ロッキードが秘密兵器用の新工場開設

数々の秘密兵器を生み出した伝説の加州スカンク工場内
自由迅速にレイアウト変更可能で多様少量生産にも対応狙う

Skunk Works New.jpg8月10日ロッキード社が、加州PalmdaleのSkunk Works(スカンク工場)内に24000平方メートルの巨大な秘密プロジェクト用の新工場を開設したと発表し、記者団や関係者への「ちらりお披露目会」を開催しました。

Skunk Works(スカンク工場)は、かつてU-2高高度偵察機、SR-71超音速偵察機やF-111初代ステルス攻撃機開発を担った「秘密プロジェクトのメッカ」で、75周年を迎えた伝統&伝説の工場ですが、この新施設がどんなプロジェクトを担うのかをロッキード側は非公開としており、10日の「ちらりお披露目会」以降は「関係者以外立ち入り禁止」の施設となる模様です

Skunk Works New6.jpg同社担当副社長のJeff Babione氏は細部には言及せず、戦闘機、ISR機、極超音速兵器やその他最先端プロジェクトに関わることになるだろうと述べるに留まり、NGAD(次世代制空機:Next-Generation Air Dominance)とのかかわりについても質問に答えなかったようです

以下では、Skunk Works(スカンク工場)内に設けられた新施設:米空軍整理番号「Plant 42 complex」のコンセプトと設備概要をご紹介し、米軍事産業が直面している課題の裏返しとなっている状況をご紹介としたいと思います

11日付米空軍協会web記事によれば
(Babione担当副社長の説明によれば)
Skunk Works New7.jpgこの施設はロッキード社が今年開設予定の4工場の中の一つで、恒久的な設備配置をせず、言わば床に固定する設備がない「intelligentでflexibleな施設」であり、製造製品に応じて、効率的な装置の配置が柔軟に可能な仕様となっている。この考え方は従来のテキサス州Fort Worth工場(F-35製造)など特定製品を生産する工場施設とは根本的に異なる
施設の広大なフロアーは自由な設備配置を可能にしてあり、「製造ロボットのところに材料や部品を持っていくのではなく、ロボットが仕事のある場所に移動する」イメージで使用され、朝施設の西側で作業していたロボットが、午後には東に移動して動作する従来とは全く異なるコンセプトを採用し、同時に自動化度合いを大幅に増やしている

使用するロボットは民生用の汎用タイプで、ソフト組み換えで多様な仕事が可能で、特定の仕事専従機材ではない。展示している重量約1.3トンのロボットは、車輪やエアクッションで柔軟に移動することを想定している
Skunk Works New2.jpg複数のロボットは互いに「対話」するよう設計されており、切断速度、ドリル穴の精度具合などの情報を互いにやり取りして調整する機能を備えている。またロボット間や従業員間のデータ共有を容易にするため、秘密プロジェクト施設としては初めてWiFi使用を可能とし、同時に工場内のペーパーレス化も進めている

基本的に本施設は最終組み立てをメイン作業とする予定で、ベンダーから納入された部品の検査などもレーザー測定器をネットワークに組み込んで迅速化し、自動システム内で発生したトラブル対処も、迅速な情報共有で促進される
施設内の空調には最新設備を投入し、設定温度の2.5度以内に施設内全ての場所が収まるように設計されている。これは複合素材から鉄、アルミ、チタンなど、多種多様な材料からできている各種部品の状態を、設計段階の前提条件で組み立てるためである

膨大な空調施設の運用には、施設に近傍に開設予定の大規模ソーラー発電施設から電力をが供給する計画で、現在加州やPalmdale行政区と許可取得に向けた調整を進めている
Skunk Works New5.jpgこれら自動化や柔軟な設備配置を可能にしたことによる生産性アップ程度について、現時点で数字を挙げて説明はできないが、設計から製造に至る全ての工程で効率化が図られ、顧客から強い要望がある「コンセプト具現化までの時間短縮」や「ライフサイクルの加速」に貢献できると自負してい

現在の他施設では不可能だが、この施設では特定の一つの製品に特化するのではなく、同じ体制で複数の多様なアセットに同時に取り組むことが可能となり、少数生産品種と大領生産装備の同時進行も想定できる。極超音速兵器の大規模生産と他の少量製品の組み合わせなどの可能性がある
雇用拡大の面から地域にも貢献できる。この施設は新たに450名の雇用を生む計画であり、テキサスのFort Worth工場やジョージアのMarietta工場を含めると、2017年以降で雇用が3倍に増え5600名規模になる予定である
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精密数値工作機による多品種少量生産やプログラム変更による他製品の製造などは、既に民間製造部門では以前から実現されている形であり、構内での柔軟なレイアウト変更やデータ共有のネットワーク化も民間企業が10年以上前から取り組んできたように思います

Skunk Works New4.jpg最新兵器の特異性や細かな国防省独自の規定など、自動化や柔軟な生産体制構築を難しくしている要因もあるのでしょうが、軍需産業側のコスト意識が希薄だったことも否定できないでしょう

これだけではSkunk Works(スカンク工場)が真に最先端工場になるのかよくわかりませんが、多いに稼いでいるLockheed Martin社で、今後への期待も高いのでご紹介しておきます

米国軍需産業の分析レポート
「混乱に乗じた中国資本の浸透警戒」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-26
「2019年世界の軍需産業TOP100」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-23
「2019年版 米国防省軍需産業レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
PalmdaleではNorthrop Grummanも
「RQ-180のその後?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-06-13-1
「特ダネ:謎の無人機RQ-180とは?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09

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