GAO:米空軍改革の戦力生成&派遣計画に問題あり

部隊聴取から空軍司令部計画への不満抽出
海外派遣後に残された母基地の維持が困難
派遣部隊での必要要員数見積もりが甘々と指摘

11月26日付で米会計監査院CAO(Government Accountability Office)が調査レポートを発表し、米空軍が大改革の一環として着手した、海外派遣部隊の指定・訓練・ローテーション等々を改革して取り組んでいるAFFORGEN(空軍戦力生成)モデルに関し、現場部隊からの聞き取りを基に、派遣必要要員の見積もりが現状に即していらず、人員を差し出した母基地の国内運用や作戦遂行が困難になる可能性を指摘した模様です

復習ですが、米空軍大改革は大まかに、「新規装備品構想や開発管理を一手に担う新コマンドIntegrated Capabilities Command創設」と「ACE構想実現のための兵士多能化等を目指した教育訓練体系改革」に、「即応態勢の向上」を加えた3項目から構成されています。

「即応態勢の向上」のため、「新しい戦力造成ローテーションAFFORGEN導入」、「基礎単位の航空団Wingを前方展開即応部隊や基地機能維持部隊等に区分し、各Wingへの要求を明確に規定」、そして「冷戦期のような無通告能力点検・検閲の復活」と「実戦的演習の強化」に取り組むと2024年2月時点で発表され、背景について空軍長官は「前線派遣態勢にあるべき航空団が、真に全ての任務遂行能力を維持していることを確実にする。適切な訓練機会を設け、その上で部隊能力を厳しく評価する」と説明しています

そして「各Wingへの要求を明確に」するため、航空団「Wing」は役割に応じ3つに区分され、作戦遂行部隊と作戦遂行部隊を支え、又は基地運営を担う航空団との違いを明確に表現した名称を付与し、「Deployable Combat Wing」、「In-Place Combat Wing」、「Combat Generation Wing」としました。更に「実戦的演習の強化」については、2024年8月に「REFORPAC(Return of Forces to the Pacific)」との大規模米空軍演習の実施を発表しています

GAOの指摘は「戦力造成ローテーションAFFORGEN」と「前方展開即応部隊」との接点である展開部隊への他部隊からの支援人員差出に関してで、12月2日付Defense-News記事によれば・・・

●以前の米空軍海外派遣では、必要時に統合部隊が「アラカルトメニュー」掲載の各基地所属の兵士を抽出して「寄せ集め部隊」を編成&派遣していたが、多くの場合、面識のない初対面の他部隊兵士と共に海外派遣されるため、部隊の結束や団結「ゼロ」状態からのスタートとなって部隊パフォーマンス上の問題となっていた
●新AFFORGEN導入では旧派遣方式を改め、普段から活動している単位である事前指定された「Deployable Combat Wing」が派遣される方式とし、海外派遣に不足する要員は他の「Wing」から支援要員の応援を得て展開先で活動することとなった

●しかしGAOが支援要員を差し出す側の複数の「Wing」関係者から聴取したところ、計画されている要員を差し出すと「母基地で必要な任務を遂行する人員が不足する」、特に「土木技師、補給支援、医療スタッフ、航空管制官、ゲート警備、サイバー、核兵器取扱資格者など」を懸念している
●これを受けGAOは、米空軍による派遣部隊に必要な人員見積もりが根拠なく行われており(米空軍側も認める)、他部隊からの支援要員数が過大だと指摘している。

●上記問題の原因としてGAOは、米空軍が急いで新AFFORGENや海外派遣部隊の基本編成を再検討したため、母基地で必要な人員数に関する把握が不十分だった点を挙げ、各基地に少数の要員しか配属がないサイバー防衛などで母基地が大きなリスクにさらされていると警告している
●調査結果を受けGAOは米空軍に対し、母基地運営に必要なミニマム要員数を全部隊対象に再評価し、ギャップやリスクを特定するよう勧告し、国防省として2025年1月1日までに米空軍に勧告事項を完了させると明らかにしている
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世界共通の空軍文化として、「完全でない計画段階でも、とりあえず前進する、やってみる」、「走りながら修正していく」、「拙速60%」、「勇猛果敢・支離滅裂」との雰囲気がありますが、その典型的な事例がGAOによって表に出た・・ということでしょう。

でも軍事組織のように硬直的で変化が難しい組織にとって、変化に挑戦することはとても大切なことであり、その挑戦を見守りたいと思います。問題認識は間違っていないと思いますので・・・

米空軍の大改革アクション推進
「大改革の演習は来夏にアジアで」→https://holylandtokyo.com/2024/09/09/6251/
「最大の課題はICC創設と運営」→https://holylandtokyo.com/2024/09/03/6230/
「改革の目玉ICCコマンド」→https://holylandtokyo.com/2024/05/23/5873/
「大改革の概要発表」→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/

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