中国外務省:明確に核兵器管理条約を拒絶

中国が協議に応じる可能性を明確に否定
中国参加の可能性を匂わせる米国側発表を厳しく批判

Lijian.jpg10日、中国外務省報道官は、2021年2月に失効する米露2国間の新START条約の延長協議に関し、同条約の単純な延長ではなく、新たな米中露の3か国条約への拡大を狙っている米国に対し、中国がそのような条約への拒絶姿勢を明示しているにもかかわらず、中国に参加の可能性があるかのような情報を流布している米国を、「不誠実だ」と厳しく批判しました

新START条約は米露間(オバマ政権時)で2011年2月5日に発効したもので、双方の戦略核弾頭上限を1550発とし、その運搬手段である戦略ミサイルや爆撃機配備数上限を700に制限する条約です。有効期限は10年間で、最大5年の延長を可能とし、条約の履行検証は米露両国政府による相互査察により行うこととなっています

New START.jpg核兵器管理の条約には新STARTとINF全廃条約がありましたが、1987年12月8日に米露が署名し、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するINF全廃条約は、ロシアが条約を履行していないとして、トランプ政権が2019年8月2日に破棄通告しています

INF全廃条約破棄を受け、新START条約が核兵器管理の唯一の枠組みとなったことから、多くの専門家が同条約の延長すべきと主張していますが、トランプ大統領は本条約を「オバマ時代の悪いディールだ」と呼び、新START条約の延長はせず、中国も含めた米中露の3カ国で核兵器管理の合意を追及すべきだと発言しています

一方ロシアは、プーチン大統領が新START条約の延長を提案し、延長協議の中で露の最新ICBM等も議論の対象にする準備があるとの姿勢を示していますが、トランプ政権の露中米3カ国取り決め追求については、米露と比較して少ない核兵器しか保有しない中国が、保有核兵器削減を求める可能性のある議論を拒んでいる現実を踏まえて「非現実的だ」と距離を置いています

Putin-decree.jpgロシアが「議論の対象にする準備がある」と誘い文句にしている最新兵器の一つは、開発中の「Sarmat」(Satan2:RS-28)で、弾頭10-16個搭載し、音速の20倍で飛翔してミサイル防衛網を突破可能といわれる射程11000kmの新型ICBMで、北極圏経由のみならず、南極経由で米国を攻撃可能とロシアが明らかにして米国を仰天させた新兵器です。ロシア系研究機関が「10発で米国の全国民を殺害する威力がある」との試算も発表しています

更にAvangard超超音速兵器は、通常弾頭と核弾頭の両方を搭載可能で、大気中を音速の20倍以上で飛翔して敵の探知や迎撃兵器を無効化する兵器で、2019年12月に配備を開始するとプーチン大統領が発表した兵器で、米国には防御手段がない兵器です

最新兵器を条約延長協議の枠に入れることをチラつかせ、新START条約延長を提案するロシアの姿勢には、米側のミサイル防衛やICBM・超超音速兵器への「足かせ」を狙う下心などが見え隠れし、素直に喜べないところですが、このあたりで長かった前置き概要説明を終え、今日の話題であるもう一つの軸・中国の反応をご紹介します

10日付Military.com記事によれば
Arms Control China.jpg10日、中国外務省Zhao Lijian報道官は定例記者会見で、中国が核兵器管理条約の議論を明確に拒否しているにもかかわらず、米国側が条件次第で中国が議論に加わるとの情報を流布させ報道させていると厳しく非難し、改めて核兵器軍縮条約に加わる意思はないと記者団に語った
本件に関しては8日にも、中国外務省軍事管理部長であるFu Cong氏が、中国は米露と比較して極めて少数の核兵器しか保有していないことから、更なる保有兵器削減を要求するような条約に加わることは「非現実的:unrealistic」だと述べ、米国は自らが新START条約を延長しない口実を作るため、中国を誘っているに過ぎないと米国の姿勢を非難している

中国外務省報道官は、「米国の本件に対する姿勢は、真剣さもなく、誠実さもない。そんなことをしているくらいなら、ロシアからの条約延長提案に対応すべきだ」と批判し、「3か国条約案に対する中国の反対姿勢は極めて明確であると述べ、
2週間前にウィーンで行われた米露間の同条約関連協議に中国が参加する意思が全くなかったにもかかわらず、米側が「核軍縮交渉に第3国が加わる環境を整える必要がある」との報道を流し、中国が条約に参加する可能性があるかのような誤情報を拡散していると非難した
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DF-26.jpg中国外務省軍事管理部長の言葉「米国は自らが新START条約を延長しない口実として、中国を誘っているに過ぎない」が、現時点では一番説得力がある説明に聞こえます。トランプ大統領にとっては新START条約も、2019年8月に破棄通告したINF全廃条約と同程度の位置づけなのかもしれません

中国に関していえば、IISSの分析「米国がINF条約で禁じられていた兵器を開発してアジア太平洋地域への配備を示唆しても、中国を軍備管理のテーブルに着かせることはできないだろうとし、同時にまた、米国が同兵器開発や配備を控えたとしても、中国が軍備管理協議に興味を示すとは考えにくい」が残念ながら現実ですし、香港や尖閣周辺で中国が見せる最近の露骨な姿勢からも、コロナでの世界の混乱を攻勢のチャンスととらえた中国を止めることは容易でない・・・ということです

China-USA.jpgIISSの分析は更に米国が中国正面の西太平洋地域に巡航ミサイルを配備しようとしても、同ミサイルの配備先となる国々に中国が様々な圧力をかけるだろうから、配備自体が極めて困難だろうとも予測していました
混乱の米国は、新STARTの延長協議をどう収めるのでしょうか?

新START期限切れ関連
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:米国による対中国巡航ミサイル導入は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09
ロシアの兵器開発とINF条約関連経緯
「第3の超超音速兵器Zircon」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「トランプが条約離脱発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露は違反ミサイルを排除せよ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-06
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

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