F-35エンジン問題にGE社とP&W社が異なる主張

共に2016年からAETPエンジンを開発するライバル同士
GE社がF-35エンジン換装を強く主張するも
P&W社はAETPへの換装に反対で現F135改修を主張

AETP XA-100 2.jpg9月12日、2016年から次世代戦闘機用エンジン開発計画AETP(Adaptive Engine Transition Program)にそれぞれ取り組んでいる2社(GE社とP&W社:米空軍と契約)の一つGE Aviation社が、テネシー州にある米空軍の開発施設(AEDC)で3月から8月にかけ実施していた同社製XA100エンジンの性能確認試験をクリアし、契約が求める大きな関門を突破し本格的な開発製造段階に向けた大きな一歩を達成したと発表しました

AETP 5.jpgAETPに関しては繰り返しご紹介しているように、現在使用されているF-35用エンジンF135(Pratt & Whitney製)のエンジンブレード耐久性が想定より低く、機体稼働率低迷と維持整備コスト増の大きな要因となっていることから、次期制空機NGAD用に開発中のAETPエンジンをF-35にも応用開発して搭載するか、現F135エンジン改修を行うか、現F135エンジンの維持整備体制等を強化して「しのぐ」か等の選択を迫られている状態にあり、本日もF-35エンジン問題対処関連でご紹介しているものです

AETP XA100.jpgGE社は発表声明で、「わが社はAETPエンジンXA100の設計開発段階に進む準備を完了し、F-35に2020年代末までに同エンジンを提供する準備を確立した」、「この試験は、本格生産AETPエンジン変わらない規模重量の試作エンジンに対して行われ、F-35(Block 4)に対し、現装備エンジンより航続距離3割増し・推力2割推力増しのエンジン提供が可能なことを示した。わが社のXA100は米空軍の目指す性能を満たした唯一の戦闘機エンジンとなった」と自信を示しました

AETP XA-101.jpgこのGE発表に対し、同じくAETPエンジン開発を行っているPratt & Whitney社は、同社のAETPエンジン(XA101)開発は計画通り進んでいるとの声明を発表すると同時に、AETPは開発の本来目的である次世代制空機NGADへの搭載が最適であり、F-35への搭載は推奨できず、F-35のP&W社製F135エンジン問題に対しては安全リスクや価格から、F135改修案(EEP:Enhanced Engine Package)が最適だと主張しています

以下では、GE社とP&W社の主張の違いをご紹介
(論点はかみ合っていませんが、各種報道より)

GE社の主張
AETP XA-100.jpg●AETPエンジン(XA100)搭載により、航続距離30%増、推力20%増以上の性能向上得られ、また機体への電力供給余裕も生まれて、対中国等の想定環境に必要な能力提供が可能となる
●単発エンジン機であるF-35のエンジン換装に関し、安全リスクを指摘する意見があるが、同じ単発エンジン機で世界的ベストセラーの戦闘機F-16でも、当初P&W社製だったエンジンを、後のバージョンでGE製に換装した経験もあり、問題がないことを示している

P&W社の主張
f135 EEP.jpeg●F135エンジン改修案(EEP:Enhanced Engine Package)は、最も迅速に、費用対効果良く、低リスクでF-35(Block 4)の要求性能を提供でき、同時にライフサイクルコストを5兆円抑制する案である
●単発エンジン機であるF-35に、今になってエンジン換装を行うのは極めて安全上のリスクが高く、かつ高コストである。また垂直着陸型F-35BにはAETPは搭載できない。(問題はあるが)F135エンジンは既に100万時間の飛行実績を重ねた頼れるエンジンである。
このようなエンジン換装を持ち出すことは、F-35導入決断した同盟国等との関係にダメージを与えることになる

Kendall SASC3.jpg注・・・AETPコストはKendall空軍長官によれば、AETPをF-35に搭載するには開発費等初期投資とエンジン調達費に約8000億円必要で、F135エンジン改修EEPオプション費用の3倍で、ライフサイクルコスト換算だと4兆3000億円も現エンジン改修より高価
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F-35エンジン問題をしつこく取り上げているのは、米空軍を中心とした米軍予算への影響が極めて大きいこともありますが、P&W社も持ち出している「F-35導入決断した同盟国との関係へのダメージ」が気になるからです。

F-35 Singapore6.jpgこのままだと、F-35導入機数で米国に次ぐ機数になりそうな日本への影響が気になるからです。「もう、F-35のことを取り上げないでくれ・・・」とのコメントを頂くことがありますが、日本の限られた防衛予算を考えると、F-35への投資が極めて大きな負のインパクトを与えることは、コメントされた方ご自身が一番わかっていらっしゃると思います

引き続き生暖かく「亡国のF-35」を見ていきたいと思います。

F-35のエンジン問題
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/

次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/

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