TornadoやEurofighterで実績のある手法
共同訓練や有事展開の際の相互支援で国境をまたぐ柔軟運用
整備作業の標準化(standardization)で
11月22日、イタリアで実施中の多国間航空演習「Falcon Strike 2022」のタイミングに併せ、欧州でF-35を運用中または導入予定の11か国の空軍トップが一堂に会し、F-35が国境を越えて機動展開した際に、展開先のF-35保有国が燃料補給や弾薬搭載を含む基礎的な整備作業を相互支援(shared maintenanceとかcross servicingと表現)することを話し合った模様です
同空軍トップ会議への欧州からの参加国は、Finland, Poland, Belgium, Israel, Norway, Denmark, the Netherlands, Italy, the U.K.で、これに米国とカナダが加わった11か国と23日付Defense-News記事は紹介していますが、会議場のパネルには、日本の国旗のようなデザインも見られ、気になることろです
このような基礎的整備作業の相互運用性確立は、既に欧州共同開発の「Tornado」や「Eurofighter」で実績のある手法らしく、当日は「Falcon Strike 2022」に参加中のオランダ空軍兵士がイタリア空軍F-35の再発進準備を行う模様がメディアや各国空軍トップに披露されたそうです
この相互整備の利点について伊空軍トップは、「現在は伊F-35をオランダに展開すると、約100名の伊空軍兵士を派遣する必要があるが、オランダから「shared maintenance」支援を受けることで、派遣要員を30~50人にまで縮小することが可能」とメディアに語っています
同時に会議に参加のオランダ空軍トップは、「イタリア北部のCameri飛行場に設置されているF-35のFACO(最終組み立て工場)で、整備作業も可能になればよいと思う。同施設の組み立て品質等の能力評価を行って検討すべきだ」、「フェラーリが作れる国なんだから、F-35だって大丈夫だ・・・と皆で話し合っていたところだ」とも語り、欧州内でのF-35維持整備体制の強化にも話が及んでいることを示唆しています
このようなF-35整備作業の標準化(standardization)の機運が高まている背景には、現時点で既に欧州諸国保有F-35が約140機に達し、2034年にはこの数が600機を超える可能性があり、整備作業の標準化が大きな効果を発揮する素地が生まれつつがあるからです
更に言うまでもなく、ウクライナを侵略するロシアへの欧州やNATOとしての団結強化をアピールする手段として、非常に重要な役割を果たすと関係国に認識されており、James Hecker欧州アフリカ米空軍司令官は、
「NATOに敵対する者への強いメッセージとなる」、「ウクライナでは誰も航空優勢(air superiority)を確保していないから数十万人もの死傷者が出ている。西側が航空優勢を握っていた20年間のアフガンでの戦いより圧倒的に犠牲者が多い」、「航空優勢の重要性をウクライナは示している」と、整備作業の標準化による基礎的整備作業の相互運用性確立を航空優勢の基礎として重要だと訴えています
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F-35の基礎的な整備作業の標準化(standardization)により、国境をまたいで展開するF-35の整備作業を国家間で相互支援(shared maintenanceとかcross servicing)するという素晴らしい取り組みで、「Tornado」や「Eurofighter」での実績もある実効性のあるチャレンジです。ぜひ取り組みが成熟することを祈ります
ただ、欧州諸国購入と米国が欧州に展開するF-35が「2034年には600機を超える可能性」については明確に否定しておきます。戦闘機の重要性がテレビの視聴率並みに急激右肩下がりの中で、機体価格が右肩上がりになり、維持費も高止まりなF-35を、計画通りに購入し続ける国など欧州には無いと思います
ウクライナで「誰も航空優勢を確保していない」とのご主張ですが、戦闘機で航空優勢を確保することはもっと難しい時代になっていることに気付くべきだと思います。戦闘機で航空優勢を確保したつもりでも、そんな戦闘機の根拠基地はすぐにミサイルや無人機やサイバー攻撃で安価に無効化されますよ。ウクライナの現実に素直に目を向けるべきです
戦闘機による航空優勢なんて・・・
「イラン製無人機がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「ウ侵略は通信へのサイバー攻撃で開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/23/3365/
「ウで戦闘機による制空の時代は終焉」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「嘉手納F-15撤退を米空軍の構想から見る」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/