トランプ氏は大統領専用機の遅れに不満

自身が2017年に「ディール」で安価に2024年納入再契約の案件
計画が遅れ、価格も高騰との状況にしびれを切らし

2月19日、トランプ大統領が現在の老朽化した大統領専用機(通称Air Force One)を使用時にメディアに対し、自身が前回政権時の2017年に契約した大統領専用機の後継機計画(VC-25Bプログラム)について、2024年納入予定が2028年以降にヅレ込む模様で、「固定価格契約」ながらコストが膨らみそうな状況を批判し、

「ずっと以前に固定価格契約を結んだ、こんなに時間を要しているのは不満だ。(他国製である)エアバスは検討しないが、他国から買うか、他国から入手することもできる。ボーイング社は時間がかかりすぎるので、我々は他の選択肢を検討している」、「ボーイングは多額の損失を被り、価格を引上げを検討したいようだが、私は固定価格契約が好きだ」と述べ、後継機計画に大きな変更を加える可能性を示唆しました。

本件は約3年ぶりのご紹介なので、とりあえず経緯を振り返ります。

大統領専用機(通称 Air Force One)後継機VC-25Bの経緯
●1990 年に導入された現在の大統領専用機は、B747-200型機を改良し、核爆発による電磁パルス対処能力、ミサイル等報&対処装置、各種指揮通信設備等々を付加した「VC-25A」2 機
●機体の老朽化を受け、2015年にオバマ政権は、B747-8型機改良型「VC-25A」3機を約5700億円で導入決定

●その後、第一次トランプ政権の2017年8月に、大統領がボーイングと「ディール」を行い、3機導入予定を2機に削減し、しかも中古でボーイングが保管中の機体を改修する方向に改め、当初見積より1500億円程度安価な「固定価格契約」の約4200億円で2024年に引渡す契約に変更
●2019年には、次期専用機「VC-25B」の新たな機体塗装デザインを公表し、民主党のブルーから共和党のレッド中心の配色にイメージー新をアピール

●しかし 2022年5月、事業を管理する米空軍が、ボーイング下請け業者の業務遅延と業者変更などにより、納入が2024年から2~3年遅れると説明
●「2024年から2-3年遅れる」と表明際のボーイング CEO (Dave Calhoun 2020 年1月就任)が、2017年にトランプ大統領と「ディール」した当時のCEOを批判し、「極めてユニークなタイミングと交渉を経て生まれた、極めてユニークな一連のリスクを抱えた事業であり、ボーイングが受注すべきでなかった仕事だ」と本音をぶちまけるなど、当時から「お先真っ暗」感が

●なお 2022年当時、ボーイングが軍事分野で抱えていたコスト超過額「約1500億円」の約半分「約750億円」を大統領専用機事業が占めており、前任 CEOの「背伸びしても、まず契約獲得」との方針の負の遺産を背負わされた Calhoun 氏(2024年8月退任) の「捨て台詞」を理解する声も一部に

(ちなみにボーイングは、KC-46A 空中給油機とT-7 練習機も同じような「背伸びした固定価格契約」に苦しんでおり、民間機分野での相次ぐ事故と相まって、企業としての存続も危ぶまれている現状)

本件に関し2月20日付米空軍協会 web 記事は・・・
●大統領は最近、カタールが以前所有していたボーイング機を視察したが、次期大統領専用機の納入が遅れていることを強調するためだとホワイトハウス関係者が記者団に語っている
●ボーイング社は、「固定価格契約」コストを3000億円以上オーバーし、自腹で補填して開発を継続中だが、納入には更に4年ほどかかる可能性を示唆している

●米空軍は大統領発言に関し、「(ボーイングが) 2025年春に最新スケジュールを空軍に提出する予定だ」とだけ言及し、ボーイング社とともに遅延とコスト超過の原因を、予想を上回る製造コスト、サプライヤーとの長期にわたる交渉、設計変更、セキュリティ許可を持つ熟練と説明
●米会計検査院 GAOは独自に、配線設計の問題、環境制御システムによる客室内の騒音、試験計画の最終決定の遅れ、修理が必要な腐食などの問題も指摘している

●現ボーイング CEOのKelly Ortberg 氏は最近記者団に、イーロン・マスク氏が同社と協力して VC-25Bの早期納入に取り組んでいると語っている。(別軍事メディアは、マスク氏は機体開発&製造作業に関わる作業者のセキュリィティー確認基準が高くて人材確保が困難な問題等々に取り組んでいると解説している
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「他国から入手することもできる。ボーイング社は時間がかかりすぎるので、我々は他の選択肢を検討している」・・・とのトランプ氏発言はあるものの、「てんこ盛り要求性能」の結果として現状があるわけで、落としどころが気になります

それにしてもボーイング・・・企業として大丈夫でしょうか???

大統領専用機(VC-25)の後継機問題
ボーイングのいい加減さが再び露呈
「2024年予定から2-3年遅」→https://holylandtokyo.com/2022/05/31/3291/

これも「固定価格契約」の問題児
「空軍待望のT-7練習機量産は更に1年遅れ」→https://holylandtokyo.com/2025/02/20/10642/

これもボーイングの問題児KC-46A関連
「KC-46給油機が突然初の実戦派遣」→https://holylandtokyo.com/2024/12/13/6493/
「RVSは更に 2026年まで遅れ」→https://holylandtokyo.com/2024/04/04/5706/
「RVSは 2025 年まで遅延」→https://holylandtokyo.com/2022/10/14/3741
「無理やり運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/
「空軍長官:固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/

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