臨時ニュース
エスパー国防長官がトランプ大統領に解任され、臨時国防長官にChristopher Miller国家対テロセンター長が就任すると大統領がツイートで発表→https://www.defensenews.com/pentagon/2020/11/09/esper-fired-as-secretary-of-defense/
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今後、山のように出るであろう予想分析の一つです
上院をどちらがとるかにもよりますが・・・
7日付米空軍協会web記事が「バイデン政権誕生は国防政策にとって何を意味するのか?」との記事を掲載し、広く浅く、国防政策における変化を複数の専門家の意見を交えて紹介していますので、とりあえずご紹介しておきます
国家防衛戦略NDSで示された方向も、予算枠も大きく変わらないだろうし、変えようもないとの大枠の見方ですが、最新技術や無人システム追求は変わりない一方で、海外派遣兵力の見直しが予期され、核兵器や宇宙軍やF-35などの扱いの優先順位が下がるかもしれいないとの分析を紹介し、イラン核合意やオープンスカイズ条約への復帰や、新START条約の5年延長に進むだろうと予想しています
気になるのは上院を共和党が守るか、民主党多数になって下院とのねじれが解消されるかですが、現時点で48-48議席で、残り4議席(North Carolina, Alaska ,Georgia2つ)は1月まで決定しない模様で、同点の場合は副大統領が一票入れる仕組みなので予断を許しません。また、共和党議員の中には民主党員的な投票行動をとる議員もいて混迷度合いが深まっているのが現状らしいです
誰のコメントか細かく区分して紹介していませんが、Michael O’Hanlon、Lawrence Korb、Thomas Spoehr、Todd Harrison、Gordon Adamsのコメントです。とりあえず、広く浅くご紹介して置きます
7日付米空軍協会web記事によれば
●厳しい財政状況はだれが大統領になっても変わらず、トランプ大統領自体もフラットな国防費を予言していたところであるが、バイデンがどれだけ国防費削減に取り組むかには意見が分かれている
●民主党のサンダースやウォーレンのような10%カットに取り組むことはないし、現実に大統領になれば、米軍が直面している厳しい情勢や装備品の状況を目の当たりにし、想像以上に厳しい状況に驚くことになろう。オバマ大統領1期目も、国防費削減を予言しながらそれほどでもなかった経緯もある
●米議会との関係では、Adam Smith下院議員が米議会とバイデン政権の橋渡し役を果たすことになろう。ちなみに同議員は核抑止関連予算の削減を主張している
●同議員はまた国家防衛戦略NDSを「中露との危険で不必要な冷戦へのレシピ」と酷評しているが、多くの専門家は、バイデン政権が新戦略を打ち出しても「great power competition」との強い表現を引っ込めるくらいで、方向性は変わらないと見ている
●現在の国家防衛戦略NDSが重視する、同盟国との協力強化や打撃力の強化や国防省の業務改革は同じだろうし、極超音速兵器など最新技術兵器の追求、自律性のある無人システム重視も変化ないだろう。あえて言えば、人道支援活動の増加やトランスジェンダー兵士の受け入れ、更に人権問題がある国への武器売却規制強化は考えられる
●中東やアフリカでは、外交政策を重視すると打ち出し、米軍派遣兵力削減を主張する左派の声が力を持つ可能性はあるが、特殊作戦部隊は残るだろう
●欧州派遣ローテーション戦力の扱いは微妙である。5年前と比較してロシアとの緊張は低下しており、継続している陸軍旅団のローテーション派遣を止め、少数のポーランド駐留米軍に変える道もあり得る
●中東では、バーレーン、クウェート、サウジからの兵力削減も可能性があるが、この辺りは上院議員選挙の結果が大きく影響する可能性がある。またドイツと韓国駐留米軍の削減に関しては、共和党内でも異論が多いことから、政権交代後に見直しの可能性がある
●装備品への投資関連では、極超音速兵器や無人システム重視する代わりに、核兵器近代化関連予算や米陸軍兵員、空軍のF-35調達数、新型爆撃機の調達ペース、ICBMが削減の対象になる可能性があり、現在の宇宙軍への投資構想も見直しの対象になる可能性がある
●上下院のねじれ状態が継続した場合でも、拮抗した勢力となることから、共和党側は海軍予算やF-35予算を死守するため、核兵器関連を妥協の余地がある分野として差し出す可能性がある
●バイデン政権になっても、低出力核兵器や潜水艦発射の核搭載巡航ミサイルの扱いについては、両党の対立が続くだろうし、ICBMや空中発射型核搭載巡航ミサイルについても議論があろう。しかし、機会があったオバマ政権時代にも手を付けなかった問題であり、そのまま議論だけ続き現方針で進む可能性が高い
●新しい核体制見直し(NPR)で、ICBMの配備数400発を削減する可能性はある。ただし、中露と何らかの合意がない限りは動きにくいだろう
●新START条約の延長にバイデン政権は署名したがるだろう。トランプ政権がとりあえず1年延長でロシアと合意し、バイデン政権に引き継ぐだろう
●バイデン政権は、イランとの核合意(Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA))やOpen Skie条約に復帰すると考えられ、ロシアとの新たなINF条約を目指す可能性もある
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次の国防長官の「最有力候補」がフロノイ元政策担当国防次官で、女性初の国防長官になるとの線で記事は書かれていますが、政権移行チームの立ち上げがあったばかりで具体的な情報はありません。
一応記事は、共和党の上院議員だったMartha McSally元A-10飛行隊長(大佐で退役、現役時に上官にレイプされたと議会で発言し注目浴びる)と、元陸軍士官のTammy Duckworth上院議員(民主党)の名前を「その他の候補者」として挙げています。今後に注目です
いずれにしても中国の軍事力増強の勢いはすさまじく、限られた予算と時間と戦術の中、今から中国の動きに大きな変化があるとも考えにくく、米国防政策に大きな変更は難しいのが現状でしょう。
バイデン政権の国防長官最有力候補
初の女性長官誕生か:フロノイ女史関連
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「強制削減下の国防」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-06-18-1
「ヘーゲル長官の後任を打診されたが」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-11-25
「フロノイ次官の退任」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-13
「フロノイのアジア政策授業」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-30
「死に体:エスパー国防長官と後任候補」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-31