年度毎の稼働率推移(前年10月から9月末まで)
71.4%→68.8%→56%→51.9%(2023年度空軍)
10%改善目標の取組「War on Readiness」も2.6%成果で
10月21日付DefenseOneは、米会計監査院GAOの米軍主要作戦機の稼働率調査レポートを取り上げ、米軍の主要作戦機15機種の中で、軍が掲げた2023年度目標稼働率を達成した機体が「ゼロ」で、2018年度以降現在に至るまでで目標を達成したのは、F-15CとF-16Cが共に僅か半年間だけ達成したに過ぎないとの悲惨な状況を報じています
また同記事は、特に多額の維持整備費(過去6年間で約1.8兆円)をつぎ込んでいるF-35の状態を会計検査院が問題視し、過去1年間にわたり国防省F-35計画室が10%の稼働率改善を目標に集中的に展開した「War on Readiness:稼働率との闘い」プログラム(2024年3月まで)にもかかわらず、最新の統計では3軍F-35トータルで稼働率は目標に遥かに及ばない2.6%改善にとどまり、55.7%となっていると紹介しています
国防省F-35計画室のMichael Schmidt室長(空軍中将)は、「War on Readiness:稼働率との闘い」で稼働率改善のため対処した稼働率低下要因「トップ40」項目のうち、21項目で大きな改善を実現したが、低下要因の2つの主要課題が手付かずで、依然F-35の即応性を低下させていると説明しています。なお4月に同室長は米議会で、この2要因(具体的内容は非公開)を克服すれば、稼働率70%以上が可能と証言しています
また同室長は「稼働率はまだ必要な水準に達していないが、そこに到達するための道筋を示す要素をシステムに組み込んだと思う」とコメントしていますが、F-35は長年、大規模整備施設での整備の遅れ、スペアパーツの不足、請負業者への過度依存、修理技術データへの現場整備員のアクセス困難など、様々な維持管理上の問題が指摘されており、米議会は2年前に、現在も維持整備統括を続けているロッキード社から、業務を2027年までに国防省が引き継ぐよう法律で義務付けたところです。
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ちなみに、ここでの稼働率とはあくまで、「複数ある当該機種に期待される任務のうち、“少なくとも1つ”の任務を遂行できる時間の割合」を示すものであり、空中戦任務だけが可能で、近接航空支援CASや対地対艦攻撃(航空阻止)や敵防空制圧SEAD等の重要任務が不可能なF-35やF-16やF-15Eも、「稼働状態」とカウントされる「甘々基準」だということを付言しておきます
イスラエル・ハマス紛争や、露中偵察機や爆撃機による偵察&示威飛行の活発化により、米軍作戦機の出番が増加して機体酷使が続く中ですが、厳しい予算から維持整備費への充当が難しいのが現状で、今後も稼働率が向上する見込みはありません。さみしい限りですがこれが現実です
F-35や米空軍機の稼働率低下問題
「F-35稼働率3年連続急降下」→https://holylandtokyo.com/2024/07/18/6077/
「米空軍機稼働率22年と23年比較」→https://holylandtokyo.com/2024/07/03/5968/
「20年と21年の比較」→https://holylandtokyo.com/2021/12/07/2465/