コロナで2020年3月から両国合意で現地査察中断も
2022年夏に査察再開要望も露が継続拒否
両国による条約協議委員会開催も露が拒否
2011年の同条約発効以降で初の不履行訴え
1月31日、米国防省が米議会に戦略兵器削減条約(New START treaty:2011年発効、2021年1月に26年までの延長に期限ぎりぎり露が合意)の状況に関すレポートを提出し、同条約締結以来初めて、ロシア側が現地査察に応じず、かつ同条約に関する協議委員会(Bilateral Consultative Commission)開催を拒否し、同条約不履行状態にあると訴えました
現地査察に関しては、2020年3月にコロナ感染を受け、米露両国の合意に基づき当面中断することになっていましたが、米国が2022年夏に査察再開を提案してもロシア側がコロナを理由に引き続き拒否している状態で、米国務省はこれを露のウクライナ侵略に対する西側制裁への反発に過ぎないと非難しています
また、米側が査察問題をロシアと協議するため、条約が規定する「Bilateral Consultative Commission」の開催を露に要請したところ、2022年11月には一端同意する姿勢を示したものの、後に拒否して現在に至っており、更なる条約違反だと米国務省は訴えています
米国務省報道官は、「米国は完全に同条約を履行すべく、いつでも建設的にロシアと行動する用意がある」と述べ、ロシアが同条約維持のため、違反状態を解消するよう促しています
これを受け米議会では、政権与党の民主党議員である上院軍事委員長、上院会合委員長、上院インテル委員長が「我々はNew START条約の初度締結時からロシアとの軍備管理を支持し、同条約の延長にもトランプ&バイデン両政権下で賛同応援してきた。ただし今般の状況に鑑み、同条約の順守が、将来のロシアとの戦略兵器軍備管理を上院で考察するにあたり極めて重要な意味を持つことを、明確にしておきたい」と訴えています
また共和党の有力議員(下院軍事委員長、同委員会委員2名、下院戦略兵器小委員長)はより厳しい姿勢の声明を出し、「ロシアによる査察拒否は条約のより大きな履行違反につながる可能性が高く、米国は戦略核増強に備えるべきだ」、「バイデン政権は国防省に対し、ロシアが条約上限を大幅に超える核弾頭を展開することに備えるよう、準備指示を出すべきだ」と主張しています
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いつものロシアのやり方ですが、2026年の同条約有効期限まで、のらりくらりと米側の核兵器強化の動きを封じつつ、ロシアは時間を稼いでコッソリ核弾頭や核兵器の増強を図る道を探るのでしょう。
ウクライナ侵略に伴う西側の制裁で瀕死状態のロシア経済ですから、核弾頭や核兵器の増強どころか、核兵器の管理事体がしっかりできているのかが心配になりますが、米議会内で温度差は多少あるものの、超党派でロシアに厳しい目が向いていることに安堵しておきましょう
新START期限切れ寸前延長
「露が土壇場再延長合意」→https://holylandtokyo.com/2021/01/23/305/
「ドタキャン後に延長表明?」→https://holylandtokyo.com/2020/10/19/435/
「延長へ米露交渉始まる?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/20/730/
「中国は核兵器管理条約を拒否」→https://holylandtokyo.com/2020/07/13/570/