WP紙や軍事メディアが残弾推計
「対イラン用には余裕も、中国&ウ用が不安に」
国防長官自ら製造企業に増産要求行脚中も
対イラン攻撃1か月分の挽回に2~3年必要
3月27日付米ワシントンポスト紙(WP紙)や4月1日付Defense-NewsがシンクタンクCSISの推定評価を基に、米軍の対イラン作戦「Operation Epic Fury」開始から僅か1カ月間で使用された「Tomahawk長距離巡航ミサイル」や「PAC-3防空ミサイル」の発射数量と残弾数を紹介し、両ミサイルとも約25%の消費量で、対イラン作戦だけなら弾切れの懸念は無いが、使用済み弾薬の補充には2~3年は必要なことから、「中国による台湾侵略への備え」や「ウクライナ対応」には懸念材料だと報じています
現在、ヘグゼス国防長官が上記を含む様々な弾薬(攻防両面の)製造企業や工場を訪問し、製造ラインの増強や生産数量の2-3倍増を要求するとともに、現場製造作業員を激励する「Arsenal of Freedom tour」を実施中で、連日のようにボーイング、ロッキード、レイセオン(REX)、BAEやHoneywell等と増産等で合意の報道が飛び交っているところですが、サプライチェーンや人材確保育成を考えれば「V字増産」が容易とは考えにくいので、報道概要をご紹介しておきます
【米軍のTomahawk巡航ミサイルの使用状況】
●Tomahawk関連→「Epic Fury」作戦で少なくとも850発程度のTomahawkが使用済と推定されているが、同作戦開始直前のTomahawk保有弾数の推計には専門家間でばらつきがある。AEIのMacKenzie Eaglen氏は4000~4500発と推計し、CSISのMark Cancian氏は昨年のイランやイエメンやナイジェリア作戦での使用数も踏まえ、3100発程度だったと推計している。つまり現時点では2300~3700発程度の在庫数と推計
(まんぐーす注:Defense-Newsは、WP紙はCSIS推計で3000発現時点残と紹介しているが、WP紙原文記事はEpic Fury作戦開始前段階で3100発残と記述しており、この相違の理由は謎で
す)
●CSISのCancian氏→800発程度の使用分を補充するには、現製造能力からすると2-3年必要
●Tomahawkは1発5億3000万円する射程1600㎞の高価なミサイルだが、敵の防空網を無効化した後は、自由落下爆弾にGPS誘導フィンを取り付けただけで、滑空射程35㎞程度ながら破壊力と命中精度が同等で、1発1300万円程度のJDAMで代替可能になる。
【PAC-3防空ミサイルの使用状況】
●PAC-3関連→CSISのCancian氏は、イランからの弾道ミサイル迎撃に使用されるパトリオットミサイルPAC-3に関して、Epic Fury作戦開始前段階で4000発保有していたが、同作戦で現在まで1000発を使用したと推計
●Cancian氏によれば、PAC-3製造量は年間600発で、その半数は米国用で、他は同盟国用。2月末からの対イラン作戦で中東湾岸諸国もPAC-3を相当数使用したと考えられ、今後同盟国への配分比率増の可能性あり
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過去記事でご紹介している様に、2022年の2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、弾薬不足や弾薬製造基盤の強化が叫ばれていますが、4年経過した現時点でも、「対イラン攻撃1か月分の挽回に2-3年は必要」との製造能力です。
ヘグゼス国防長官の「Arsenal of Freedom tour」も本件への関心を高める効果はありそうですが、「戦いが落ち着けば、弾薬需要が急減するのでは・・・」との軍需産業側の懸念を消すには長期に及ぶ政府側のコミットメントが必要で、これは日本を含む西側共通の課題です。
増産用の資金を政府が提供したのに、資金を株価引き上げ用に流用したレイセオンが米大統領から厳しい非難を受け、「(少なくとも表面上は)改心した」態度を示しましたが、米国で最近進んでいる「企業との増産合意」が、どのような長期コミットメントを約束しているのか気になるところです。
弾薬増産用の政府資金を流用
「米大統領がレイセオンを叱責」→https://holylandtokyo.com/2026/01/13/13676/
弾薬量の圧倒的不足問題
「最新のNDSでも焦点」→https://holylandtokyo.com/2026/01/29/13808/
「安価なStand-inミサイルを」→https://holylandtokyo.com/2025/01/22/6591/
「英国も弾薬不足深刻」→https://holylandtokyo.com/2023/03/23/4395/
「空軍は弾薬調達の効率性優先を変更」→https://holylandtokyo.com/2023/02/24/4304/
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「上院軍事委員長:弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/


