大きな成果を手にしたと紹介しいます

投稿者はウクライナの軍事装備品調達改革の「最も革新的な部分」は、米国防省が2015年に創設した民間先端技術を迅速導入する組織「Defense Innovation Unit」を参考にし、ウクライナが立ち上げた「Brave1」との組織だと指摘し、

前線兵士のニーズを国内外の企業やスタートアップ技術者と迅速に結び付ける役割の「Brave1」は、短期間に新興企業等へ400件以上の助成金（総額約30億円）を支給し、それだけの額の投資で、上記情報収集、ドローン活用、地雷除去誘導などのほか、これら技術の効果を飛躍させたAIシステム開発（例えば企業Swarmer droneやthe Griselda intelligence systemによるもの）にも驚くほど効率的な投資実績を上げているとしています

このほかにもRANDの2名は、「新兵器や新技術の調達権限を小隊レベルに委譲することで配備を迅速化」や、「首都キエフにハイテク軍事産業の集積地を設立してシナジー効果による開発迅速化や効率化」にも成功したウクライナの事例を取り上げています

投稿者はこれらウクライナの実績を踏まえ、米国とウクライナの国情の違いから全てを教訓や参考にすることはできないにしても、米国防省の「Defense Innovation Unit」方式をまねした「Brave1」が多大な成果を上げている現実やその運用方式を謙虚に分析し、その驚くべき成果から素直に学ぶべきだと主張しています。

そして、既に米議会でも提案されているFoRGED (国防における改革と政府の効率化の促進) 法案など、軍事装備品の迅速開発と配備に重点を置く国防省の新機関の設立、既存開発計画の迅速な修正を可能にする制度導入、調達合理化法のより厳格な施行など、各方面の動きをうまく融合し、「米国の現状に沿ったウクライナの教訓活用」を訴えています
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2月14日から独ミュンヘンで開催され、バンス米副大統領やルビオ米国務長官を含む世界の安保関連首脳が集まった会議では、「ロシア・ウクライナ紛争の終結」に向けた議論が注目を集めていますが、安保・軍事関係者にとっては、ウクライナが取り組んだ民間技術の迅速な前線への投入は、きわめて大きな示唆を提示していると思います。

当ブログではこれまでも、以下の過去記事で取り上げたウクライナ開発の「音響ドローン探知システム」や「軍用ヘリ攻撃へのドローン活用」を取り上げてきましたが、この話題に関しては、今後もフォローしたいと思います

ウクライナ軍の戦時緊急開発
「NATO感激の音響ドローン探知システム」→https://holylandtokyo.com/2024/10/24/6355/
「小型ドローンで軍用攻撃へリ撃墜」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/
「世界初の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/