米空軍改革の柱「Integrated Capabilities Command」を語る

2024 年末までに米空軍改革の中核として創設
当面は数百名が現勤務場所からリモート勤務
メジャーコマンド縦割り排除&知見融合を目指し

Allvin18.jpg5月1日、Allvin 米空軍参謀総長が記者団に、2月中旬に発表された米空軍大改革アクションの目玉、「2024年末までに Integrated Capabilities Command 創設」について現在の検討状況を語り、当面は発足時約 5-800 名の同コマンド配属兵士が前所属の各コマンドや部隊所在地から「リモート勤務」する形とし、前所属部隊との橋渡しをしつつ、空軍内の「縦割り」問題を解消に取り組む方向であることなどを明らかにしました

この「2024年末までに Integrated Capabilities Command」を創設する件は、Kendall 空軍長官の2年半に渡る長官経験と、50年近くの国防省での装備要求構想作成や兵器開発管理経験を踏まえた集大成的改革であり、兵器開発における要求性能取りまとめと開発管理を、戦闘・空輸・GS コマンドから切り離し、長期的視点から専従で行う新設コマンドに権限集中して実施させる決断です。

言葉を換えれば、装備品の導入構想や要求性能や開発管理専従の「将来体制を検討する専門コマンド」を中将トップで創設し、戦闘・輸送・GS コマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討の中心から距離を置かせることを狙いとしています

Allvin 米空軍参謀総長が1日記者団に
Allvin19.jpg●人員数については細部検討中だが、発足当初は500-800名の所属兵士が米空軍組織の各所、つまり「satellite locations」からリモート勤務することを想定している。新コマンド創設は慎重のあまりスローすぎては逆戻りする恐れもあり、年末までの創設にむけ検討を進めているが、新司令部をどこに配置するかの決定は急がない。
●数百名の人間が一度に大規模移動することは、地域経済への影響もあり政治マター化する恐れがある。また今回の空軍改革が、当面既存予算の範囲で遂行することを前提としていることもその背景にある

Allvin22.jpg●新コマンド構成員の多くは他のメジャーコマンドから差し出されることになるが、詳細を現在煮詰めている。ただ差出元である各コマンドとの連携低下を避けるため、皆が一つの新コマンド施設に集まって勤務することは想定していない。Kendall 空軍長官が2月に発表したように「縦割り」を避けつつ、連携強化を図りたい
●テンポが加速している技術進歩に追随し、空軍内各所に分散している知見を集約し、将来装備体系の検討や具体的装備品の要求性能決定に生かし、既存装備品のアップグレード改修を迅速に行える体制を整えたい。この際、現在は戦闘・輸送、GSコマンド等が各使用装備品だけのことを考えて突猛進しがちだが、今後は新コマンドが空軍全体を見渡して適切に資源配分や装備導入判断を行う体制としたい

Allvin9.jpg●例えば「Rapid Dragon program」計画では、パレタイズされた長射程巡航ミサイル JASSMを輸送機から「投下&発射」したが、これは輸送コマンドとGSC の垣根を超えた試みであり、予算的制約が厳しさを増す中で米空軍が開拓追及すべき手法である
●新コマンド司令官となる少将は、米空軍でも最も重要な役割を担うポストの一つになるが、具体的 人選は今後の検討事項でもある
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Allvin 空軍参謀総長は、大きな発言力を持つ戦闘機や爆撃機パイロットではなく、輸送機パイロット出身のテストパイロットとしてC-17 開発等に従事した経歴を持ち、その後は戦闘機パイロット昇進コースでない多様なキャリアの中で「実務家」「仕事人」としての評価を高め、現ポストに上り詰めた人物です

Kendall 8.jpg「Integrated Capabilities Command 創設」のほか、「戦闘・輸送・GS コマンドの即応体制強化」や「ACE 構想に対応可能な人材養成」などを柱とする空軍大改革(以下の過去記事参照)は、Kendall 空軍長官の剛腕が原動力となり打ち出された改革ですが、大統領選挙以降は長官の交代が予期され、実質的に改革は、輸送機パイロット出身 AlIvin 空軍参謀総長と特殊作戦機MC-130 操縦者出身のSlife 副参謀総長の手腕にゆだねられることになります

Allvin空軍参謀総長をご紹介
「Allvin大将の経歴など」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/

米空軍が大改革アクションを発表
「大改革の概要発表」→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/
「前段階:米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

この改革に向けた米空軍首脳の推薦図書など
「米空軍制服トップが推薦図書等を公表」→https://holylandtokyo.com/2024/01/31/5473/
「Kendall空軍長官の推薦図書19冊」→https://holylandtokyo.com/2023/06/19/4736/

輸送機からの兵器投下検討
「巡航ミサイル投下&攻撃試験」→https://holylandtokyo.com/2021/12/20/2550/
「Rapid Dragonを本格検証へ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/06/380/
「兵器投下に反対」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
「空軍計画部長が語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/09/619/
「MC-130からパレタイズ兵器投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-01

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