第1弾:トランプ政権の国防政策を考える

前回のトランプ政権最後の国防長官が語る
トランプ政権への提言「プロジェクト2025」中心人物が

Project 2025 2.jpg11月7日付DefenseOneが、来年1月に発足するトランプ政権の国防政策を占う一つの視点として、トランプ政権誕生を想定してヘリテージ財団が2022年から2023年かけ実施した大規模な政策提言企画「2025 Presidential Transition Project」において、国防政策分野の取りまとめを担当したChristopher Miller氏(前トランプ政権で最後の国防長官:正確には国防長官代理)へのインタビュー記事を掲載していますので、この種の記事紹介の第1弾として取り上げます

Miller C2.jpgMiller氏は混乱のトランプ前政権終末期の2020年11月から21年1月までの3か月だけ「国防長官代理」を務めた人物で、2014年に陸軍特殊部隊大佐で退役(50歳)し、民間企業を経たのち、2018年から国家安全保障評議会NSCの対テロ担当大統領特別補佐官、2020年1月から特殊作戦担当の国防次官補代理、その後次官補に昇進、2020年8月から国家対テロセンター長を務めていた経歴の人物で、細部は末尾の過去記事をご覧ください

以下ではMiller氏発言の概要の概要をご紹介
●軍事革新の推進に関し
Project 2025.jpg・最新の技術や作戦運用の革新を現状よりはるかに迅速に進めるため、前線部隊からの「ボトムアップ」や「分散型イノベーション」を重視する
・そのためにイノベーション基金を設け、米軍全軍の数百人規模部隊単位に配分し、監察官により同資金の使用法を厳しくチェックさせつつも、軍の中間指揮層にはびこっている「リスク回避文化」を突破して現場のアイデアを生かしたい

●非正規戦や特殊作戦能力に関し
・米軍全体で特殊作戦部隊削減の動きがあるが、この動きを阻止し、非正規戦が今後ますます重要視されるだろう南米、中米、アフリカを特殊作戦軍の主担当地域とし、他の米軍主力部隊は中国と対峙するインド太平洋軍と、ロシアと対峙する欧州軍等に集中させる
・このアイデアは2001年の中東紛争初期頃から米国防省内で真剣に議論された案だが、当時は911同時多発テロの混乱の中で、大きな変化を避け、自身の特権や権限が縮小されることを恐れた地域コマンド司令官等の強い反対もありつぶされた構想である。今なら当時より自然にこの構想は受け入れられるだろう

●インテリジェンス組織
Project 2025 4.JPG・SNSやネット上での個人レベルでの情報発信が活発になる現在社会の必然として、公開情報インテリジェンス能力の充実が不可欠である。この分野はまだまだ縦割りのサイロの中での活動状態が見られ、改革が必要だ
・急速に変化する地政学的機に対応するため、国防情報機関と特殊作戦部門が一体となってインテリジェンス活動を強化すべき。既に10年前から提唱されている特殊作戦軍の一部を準情報機関に転換する案の採用も現実的な案として考えるべき。特殊作戦軍の情報活動への関与に、反射的な不安感を抱く米国民もあろうが、心配には及ばない

●宇宙及び戦術核兵器
・宇宙に関し、現在国防省は宇宙アセットの生存性確保のため、安価な低軌道衛星の大量配備に動いているが、それだけでは不十分で、宇宙の兵器化を制限する条約を考慮し推進する必要がある。サイバー分野でも同様だ
・「Project 2025」報告書が、白熱した議論の末に「戦域レベルでの新たな能力を含め、必要な規模や洗練度を備えた核兵器開発」を提言しているように、低出力戦術核兵器の追加保有を検討する必要がある

●州 兵
Project 2025 6.jpg・大都市の不法移民を排除して国外追放するための部隊として、他の州の州兵を州知事の意向に反して派遣する一部共和党政策立案者の案には否定的
・一方で、不法移民の流入を防ぐ国境警備に関しては、州兵がこれまでになってきた任務との共通性もあり、自然に対応可能だろう。また各州知事の了解を得て、国防省が州兵に装備や訓練を提供し、国外の潜在脅威抑止に活用することも自然な方向だ

●同盟国との関係
・前政権でのトランプ氏が、NATOからの離脱を追求していたとの認識は誤っており、NATO諸国による集団防衛への予算支出を増加させることが狙いであった。NATOや他の組織からの全面撤退を懸念するのは大げさであり、負担の適切な分担がねらいである
・国防費の増額期待は、韓国などの同盟国に及ぶだろう。例えば現在の米国の造船能力では、米海軍が目指す350~380隻体制確立は不可能だが、日本や韓国の造船能力を含めて真剣に協議してはどうだろうか。豪州やフィリピンを含めた議論も考えられる
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Miller C.jpegDefenseOneへのインタビューは6月に実施されたとのことですが、11月7日付の記事では、複数のトランプ周辺関係者が新政権にChristopher Miller氏(59歳)が関与する可能性を示唆しているとのことです。

上記インタビューは、Miller氏が米陸軍特殊作戦部隊出身で対テロ作戦に深く関与してきた点を差し引いてみる必要もありましょうが、日本人が普段考えない論点も含まれていますので、関連の第1弾としてご紹介しました

「臨時国防長官Christopher Miller氏はどんな人?」
https://holylandtokyo.com/2020/11/11/384/

ヘリテージ財団の「Project 2025」サイト
https://www.heritage.org/conservatism/commentary/project-2025

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